公爵令嬢ですが冤罪をかけられ虐げられてしまいました。お覚悟よろしいですね?

八代奏多

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7. 悪戯ですか?

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「定刻になりましたので、講義を始めます」


 私が席に辿り着いた直後、教壇の方からそんな声が聞こえてきました。
 何とか間に合ったようです。


「今回は風魔法についてです。風魔法は日常での汎用性に優れているというのは皆さんご存じの通りだと思います。
 そんな風魔法ですが、戦闘の際にも有用であるとされています。特に攻撃においては……」

 先ほどまでとは違い、静まり返った教室の中に先生の声だけが響いています。
 講義に臨む時の態度が成績に響くからか、今は手を出してくる人はいません。

「……風魔法の理論は以上になります。質問はありますか?
 ──無いようですので、演習に移ります。5分後に魔法演習場に集合してください」

 そう指示され、私の周囲の方々は一斉に立ち上がりました。
 私も指示された場所に向かおうと立ち上がったのですが……。

「嘘っ……!?」

 椅子にスカートが張り付いてしいて、離れることができません。
 私以外には聞こえていないはずですが、驚きのあまり声を漏らしてしまいました。

 どうやら、椅子に接着剤を仕組まれていたようです。
 犯人は……私をほくそ笑みながら見ている伯爵令嬢達でしょう。



 接着剤で椅子から離れなくなっていても、水魔法を上手く使えば剥がすことが出来ます。
 でも、接着剤で汚れてしまうのは変わりません。

 帰ったら侍女に謝らないといけないわね……。
 そんなことを思いながら、冷静に水魔法を使って椅子から剥がしていきます。
 すると、予想していなかった人物──教壇で道具をしまっていた先生から声をかけられました。


「悪戯ですか?」

「ええ、そうみたいですわ」


 返事をしながらスカートを引っ張ってみると、接着剤の跡はあるものの破かずに剥がすことが出来ました。


「無駄な心配だったようですね……」

「心配してくださったのですか?」

「当然ですよ」

「ありがとうございます。お先に失礼しますね」


 お礼を言って、教室を後にする私。
 少し移動して演習場に足を踏み入れると、タイミングを計っていたかのように風魔法が飛んできました。
 これだけ魔法が飛び交っていたら、流れ弾が飛んで来ても責めることは出来ません。

 だから、風の防御魔法を使いました。
 風魔法の適性も持っている私にとって、これくらいの風魔法を防ぐことは難しくありません。

 攻撃魔法の調節が苦手で、人前で使うことがないからか「シルフィーナ様は攻撃魔法が苦手」という印象を持たれていますが、魔法自体はちゃんと使えます。ちょっと強力すぎてしまうだけです。
 風の汎用魔法を調整して身体を浮かせることは出来ますのに……。


「皆さん、こちらに集合してください」


 ふと、先生の声が響きました。
 途端に飛び交っていた魔法が消えて、周りの方々が一斉に声のした方向に向かっていきました。
 私はそんな彼らの後ろ側について言葉の続きを待つことにしました。


「今回は攻撃魔法のコントロールについての演習になります。
 この的を設置するので、各自で距離を取ってから行ってください。最後に試験をするので、真面目に取り組んでください。
 これが一番重要ですが、他人に向けて攻撃魔法を放つことは厳禁です。以上です」


 それから始めの合図が出され、私も攻撃魔法を放とうとしたのですが……。


「シルフィーナさんは一旦見学でお願いしてもいいですか? 的がいくつあっても足りないので」


 ……慌てた様子で駆け寄ってきた先生に制止されてしまいました。


「分かりましたわ」

「ありがとうございます」


 無駄に的を破壊するわけにはいかないので、邪魔にならないように端の方に移動することにしました。
 ですが、近くからこんな言葉が聞こえてきました。


「シルフィーナのやつ、下手すぎて明後日の方向に行くから止めさせられてるぞ」

「そもそも攻撃魔法なんて撃てないの間違いだろ。
 公爵夫妻は王宮で重宝されるほどの魔法の腕があるというのに、娘はこれ。良くない扱いを受けているというのも納得がいくな」


 声の主はエドガー様とそのご友人でした。
 好き勝手言われているようですが、力を見誤られていた方が都合がいいので無視することにしました。
 それなのに……。


「不味い、失敗したっ!」


 わざとらしい声と共に、私の方に攻撃魔法が飛んできました。
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