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4.何かが起きる予感がします
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その日の夜、私はシエルと窓際でお茶をしていた。
「お姉様、助けるのが遅くなってごめんなさい……」
「いいのよ。隙を窺っていたのは分かっているもの」
申し訳なさそうに口にするシエルにそう口にする私。
そんな時、執事が部屋に入ってきてこう口にした。
「お嬢様、レオナルド殿下がお見えになりました。既に応接室の方にお通ししております」
「分かったわ。すぐに行くわね。
シエル、ごめんね。少し席を外すわ」
シエルに断りを入れて応接室へと急ぐ私。
部屋に入ると、ソファに掛けていた殿下と目が合った。
「遅くなってすまなかった。彼が回復術師だ。
早速治療を始めてもいいかな?」
「ええ、お願いしますわ」
私がそう口にすると、回復術師の方が私に手をかざして、呪文を唱え始めた。
そして、その手が淡く光ると痛みが一気に消えていった。
「痛みは消えたかい?」
「はい、さっきまでの痛みが嘘のようですわ」
「良かった。一つお願いしたいんだが、いいかな?」
さっきまでの緩い空気はどこへやら。突然重い空気が流れ出して、私はさりげなく背筋を正した。
「なんでしょうか……?」
「実は……イルシア、君のことが好きなんだ。初めてパーティーで君を見た時から気になっていた。
そして身分を偽って接していくうちに性格にも惚れたんだ。もし君が嫌じゃなかったら、結婚を前提で付き合って欲しい」
「では、友人からでお願いしますわ」
今お付き合いを始めてしまえば、私に不貞の疑惑がかかってしまう。そう考えて、私はそう口にした。
「そうか……。なら、まずは友人からだな。
これからもよろしく」
「はい、こちらこそ宜しくお願いしますわ」
お互いに頭を下げる私と殿下。
この日から私達は友人の関係になった。
その翌日にはアドルフの両親が謝罪に来て、アドルフを家から追い出したのだと言われた。
きっと彼には地獄なような日々が待っている。それは分かりきっていることだけど、不思議なことに何も思わなかった。
さらに、その翌日にはシエルの食欲も戻って、少し安心することが出来た。
「お姉様、助けるのが遅くなってごめんなさい……」
「いいのよ。隙を窺っていたのは分かっているもの」
申し訳なさそうに口にするシエルにそう口にする私。
そんな時、執事が部屋に入ってきてこう口にした。
「お嬢様、レオナルド殿下がお見えになりました。既に応接室の方にお通ししております」
「分かったわ。すぐに行くわね。
シエル、ごめんね。少し席を外すわ」
シエルに断りを入れて応接室へと急ぐ私。
部屋に入ると、ソファに掛けていた殿下と目が合った。
「遅くなってすまなかった。彼が回復術師だ。
早速治療を始めてもいいかな?」
「ええ、お願いしますわ」
私がそう口にすると、回復術師の方が私に手をかざして、呪文を唱え始めた。
そして、その手が淡く光ると痛みが一気に消えていった。
「痛みは消えたかい?」
「はい、さっきまでの痛みが嘘のようですわ」
「良かった。一つお願いしたいんだが、いいかな?」
さっきまでの緩い空気はどこへやら。突然重い空気が流れ出して、私はさりげなく背筋を正した。
「なんでしょうか……?」
「実は……イルシア、君のことが好きなんだ。初めてパーティーで君を見た時から気になっていた。
そして身分を偽って接していくうちに性格にも惚れたんだ。もし君が嫌じゃなかったら、結婚を前提で付き合って欲しい」
「では、友人からでお願いしますわ」
今お付き合いを始めてしまえば、私に不貞の疑惑がかかってしまう。そう考えて、私はそう口にした。
「そうか……。なら、まずは友人からだな。
これからもよろしく」
「はい、こちらこそ宜しくお願いしますわ」
お互いに頭を下げる私と殿下。
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その翌日にはアドルフの両親が謝罪に来て、アドルフを家から追い出したのだと言われた。
きっと彼には地獄なような日々が待っている。それは分かりきっていることだけど、不思議なことに何も思わなかった。
さらに、その翌日にはシエルの食欲も戻って、少し安心することが出来た。
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