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10. 事故
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翌朝、学院の教室に入った私の気分は最悪だった。
セラフィが私の席の前に陣取っていたから。
「なんでやり返して来ないのよ!」
席に近付くと、そんな声をかけられた。
今のは聞き間違えではないわよね……?
「そういう趣味はありませんので」
適当に返しながら、席に着く私。
「なるほど。虐められるのが好きなのね」
「そんな趣味はありませんわ」
何をどう考えたら、私が変な趣味をしていると思うのかしら?
思わず、同じ言葉を繰り返してしまった。
「つまらないわね」
今更だけど、敬語も使えない人に言われたくないわ……。
そう思っていると、いつもと変わらない時間に担任の教授がやってきて、セラフィは離れていった。
それから少しして、教室を移動するために階段を登っている時だった。
突然、肩を勢いよく引かれ、堪えられずに私の身体は後ろへと傾いた。
直後に何かにぶつかったけれど、勢いが弱まることはなくて。
「風よ」
慌てて風魔法を使って体勢を立て直そうとした。
そして……
「大丈夫?」
……いつからここに居たのか、殿下が私の身体をしっかりと支えてくれていて、事なきを得た。
「ありがとうございます」
床に下ろされ、振り向いてからお礼を言う私。
その向こうにセラフィが倒れているのが見えて、私は近くに向かった。
「殿下、助けを呼んできて頂けませんか?」
いくら嫌がらせをされていたからって、怪我をしている人をそのままにする気は無かった。
「分かった」
そう言って階段を駆け降りていく殿下。
「これ、動かさない方がいいわよね……?」
「ええ」
セラフィの息はあるけれど、腕が変な方向に曲がっていて、何も出来ない私達。
すぐに衛兵とお医者様がやってきて、その場で手当を始めた。
私達は次の授業に行くように言われたから、その後のことは知らない。
でも、アルバート殿下の表情に怒りが滲んでいるのは分かった。
「とにかくレシアが無事で良かったよ。まさか、あれほど危険なことをされるとは思わなかった」
「私もですわ。完全に油断していましたから……」
そんな会話をしながら廊下を進む私達。
リエルさんは私の隣で話を聞いているだけだけど、怒りを覚えているみたい。
そんな時、1限目の始まりを告げる鐘が鳴った。
鐘が鳴り終わる前に入れば遅刻は免れるから、走ろうとしたのだけど……ドレスでは上手く走れなくて。
結局、3人揃って遅刻した。
セラフィが私の席の前に陣取っていたから。
「なんでやり返して来ないのよ!」
席に近付くと、そんな声をかけられた。
今のは聞き間違えではないわよね……?
「そういう趣味はありませんので」
適当に返しながら、席に着く私。
「なるほど。虐められるのが好きなのね」
「そんな趣味はありませんわ」
何をどう考えたら、私が変な趣味をしていると思うのかしら?
思わず、同じ言葉を繰り返してしまった。
「つまらないわね」
今更だけど、敬語も使えない人に言われたくないわ……。
そう思っていると、いつもと変わらない時間に担任の教授がやってきて、セラフィは離れていった。
それから少しして、教室を移動するために階段を登っている時だった。
突然、肩を勢いよく引かれ、堪えられずに私の身体は後ろへと傾いた。
直後に何かにぶつかったけれど、勢いが弱まることはなくて。
「風よ」
慌てて風魔法を使って体勢を立て直そうとした。
そして……
「大丈夫?」
……いつからここに居たのか、殿下が私の身体をしっかりと支えてくれていて、事なきを得た。
「ありがとうございます」
床に下ろされ、振り向いてからお礼を言う私。
その向こうにセラフィが倒れているのが見えて、私は近くに向かった。
「殿下、助けを呼んできて頂けませんか?」
いくら嫌がらせをされていたからって、怪我をしている人をそのままにする気は無かった。
「分かった」
そう言って階段を駆け降りていく殿下。
「これ、動かさない方がいいわよね……?」
「ええ」
セラフィの息はあるけれど、腕が変な方向に曲がっていて、何も出来ない私達。
すぐに衛兵とお医者様がやってきて、その場で手当を始めた。
私達は次の授業に行くように言われたから、その後のことは知らない。
でも、アルバート殿下の表情に怒りが滲んでいるのは分かった。
「とにかくレシアが無事で良かったよ。まさか、あれほど危険なことをされるとは思わなかった」
「私もですわ。完全に油断していましたから……」
そんな会話をしながら廊下を進む私達。
リエルさんは私の隣で話を聞いているだけだけど、怒りを覚えているみたい。
そんな時、1限目の始まりを告げる鐘が鳴った。
鐘が鳴り終わる前に入れば遅刻は免れるから、走ろうとしたのだけど……ドレスでは上手く走れなくて。
結局、3人揃って遅刻した。
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