ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多

文字の大きさ
8 / 17

8. 素顔

しおりを挟む
 一週間後。

「こんな感じでどうかな?」
「す、すごいですわ……」

 噂通りの姿のクラウス様の姿が、そこにあった。
 仮面を被り、さらには万が一剥がされた時のために火傷のメイクをしている。

 こうすれば、私に嫉妬の目が向くことはない。そう考えたらしい。

「そろそろ行こう」
「ええ」

 差し出されていた手を取る私。
 仮面のせいで彼の表情はほとんど見えないけれど、横の隙間から見えた口元は優しい笑みを浮かべている時と同じだった。

 手を繋いで馬車に向かい、私達は向かい合うように座った。
 クラウス様のご両親は既に別の馬車で向かっていて、この馬車には私達と御者と侍女しか乗っていない。

 そのお陰で、王宮に着くまでの間、余計に気を遣って疲れるということはなかった。

 そして辿り着いたパーティー会場。
 クラウス様と手を繋いで入口をくぐると、早速視線を感じた。

「あのお方が……」
「でも、隣にいる方は平然としていますわ……」

 そんな会話が聞こえてきたけど、聞こえなかったフリをして主催者の国王陛下へと挨拶に向かった。

「本日はお招きいただきありがとうございます」
「こちらこそ、招待に応じてくれて感謝している」

 こんな感じの簡単なやりとりをしら陛下への挨拶が終わると、他の参加者の方にも挨拶に向かった。
 そして侯爵家以上の方々に挨拶を終えた時だった。

 パンッ!

 そんな音と共にクラウス様の仮面が叩き落とされた。
 同時に、火傷メイクをしてある顔が露わになって……

「ひっ……」

 ……私は慌てて上着を彼の頭にかぶせた。
 仮面を叩いた令嬢は変な声を漏らしていたけれど、それを気にせずに仮面を拾い上げて彼に手渡した。

「ありがとう」

 そう言って仮面を付け直すクラウス様。
 そして威圧のこもった声でこう続けた。

「ルールア男爵令嬢だな? この落とし前はどう付けるつもりだ?」

 それが聞こえていないのか、仮面を叩き落とした令嬢は私の方を見たままこんなことを口にした。

「貴女、よくこんな化け物の隣にいられますわね!
 こんな顔の人が好みなわけ!?」
「いえ、そういうわけではありませんわ」
「もうなんなのよ! 嫌なら嫌そうにしてなさいよ!」

 別に彼のことは嫌いじゃないので。そもそも、この顔は偽りです。

 そんなことは当然言えず、用意していた台詞を言おうとした。でも、言おうとした相手は逃げるように駆けていった。

 そして、他の令嬢を突き飛ばした。

「クラウス様のお顔が治ったのは嘘でしたのね! 貴女が余計なことを言うから、私はこんな目に遭いましたのよ! どうしてくれるのよ!」

 そう喚きながら突き飛ばした相手を踏みつける男爵令嬢。
 その時、踏みつけられている令嬢がもがきながらこちらを向いて、彼女が私の義妹だと分かった。

「リリア……」

 義妹には使用人のような扱いをされ、ストレスの捌け口にもされてきた。だから当然、恨みはある。
 でも、ティーカップは避けれたし、彼女のパンチも大して痛くはなかった。

 それだけのことしかされていないのに、ここで見殺しにするほど私は理性を捨てていない。
 それに、誰もリリア──義妹を助けようとしていなかったから。

 私は手に魔力を込めた。
 
「ゴボゴボ……」

 そして、一瞬にして顔の周りを水に包まれた男爵令嬢が空気を求めてもがき始めた。
 すぐに魔法は解除したけれど、しばらくは暴力を振るえそうになかった。

「大丈夫ですか!?」

 ようやく状況を理解した周囲の方々がリリアに駆け寄り、また男爵令嬢は取り押さえられた。
 その間に私はお医者様を医務室に呼びに行った。

 そのお陰か、すぐにリリアは医務室に運ばれて、暴れた男爵令嬢はどこかに連れていかれた。
 そして陛下の声によってパーティーは再開したのだけど、リリアの具合が気になって全く楽しめなかった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。 「君を愛する気はない」 そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。 だからハッキリと私は述べた。たった一文を。 「逃げるのですね?」 誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。 「レシールと向き合って私に何の得がある?」 「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」 「レシール・リディーア、覚悟していろ」 それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。 [登場人物] レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。  × セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…

ゆずこしょう
恋愛
「メーティア!私にあなたの婚約者を譲ってちょうだい!!」 国王主催のパーティーの最中、すごい足音で近寄ってきたのはアーテリア・ジュアン侯爵令嬢(20)だ。 皆突然の声に唖然としている。勿論、私もだ。 「アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」 20歳を超えて婚約者が居ない方がおかしいものだ… 「ではこうしましょう?私と婚約者を交換してちょうだい!」 「交換ですか…?」 果たしてメーティアはどうするのか…。

処理中です...