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12. 特訓です
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リリアが公爵邸で暮らすようになってから2日、それまでの生活とは変わったことがある。
1つはクラウス様が屋敷の中でも仮面を付けるようになったこと。
火傷メイクはしていないけれど、リリアのことが信用出来るようになるまでこのままらしい。
でも、2人きりで話す時は外してくれているから、それは嬉しかった。
もう1つは、リリアと頻繁に話すようになったこと。
そのお陰で、私が伯爵邸を出てからリリアが義母に虐められ始めたことを知った。
ちなみに、クラウス様はリリアと全く話さないらしく、完全に嫌われているのかと相談されたのがさっきのこと。
これについては本人に聞いてみないと分からない。
そして、1番の変化は……
「手の動きが遅れてますよ!」
「は、はいぃぃ……」
……護身術の練習が始まったこと。
今は午前中だけ受け身の練習をしているのだけど、これが中々奥深くて苦労している。
ただ倒れるだけのように見えて、細かい事が沢山あって、中々上手くいっていない。
「最初よりもかなり良くなりましたね。そろそろ倒れる前に立ち上がる方法の練習をしましょう」
どうらら、認めてもらえたみたい。
ちなみに講師をしてくれているのは侍女長さんで、その実力は騎士団の折り紙付きとか。
「分かりましたわ」
「では、一回見せますね」
そう言って、近くにいた護衛の兵士さんに投げ飛ばされる侍女長さん。
空中で体勢を変え、床に手をついたかと思うと次の瞬間には立ち上がっていた。
「こんな感じです」
「いやいや、無理ですよ!?」
私がそう声を上げている間に、さっきまでのよりも分厚いクッションが運び込まれた。
「まずは自分で倒れてから、サッと立ち上がる練習をしましょう」
そう言われ、細かいアドバイスを受けながら練習すること2時間。
「そろそろお昼ですね。一旦休憩にしましょう」
何も身につけられずにお昼になってしまった。
それでも、夕方までには自分で倒れてから転ばずに体勢を立て直せるようになった。
「飲み込みが早くて驚きました。この調子なら、1ヶ月くらいで基本的な技術は身につけられそうです」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「でも、油断は禁物ですよ」
少し気を抜いたらそう言われて、表情を固くする私だった。
この後は領主になるための勉強を終えたクラウス様とテラスでお茶をして、気がつけば夕食の時間になっていた。
「そろそろ食堂に行こう」
そう言われ、手を繋いで食堂に向かう私達。
食堂に着くと、先に来ていたリリアと目が合った。
「今夜は一緒なのね?」
「アリーシャ様に誘われたの」
クラウス様のお母様に誘われたらしく、私の問いかけにそう答えるリリア。
クラウス様にどういうことかと視線で問いかければ、私にしか聞こえない声でこう答えてくれた。
「リリア嬢を見定めたいらしい」
「そういうことでしたのね……」
そんな会話を交わして席に着く私。
少し遅れて公爵夫妻がやってきて、普段通りの夕食が始まった。
そして、早速こんな話題が上がった。
「例の男爵家だが、取りつぶしが決まった」
「陛下に恥をかかせたのですから、当然ですわね」
「ああ。伯爵以上なら、これくらいでは潰れないんだがな」
とうやら、私の過ごしていた伯爵家は簡単に潰れないらしい。
一応、お父様によって騎士団に強制的に入れられたお兄様が継ぐことになるのだけど、領主が務まるのか心配になっている。
「お金で買った爵位なら、これくらい当然ですよ」
「そうだな。それと、令嬢の方は最低でも修道院送りだそうだ」
「そうなのですね……。アレのお陰でお姉様と仲直り出来たので、複雑な気持ちですわ……」
そんな反応をするリリア。
どこかで聞いた事があるような言葉に、私に視線が一瞬だけ集まった。
似たようなことを考えているのは半分とはいえ血がつながっているから、なのかしら……?
1つはクラウス様が屋敷の中でも仮面を付けるようになったこと。
火傷メイクはしていないけれど、リリアのことが信用出来るようになるまでこのままらしい。
でも、2人きりで話す時は外してくれているから、それは嬉しかった。
もう1つは、リリアと頻繁に話すようになったこと。
そのお陰で、私が伯爵邸を出てからリリアが義母に虐められ始めたことを知った。
ちなみに、クラウス様はリリアと全く話さないらしく、完全に嫌われているのかと相談されたのがさっきのこと。
これについては本人に聞いてみないと分からない。
そして、1番の変化は……
「手の動きが遅れてますよ!」
「は、はいぃぃ……」
……護身術の練習が始まったこと。
今は午前中だけ受け身の練習をしているのだけど、これが中々奥深くて苦労している。
ただ倒れるだけのように見えて、細かい事が沢山あって、中々上手くいっていない。
「最初よりもかなり良くなりましたね。そろそろ倒れる前に立ち上がる方法の練習をしましょう」
どうらら、認めてもらえたみたい。
ちなみに講師をしてくれているのは侍女長さんで、その実力は騎士団の折り紙付きとか。
「分かりましたわ」
「では、一回見せますね」
そう言って、近くにいた護衛の兵士さんに投げ飛ばされる侍女長さん。
空中で体勢を変え、床に手をついたかと思うと次の瞬間には立ち上がっていた。
「こんな感じです」
「いやいや、無理ですよ!?」
私がそう声を上げている間に、さっきまでのよりも分厚いクッションが運び込まれた。
「まずは自分で倒れてから、サッと立ち上がる練習をしましょう」
そう言われ、細かいアドバイスを受けながら練習すること2時間。
「そろそろお昼ですね。一旦休憩にしましょう」
何も身につけられずにお昼になってしまった。
それでも、夕方までには自分で倒れてから転ばずに体勢を立て直せるようになった。
「飲み込みが早くて驚きました。この調子なら、1ヶ月くらいで基本的な技術は身につけられそうです」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「でも、油断は禁物ですよ」
少し気を抜いたらそう言われて、表情を固くする私だった。
この後は領主になるための勉強を終えたクラウス様とテラスでお茶をして、気がつけば夕食の時間になっていた。
「そろそろ食堂に行こう」
そう言われ、手を繋いで食堂に向かう私達。
食堂に着くと、先に来ていたリリアと目が合った。
「今夜は一緒なのね?」
「アリーシャ様に誘われたの」
クラウス様のお母様に誘われたらしく、私の問いかけにそう答えるリリア。
クラウス様にどういうことかと視線で問いかければ、私にしか聞こえない声でこう答えてくれた。
「リリア嬢を見定めたいらしい」
「そういうことでしたのね……」
そんな会話を交わして席に着く私。
少し遅れて公爵夫妻がやってきて、普段通りの夕食が始まった。
そして、早速こんな話題が上がった。
「例の男爵家だが、取りつぶしが決まった」
「陛下に恥をかかせたのですから、当然ですわね」
「ああ。伯爵以上なら、これくらいでは潰れないんだがな」
とうやら、私の過ごしていた伯爵家は簡単に潰れないらしい。
一応、お父様によって騎士団に強制的に入れられたお兄様が継ぐことになるのだけど、領主が務まるのか心配になっている。
「お金で買った爵位なら、これくらい当然ですよ」
「そうだな。それと、令嬢の方は最低でも修道院送りだそうだ」
「そうなのですね……。アレのお陰でお姉様と仲直り出来たので、複雑な気持ちですわ……」
そんな反応をするリリア。
どこかで聞いた事があるような言葉に、私に視線が一瞬だけ集まった。
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