14 / 17
14. 裏側
しおりを挟む
投げられたお茶の始末を侍女に任せ、自室に戻ったリリアは早速手紙を書いた。
王宮で側仕えをさせて欲しいとお願いするために。
「これで大丈夫ね」
間違いが無いことを確認すると、すぐに隠した。
これは今日の王宮パーティーまで見つかるわけにはいかないから。
それからも侍女のような扱いを伯爵夫人にされ続け、パーティーに向かう時にはすっかり身も心も疲れ切っていた。
それでも怪我を負わなかったのは、運が良かった。
「リリア、早く準備しなさい! 置いていきますわよ!」
一体誰のせいで遅くなったと……!
そんな言葉を口にすることは当然出来ず、急いで外行きのドレスに着替えた。
「「行ってらっしゃいませ」」
使用人達に見送られ、馬車が動き出す。
すると、早速両親が愛を囁き合い始めて、リリアは見てられないと言わんばかりに目を背け耳を塞いだ。
当人達は隠しているつもりだが、当然ながらリリアは知っていた。自分が浮気相手──今目の前にいる母親との間に授かった子で、父親は浮気男であるということを。
だから、この2人のことは軽蔑していた。
それでいて、自分が軽蔑されるようなことをしていたとも自覚していて、心中は複雑だった。
(私、お姉様にこんなに酷いことをしていたのね……。でも、味方をすれば私も初めから……)
──両親に虐げられていたかもしれない。
何が正解だったのか、今のリリアには分からなかった。
「お待たせしました。到着しました」
出発から10分程でパーティー会場に到着し、早速挨拶回りをすることになった。
そこで国王陛下に挨拶をする時に両親の隙を見て親衛隊に手紙を渡し、挨拶回りが終わると友人の他の伯爵令嬢と話をしていたのだが……
「クラウス様のお顔が治ったのは嘘でしたのね!」
……そんな言葉と共に、体に衝撃が走った。
「貴女が余計なことを言うから、私はこんな目に遭いましたのよ! どうしてくれるのよ!」
顔を蹴られ、お腹を踏まれ、強い痛みに襲われた。
しかし、意識が遠のき始めた時、足を振り上げる令嬢の顔を水が包み込んだ。
それからすぐにリリアは医務室に運ばれた。
それから少ししてアレシアがリリアと仲直りした頃、アルバラン公爵夫人は王妃からこんな相談をされた。
「この前お話ししていたアレシアちゃんの妹なのだけど、側仕えにして欲しいって手紙が来たのよ」
「お断りしてください」
即答だった。公爵夫人にとって、リリアは将来の義理の娘になるアレシアを虐めていた悪女でしかない。
そんな女を側仕えにするなど、言語道断だった。
「私もそのつもりだったけど、お顔を蹴られているのを見てしまったのよね……」
「それでも、ダメなものはダメですわ」
「分かったわ」
ちなみに、こう言っておきながら王妃にリリアを受け入れるつもりは欠片もなかった。
しかし……どういうわけか、公爵が屋敷にある客室をリリアに貸すことを決めてしまった。
隠すことがあるのにも関わらず、お人好し過ぎるとしか言えない夫の判断に、公爵夫人は頭を抱えた。
しかし、その心配は杞憂で、リリアの部屋の周囲を護衛と称した監視役の兵士でガッチリと固め、例えお花を摘みに行く時でさえ侍女に監視させるという徹底っぷり。
お陰で、公爵夫人は安心してリリアを見定めることができた。
その結果、2日と経たないうちに公爵家から推薦状が届いてしまった。
断る気しかなかった王妃は当然頭を抱えた。
王家であっても、公爵家の推薦状がある人物を簡単に追い返すことはできない。
しかし、理由さえ有れば断ることが出来る。
リリアの場合、アレシアを虐めていたことがあったから、簡単に断れる。
それでも受け入れられた理由は、1通の手紙にあった。
王宮で側仕えをさせて欲しいとお願いするために。
「これで大丈夫ね」
間違いが無いことを確認すると、すぐに隠した。
これは今日の王宮パーティーまで見つかるわけにはいかないから。
それからも侍女のような扱いを伯爵夫人にされ続け、パーティーに向かう時にはすっかり身も心も疲れ切っていた。
それでも怪我を負わなかったのは、運が良かった。
「リリア、早く準備しなさい! 置いていきますわよ!」
一体誰のせいで遅くなったと……!
そんな言葉を口にすることは当然出来ず、急いで外行きのドレスに着替えた。
「「行ってらっしゃいませ」」
使用人達に見送られ、馬車が動き出す。
すると、早速両親が愛を囁き合い始めて、リリアは見てられないと言わんばかりに目を背け耳を塞いだ。
当人達は隠しているつもりだが、当然ながらリリアは知っていた。自分が浮気相手──今目の前にいる母親との間に授かった子で、父親は浮気男であるということを。
だから、この2人のことは軽蔑していた。
それでいて、自分が軽蔑されるようなことをしていたとも自覚していて、心中は複雑だった。
(私、お姉様にこんなに酷いことをしていたのね……。でも、味方をすれば私も初めから……)
──両親に虐げられていたかもしれない。
何が正解だったのか、今のリリアには分からなかった。
「お待たせしました。到着しました」
出発から10分程でパーティー会場に到着し、早速挨拶回りをすることになった。
そこで国王陛下に挨拶をする時に両親の隙を見て親衛隊に手紙を渡し、挨拶回りが終わると友人の他の伯爵令嬢と話をしていたのだが……
「クラウス様のお顔が治ったのは嘘でしたのね!」
……そんな言葉と共に、体に衝撃が走った。
「貴女が余計なことを言うから、私はこんな目に遭いましたのよ! どうしてくれるのよ!」
顔を蹴られ、お腹を踏まれ、強い痛みに襲われた。
しかし、意識が遠のき始めた時、足を振り上げる令嬢の顔を水が包み込んだ。
それからすぐにリリアは医務室に運ばれた。
それから少ししてアレシアがリリアと仲直りした頃、アルバラン公爵夫人は王妃からこんな相談をされた。
「この前お話ししていたアレシアちゃんの妹なのだけど、側仕えにして欲しいって手紙が来たのよ」
「お断りしてください」
即答だった。公爵夫人にとって、リリアは将来の義理の娘になるアレシアを虐めていた悪女でしかない。
そんな女を側仕えにするなど、言語道断だった。
「私もそのつもりだったけど、お顔を蹴られているのを見てしまったのよね……」
「それでも、ダメなものはダメですわ」
「分かったわ」
ちなみに、こう言っておきながら王妃にリリアを受け入れるつもりは欠片もなかった。
しかし……どういうわけか、公爵が屋敷にある客室をリリアに貸すことを決めてしまった。
隠すことがあるのにも関わらず、お人好し過ぎるとしか言えない夫の判断に、公爵夫人は頭を抱えた。
しかし、その心配は杞憂で、リリアの部屋の周囲を護衛と称した監視役の兵士でガッチリと固め、例えお花を摘みに行く時でさえ侍女に監視させるという徹底っぷり。
お陰で、公爵夫人は安心してリリアを見定めることができた。
その結果、2日と経たないうちに公爵家から推薦状が届いてしまった。
断る気しかなかった王妃は当然頭を抱えた。
王家であっても、公爵家の推薦状がある人物を簡単に追い返すことはできない。
しかし、理由さえ有れば断ることが出来る。
リリアの場合、アレシアを虐めていたことがあったから、簡単に断れる。
それでも受け入れられた理由は、1通の手紙にあった。
7
お気に入りに追加
2,466
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍
バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。
全11話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました
ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】その仮面を外すとき
綺咲 潔
恋愛
耳が聞こえなくなってしまったシェリー・スフィア。彼女は耳が聞こえないことを隠すため、読唇術を習得した。その後、自身の運命を変えるべく、レイヴェールという町で新たな人生を始めることを決意する。
レイヴェールで暮らし始めた彼女は、耳が聞こえなくなってから初となる友達が1人でき、喫茶店の店員として働くことも決まった。職場も良い人ばかりで、初出勤の日からシェリーはその恵まれた環境に喜び安心していた。
ところが次の日、そんなシェリーの目の前に仮面を着けた男性が現れた。話を聞くと、仮面を着けた男性は店の裏方として働く従業員だという。読唇術を使用し、耳が聞こえる人という仮面を着けて生活しているシェリーにとって、この男性の存在は予期せぬ脅威でしかない。
一体シェリーはどうやってこの問題を切り抜けるのか。果たしてこの男性の正体は……!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【コミカライズ決定】契約結婚初夜に「一度しか言わないからよく聞け」と言ってきた旦那様にその後溺愛されています
氷雨そら
恋愛
義母と義妹から虐げられていたアリアーナは、平民の資産家と結婚することになる。
それは、絵に描いたような契約結婚だった。
しかし、契約書に記された内容は……。
ヒロインが成り上がりヒーローに溺愛される、契約結婚から始まる物語。
小説家になろう日間総合表紙入りの短編からの長編化作品です。
短編読了済みの方もぜひお楽しみください!
もちろんハッピーエンドはお約束です♪
小説家になろうでも投稿中です。
完結しました!! 応援ありがとうございます✨️
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい
恋愛
私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる