ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多

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6. 理由

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「ところで、本当に私で良かったのですか?」

 お屋敷に戻ってから、念のために聞いてみる私。
 ご両親も同意して下さっているのだけど、後から問題が出てきて離婚だなんて話になるのは嫌だから。

「もちろん。信じてもらえるように、敢えて証人が多くなるようにしたんだけど……」
「念のために聞いただけですわ」

 困ったようにそう言われて、余計なことを言ってしまったと後悔した。

「正直な話をすると、しっかりと血筋も見た上で婚約を申し込んだ。まあ、血筋が良くなくても根回しするつもりだったけどな」
「そうでしたのね。疑って申し訳ありませんでしたわ」

 ラウス君とはあっという間に親しくなって、距離も縮んでいたはず。
 それなのに……再会してから今まで、距離感を感じなかった時はない。

 一体どうして?

 本人に相談する訳にもいかず、まだ信頼関係が無い侍女に相談することも出来ず。この疑問を解決することは出来なさそうだった。

「いや、謝ることはない。他にも気になることがあったら遠慮なく言ってほしい」
「大丈夫ですわ」

 クラウス様にそう言われたけど、やっぱり打ち明けることは出来なかった。

 そんな時、部屋の外からこんな声が聞こえてきた。

「昼食の用意が出来ました」
「分かった、すぐに行く」

 廊下からの呼びかけに応じるクラウス様。
 彼は私の方に向き直ると、手を差し出しながらこんなことを口にした。

「そろそろ食堂に行こう」
「はい。ところで、この手は?」
「腰を抱こうとすると嫌がるから、せめて手を繋ぎたかったんだ」

 この国の社交界では、腰の辺りを抱くエスコートが主流になっている。
 でも、恥ずかしいから私は好きでは無かった。

 表立って嫌がっているつもりはなかったけど、どうやらバレていたらしい。
 私は黙って彼の手をとった。

「気分に合わせて距離を変えられるの、いいですね」
「そうか?」

 前に行って距離を取ってみたり、横に並んで近付いてみたり。
 これだけでも案外楽くてら恥ずかしさを感じない。

「楽しそうだな?」
「なんだか新鮮で」

 そんなことをしていたら、あっという間に食堂に着いた。

 それから昼食を進めながら雑談をしていると、クラウス様のお母様にこんなことを言われた。

「アレシアちゃん、良かったら侍女達にお茶の淹れ方を教えてもらえないかしら?」
「淹れ方は侍女さんの方が上手だと思いますわ」

 私の技術は高くない。それは間違いないから反論した。

「でも、味はアレシアちゃんが淹れた方が美味しいのよね……」
「技術以外の何かがあるんだろうな。後で淹れるところを見せてもらいたい」
「分かりましたわ」

 こうして、私はお茶を淹れるところを公爵夫妻に披露することになった。



 場所は変わって、庭園を眺められるテラス。
 私はここで公爵夫妻や使用人達に囲まれていた。

 目の前には伯爵家では最高級だった茶葉が用意されていて、公爵家の凄さを改めて知らされた。
 これが用意できる最低のものなのだから、驚くしか出来ない。

「では、始めますね」

 私の呟きにこの場の方々が頷く。

 それを見て、水を生み出すところから始める私。
 数分後、10杯分のお茶を無事に淹れ終えた。

「やっぱり美味しいな。淹れ方は変わらないはずなのに、どうなっている」

 不思議がる公爵様。一方のご夫人はお茶を飲み終えていて、代わりに余っている水を注いでいた。

「お水だけなのに、美味しいですわ」
「私も試そう」

 公爵様までもがただのお水を口にしていた。

「本当だ。美味しい」

 私の生み出す水が美味しいと結論が出されるのに、時間はかからなかった。
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