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12. 未遂
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アルバート様と婚約を結んでから1ヶ月、恐れていた日がやってきてしまった。
「殿下と婚約って、どういうことよ! 今すぐに破棄してきなさい!」
1ヶ月半ぶりに現れたセラフィは私の姿を捉えると、早速詰め寄ってきてこんなことを口にした。
「それはこの僕に対する命令かな? 王子の僕に命令するなんて、どう説明するつもりかな?」
「え、王子‥‥? 記憶の髪が長い王子様は間違いだったの……?」
「何を言ってるのか分かりませんけど、彼がアルバート殿下ですわよ?」
「そんな……。じゃあ、私は……」
途端に絶望した様子になるセラフィ。
まさかアルバート様が誰か分かっていなかっただなんて、予想も出来なかった。
「今までよく僕の婚約者に酷いことをしてくれたね?」
「えっと……それは殿下の勘違いだと思いますわ」
「僕の頭が勘違いを起こすほど弱いって言っているのかい? まさか伯爵令嬢ごときに馬鹿にされるとは思わなかったよ」
悪い笑顔でそう口にするアルバート様。
それを見た私は、少し彼のことが怖くなってしまった。
「そういうことでは……」
「一応これだけは言っておくよ。僕は大切な人を傷付けられたら、どんな手でも使う。
嫌われてもいい。それで大切な人を守れるのならね」
ううん、怖くなんかないわ。だって、これは私を守るためのものだから。
「今までのことは謝りますわ。だから、許して頂けませんか……?」
涙を浮かべながらそう口にするセラフィ。
次の瞬間だった。
「……とでもいうと思った? レシア、あんたのせいで私は散々な目に遭ってるのよ! 消えてちょうだい!」
そんな言葉と共に、私はセラフィに投げ飛ばされてしまった。
向かう先に見えるのは、この学院に数カ所存在する吹き抜けのうちの1つ。
そしてここは3階の廊下。落ちたら無事では済まないのは明らかだった。
咄嗟に、私はセラフィの腕を思いっきり掴んでしまう。
でも、勢いはそのまま。2人揃って柵を乗り越えてしまった。
でも、アルバート様は動かない。
「……風よ」
……私が魔法で宙に浮かべるのを知っているから。
「いやああああぁぁッ!」
絶叫が私の耳を貫く。
そして、ドサっという鈍い音が続けて聞こえてきた。
「私、セラフィを……」
「ここは3階だからあの程度じゃ死なないよ。床は柔らかい絨毯だから、というのもあるけど」
3階の廊下に戻った私は、セラフィの腕を掴んだことを後悔していた。
「まだ生きているって決まったわけじゃないわ……」
階段を駆け降りて、1階に向かう私。
セラフィの元に駆け寄ると、足元からこんな声が聞こえた。
「痛いぃっ! 助けてぇ!」
「無事ですのね」
痛そうに涙こそ浮かべているけれど、明らかに元気な様子で安心する私。
「セラフィ嬢を拘束しろ」
「嫌だ、牢屋なんて行きたくない! 誰か助けなさいよ!
いやああああぁぁ!」
遅れて、殿下がそんなことを口にして、衛兵達があっという間にセラフィの身体を縄で縛った。
そして連れていかれるのもあっという間で、煩い声はすぐに聞こえなくなった。
「レシアが宙に浮けるのを知らなかったら、クッションになりに行くところだったよ」
苦笑いを浮かべるアルバート様。でも、それは冗談には聞こえなくて。
教えておいて良かったわ……。
そんな風に思う私だった。
「殿下と婚約って、どういうことよ! 今すぐに破棄してきなさい!」
1ヶ月半ぶりに現れたセラフィは私の姿を捉えると、早速詰め寄ってきてこんなことを口にした。
「それはこの僕に対する命令かな? 王子の僕に命令するなんて、どう説明するつもりかな?」
「え、王子‥‥? 記憶の髪が長い王子様は間違いだったの……?」
「何を言ってるのか分かりませんけど、彼がアルバート殿下ですわよ?」
「そんな……。じゃあ、私は……」
途端に絶望した様子になるセラフィ。
まさかアルバート様が誰か分かっていなかっただなんて、予想も出来なかった。
「今までよく僕の婚約者に酷いことをしてくれたね?」
「えっと……それは殿下の勘違いだと思いますわ」
「僕の頭が勘違いを起こすほど弱いって言っているのかい? まさか伯爵令嬢ごときに馬鹿にされるとは思わなかったよ」
悪い笑顔でそう口にするアルバート様。
それを見た私は、少し彼のことが怖くなってしまった。
「そういうことでは……」
「一応これだけは言っておくよ。僕は大切な人を傷付けられたら、どんな手でも使う。
嫌われてもいい。それで大切な人を守れるのならね」
ううん、怖くなんかないわ。だって、これは私を守るためのものだから。
「今までのことは謝りますわ。だから、許して頂けませんか……?」
涙を浮かべながらそう口にするセラフィ。
次の瞬間だった。
「……とでもいうと思った? レシア、あんたのせいで私は散々な目に遭ってるのよ! 消えてちょうだい!」
そんな言葉と共に、私はセラフィに投げ飛ばされてしまった。
向かう先に見えるのは、この学院に数カ所存在する吹き抜けのうちの1つ。
そしてここは3階の廊下。落ちたら無事では済まないのは明らかだった。
咄嗟に、私はセラフィの腕を思いっきり掴んでしまう。
でも、勢いはそのまま。2人揃って柵を乗り越えてしまった。
でも、アルバート様は動かない。
「……風よ」
……私が魔法で宙に浮かべるのを知っているから。
「いやああああぁぁッ!」
絶叫が私の耳を貫く。
そして、ドサっという鈍い音が続けて聞こえてきた。
「私、セラフィを……」
「ここは3階だからあの程度じゃ死なないよ。床は柔らかい絨毯だから、というのもあるけど」
3階の廊下に戻った私は、セラフィの腕を掴んだことを後悔していた。
「まだ生きているって決まったわけじゃないわ……」
階段を駆け降りて、1階に向かう私。
セラフィの元に駆け寄ると、足元からこんな声が聞こえた。
「痛いぃっ! 助けてぇ!」
「無事ですのね」
痛そうに涙こそ浮かべているけれど、明らかに元気な様子で安心する私。
「セラフィ嬢を拘束しろ」
「嫌だ、牢屋なんて行きたくない! 誰か助けなさいよ!
いやああああぁぁ!」
遅れて、殿下がそんなことを口にして、衛兵達があっという間にセラフィの身体を縄で縛った。
そして連れていかれるのもあっという間で、煩い声はすぐに聞こえなくなった。
「レシアが宙に浮けるのを知らなかったら、クッションになりに行くところだったよ」
苦笑いを浮かべるアルバート様。でも、それは冗談には聞こえなくて。
教えておいて良かったわ……。
そんな風に思う私だった。
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