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17. 欠けている理由
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私が風邪をひいてしまってから数日。ウィリアム様が留学から戻ってくる日になりました。
今日は彼の帰国に合わせてパーティーが開かれる予定なので、私はその準備で忙しくしています。
ちなみに、風邪は一昨日には治っているので安心して参加出来ます。
今日のパーティーに招待されているのはアストライア公爵家とフォルム公爵家のみで、王家が主催するものでは珍しく小規模なものになっています。三大公爵家が揃っていないのも珍しいです。
とはいえ、身嗜みの手を抜くことは出来ません。
パーティー用の重たいドレスに身を包み、今は侍女に髪を整えてもらっています。
「……こんな感じで大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう」
姿見に移る姿を見て、頷きます。
それから髪飾りやら首飾りやら、派手すぎないように気をつけて選んだものを付けていきます。
「どうかしら?」
「髪飾り、少し傾いてますね」
「ありがとう」
マリアが指摘しながら直してくれます。
それから侍女達とお母様に確認してもらって、ようやく準備が終わりました。
それでも余裕をもって準備しているから、この重たいドレスのまま過ごさないといけないのよね……。
まだ会場にも着いてないのに、少し疲れてきたわ。
「シルフィ、体調が優れないのかい?」
「いえ、ドレスが重くて疲れただけですわ……」
楽な体勢を探していると、お兄様に心配されてしまいました。
「それは……僕にはどうにも出来ないね……」
「ええ。お兄様は楽そうで羨ましいですわ」
「服が硬くて動きにくい点以外は楽かもしれないね」
どうやら、お互いに苦労は多いみたいです。
それから数分。
私達は馬車に乗って王宮へと向かいました。
屋敷から王宮までは馬車で10分とかかりません。
だから少し雑談をしているだけであっという間に感じます。
会場に入ると、先に来ていたウィリアム様と目が合いました。
フォルム家の方々はまだ来ていないようなので、彼の元に向かいます。
「お久しぶりです、ウィリアム様」
「ああ、久しぶりだね。会いたかったよ」
「私もですわ」
通信石で話していたとはいえ、こうして隣にいられると安心します。
だから、今の言葉は偽りなどではなく本心です。
「色々大変だったと思うけど、元気そうで安心したよ」
「ウィリアム様もお疲れ様でした」
ひと目見ただけでは元気なように見えますが、彼も疲れているはずです。
留学される前よりも、少し痩せてしまっていますから。異国の地で苦労されていたはずです。
「ありがとう。シルフィも馬鹿の相手、お疲れ様」
ウィリアム様がそう口にした時でした。
ちょうどフォルム家の方々が会場に入ってきました。
「そういえば、サウディス家の方の姿が見えませんけど……」
「シルフィを虐める馬鹿を招かないのは当然だよ。サウディス公爵だけは例外として招待してしまったけど、大丈夫かい?」
「ええ、問題ありませんわ。ウィリアム様を護って下さっていた方ですもの」
私がこう返した時でした。
サウディス公爵様が会場に入ってきて、私達の方に真っ直ぐ向かってきました。
そして、深々と頭を下げられました。
今日は彼の帰国に合わせてパーティーが開かれる予定なので、私はその準備で忙しくしています。
ちなみに、風邪は一昨日には治っているので安心して参加出来ます。
今日のパーティーに招待されているのはアストライア公爵家とフォルム公爵家のみで、王家が主催するものでは珍しく小規模なものになっています。三大公爵家が揃っていないのも珍しいです。
とはいえ、身嗜みの手を抜くことは出来ません。
パーティー用の重たいドレスに身を包み、今は侍女に髪を整えてもらっています。
「……こんな感じで大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう」
姿見に移る姿を見て、頷きます。
それから髪飾りやら首飾りやら、派手すぎないように気をつけて選んだものを付けていきます。
「どうかしら?」
「髪飾り、少し傾いてますね」
「ありがとう」
マリアが指摘しながら直してくれます。
それから侍女達とお母様に確認してもらって、ようやく準備が終わりました。
それでも余裕をもって準備しているから、この重たいドレスのまま過ごさないといけないのよね……。
まだ会場にも着いてないのに、少し疲れてきたわ。
「シルフィ、体調が優れないのかい?」
「いえ、ドレスが重くて疲れただけですわ……」
楽な体勢を探していると、お兄様に心配されてしまいました。
「それは……僕にはどうにも出来ないね……」
「ええ。お兄様は楽そうで羨ましいですわ」
「服が硬くて動きにくい点以外は楽かもしれないね」
どうやら、お互いに苦労は多いみたいです。
それから数分。
私達は馬車に乗って王宮へと向かいました。
屋敷から王宮までは馬車で10分とかかりません。
だから少し雑談をしているだけであっという間に感じます。
会場に入ると、先に来ていたウィリアム様と目が合いました。
フォルム家の方々はまだ来ていないようなので、彼の元に向かいます。
「お久しぶりです、ウィリアム様」
「ああ、久しぶりだね。会いたかったよ」
「私もですわ」
通信石で話していたとはいえ、こうして隣にいられると安心します。
だから、今の言葉は偽りなどではなく本心です。
「色々大変だったと思うけど、元気そうで安心したよ」
「ウィリアム様もお疲れ様でした」
ひと目見ただけでは元気なように見えますが、彼も疲れているはずです。
留学される前よりも、少し痩せてしまっていますから。異国の地で苦労されていたはずです。
「ありがとう。シルフィも馬鹿の相手、お疲れ様」
ウィリアム様がそう口にした時でした。
ちょうどフォルム家の方々が会場に入ってきました。
「そういえば、サウディス家の方の姿が見えませんけど……」
「シルフィを虐める馬鹿を招かないのは当然だよ。サウディス公爵だけは例外として招待してしまったけど、大丈夫かい?」
「ええ、問題ありませんわ。ウィリアム様を護って下さっていた方ですもの」
私がこう返した時でした。
サウディス公爵様が会場に入ってきて、私達の方に真っ直ぐ向かってきました。
そして、深々と頭を下げられました。
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