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5. 買収

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 あれから1時間、リエルさんは授業に戻る事が出来ていた。
 でも、セラフィは未だに戻ってきていない。

 殿下にされた命令通り掃除をしているのか、それとも帰ってしまったのか。それを私が知ることはできていない。

「レシア様、ドレスの弁償はさせた方がいいですわよね?」
「当然ですわ」

 今は実技の授業の練習時間で危険なものではないから雑談が許されている。
 だから、私たちはこうしてこの後の予定を立てていた。

「今日中に請求書を送った方がいいですわ。伯爵家に直接」
「分かりましたわ」

 他人の物を壊したのだから、弁償するのは当たり前のこと。
 でも、セラフィなら請求書を無視するかもしれない。そう思ったから、伯爵家に直接請求書を送った方がいいと考えた。

「話が変わりますけど、今日のお昼は何にするか決めてありまして?」
「まだ決めてませんわ。レシア様は?」
「私は日替わりランチにしようと思っていますわ」

 この学院のレストランは、生徒なら無料で使うことができる。
 一流シェフが作っているのに無料なのは学費に加味されているから。それのせいで、学費はかなり高くなっている。

 それのお陰か、高い地位になるほど価格が高いものを選ぶ──そんな習慣はこの学院には存在していない。

「私も同じにしてもいいですか?」
「ええ」

 私達が練習のための魔法を放ちながら雑談している時だった。
 横から中級の攻撃魔法が迫ってくるのを感じた。

 急いで防御魔法を使う私。
 直後、炎の球が僅かに水色に輝く障壁に阻まれて霧散した。

「決闘がお望みかしら?」

 魔法を放ってきた人物に問いかける私。
 防御魔法を使ったまま、攻撃魔法をいつでも放てるようにして近付く。

 すると、その人物──伯爵令嬢のアンセルは勢いよく頭を下げてこう口にした。

「申し訳ありませんでした! 実は……」

 そうしてセラフィに脅されていたことを語り始めるアンセル。
 それを聞いて、私はこんなことを思った。

 買収するならもっと完璧にやりなさいよ……!

 応援しているわけではないのだけど、あまりにも穴が多すぎて呆れてしまった。
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