ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多

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16. 異変

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 私が公爵邸で暮らすようになってから2ヶ月が過ぎようとしているある日、私の元にリリアから手紙が届いた。

 手紙のやりとりは日常的にしているから驚かなかったけれど、中身を読んで驚いた。

『気味が悪いことが起きているから、すぐに王宮に来て欲しいの。許可は取ってあるから、お願いしますわ』

 気味の悪いことって何……?

 それが分からなかったから、まずクラウス様に相談することにした。

「クラウス様、今お時間大丈夫ですか?」
「いいよ。何かあった?」
「今、王宮で気味の悪いことが起きているそうなのですけど、何か聞いていませんか?」
「そんな話は無いよ。でも、急にどうしたんだ?」

 不思議そうに、それでいて心配するような口調で問いかけてくるクラウス様。

「実は、リリアからこんな手紙が届きまして……」

 私が説明すると、クラウス様はなるほどと言った様子で頷いて、こう口にした。

「きっとアレシアにしか言えない悩みがあるんだよ。すぐに行ってあげて。
 王宮には念のため手紙を出しておくよ」
「分かりましたわ。ありがとうございます」

 お礼を言って、早速着替えに向かう私。
 それからすぐに馬車を用意してもらい、王宮に向かった。
 
 王宮に着くと、帽子を被ったリリアが出迎えに来てくれて、私室に案内してもらった。

「一体何があったの?」
「私の髪が……

 そう言って帽子を脱ぐリリア。
 一瞬何を言っているのか分からなかったけど、すぐに異変に気が付いた。

「その髪……もしかして、染めていたの?」
「ううん、私は染めてなんかいないの。それなのに……」

 リリアの髪は付け根の方が私と同じ空色になっていて、まるで茶髪に染めていたかのようになっていた。

「もしかして、寝ている間に染められていたの?」
「それしか考えられなかったけど、流石に気付くはずよ……」
「残りは魔法しか考えられないけど、髪を染める魔法なんて、あるのかしら……?」

 そこまで言って、私は大変なことに気がついた。

「ねえ、貴女って……私の本当の姉妹だったの……?」
「うん、そうとしか思えないわ」

 思い返してみれば、母親似の私とリリアの顔立ちは似ている。
 今まで気が付かなかったことが不思議に思えた。

「でも、証拠は無いのよね……」

 頭を抱える私達。
 結局、この日は答えを出すことが出来なかった。

 でも、数日後。状況が一気に変わった。

 国王陛下が白髪に悩んでいるという根も歯もない噂を聞いた義母が髪を染める魔法を使えると名乗り出たから。

「これは、間違いないわね」
「うん。王妃殿下にお願いして調べてもらうわ」

 いつの間にかリリアは王妃殿下の信頼を掴んでいたらしく、すぐに騎士団による調査が始まった。



 そして……1ヶ月経たないうちに結果が出た。

「貴女は伯爵夫人になりたいと私欲のままに計画を練り、当時のクライシス伯爵夫人の子が死亡したと見せかけるために、罪のない平民の赤子の髪を染めてから無残な形で殺害した。
 その上で、誘拐したリリア嬢の髪を染め、自らの子と偽った。伯爵に洗脳するための薬も盛っていたことも明らかになっている。
 さらに、後妻になるために当時の伯爵夫人を毒殺し、罪のないアレシア嬢とリリア嬢を虐げた。

 間違いはあるか?」

 陛下が義母にそう問いかける。

「その通りです」
「そうか。沙汰は追って伝える」

 そう言って背を見せる陛下。その瞬間、まだ高齢ではない陛下の金髪が真っ白になって、同時に義母が騎士達に拘束されたまま部屋を去った。

「これが魔法……」

 当事者ということで私とリリアは同席していたのだけど、義母の性格の悪さに吐き気を感じた。

 でも、部屋を出れば普通の姉妹のように楽しく会話することが出来て。

 これからは今まで辛かった分、幸せになろう。
 そんな風に思えた。



 そして、クラウス様と結婚する日も少しずつ近付いていた。

 今回の事件でお父様の評価は下がってしまったけれど、他の貴族達にとって他人事ではなくて同情の方が多かったのが理由だと思う。

 お父様はお父様で、薬を盛られたせいとはいえ、浮気したことを反省しているらしい。
 今は騎士団にいるお兄様を呼び戻して、伯爵になるための教育をさせているそうなのだけど……実際はお兄様が勝手に勉強していて教えることが無くて、逆に穴を指摘されているらしい。

 でも、未だに私達に謝罪がないから不満に思っている。

 ちなみに、今は義母が処刑されてから数日後で、虐げられる心配はなくなったけど、相変わらず私は公爵邸で暮らしている。

 最近は護身術の練習は終わり、社会での立ち回りについての勉強をしている。


 そして何よりも、クラウス様と一緒にいられることを幸せに思っている。
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