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2. 偽り
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あの後、セラフィは早退することになった。
ドレスが椅子から剥がれなくなっていて、切る羽目になっていたから。
「これで今日は平穏に過ごせそうですわ」
セラフィが教室から去ってからそう口にするのはノールチェス公爵家のアリス様で、私とは学院に入る前からの付き合いがある。
彼女も私と同じようにセラフィに迷惑していた。
「そうですわね。今日はランチを楽しめそうですわ」
「ええ」
私達がセラフィに受けてきた嫌がらせは、ランチの時間によく行われていた。
スープを運んでいるときにぶつかられたり、食べているときに頭からジュースをかけられたり、こっそりドレスを切られたこともあった。
でも、私たちが表立って反撃することは無かった。
同じことをしたら、セラフィを罪に問うことが出来なくなってしまうから。
そのせいで嫌がらせが止まることはなかったけれど……。
「そろそろ次の授業の教室に移動しましょう」
「あの先生、時間に煩いですものね」
そんな会話をしながら席を立つ私達。
そんな時だった。
「レシア様、セラフィの席に接着剤を垂らしたの、貴女なんですってね? 一体何がしたいのですか!?」
「あら、貴女には私がそんな下らないことをするように見えましたのね? 侮辱された気分ですわ」
声のトーンを下げながら不機嫌に見えるように伝えると、声をかけてきた伯爵令嬢は視線を彷徨わせた。
「も、申し訳ありませんでした。事実を教えていただけませんか?」
「あれ、セラフィさんが自分で垂らしていましたのよ」
「そうでしたのね……。疑って申し訳ありませんでした」
そう頭を下げられ、私は一言付け加えた。
「簡単に人の言葉を信じないほうが、身のためですわよ」
「どういう意味ですか?」
「そのままですわ」
この学院は人を陥れるため、偽りの噂話であふれかえっている。
だから、私は正義感に溢れる彼女が悪意に呑まれないように助言をしたつもりだった。
それに、これ以上セラフィに罪のない方が利用されないようにしたかったから。
「では、私は移動するのでこれで失礼しますわ」
そう言って、私はアリス様と教室を後にした。
「レシア様は優しすぎますわ」
「余計な恨みは買わないほうがいいので、こうしているだけですわ。優しいと思ったら大間違いですわ」
「ふふ、そうでしたわね」
そんな会話をしながら廊下を進む私達。
次の授業が行われる講堂に着くと、早速他の令嬢たちが集まってきた。
全員私達の機嫌を取ろうとしているのか、配慮しているような声をかけてくる。
でも、公爵家と関係を持ちたいという欲望が見え透いていて、一気に私の気分は悪くなっていった。
ドレスが椅子から剥がれなくなっていて、切る羽目になっていたから。
「これで今日は平穏に過ごせそうですわ」
セラフィが教室から去ってからそう口にするのはノールチェス公爵家のアリス様で、私とは学院に入る前からの付き合いがある。
彼女も私と同じようにセラフィに迷惑していた。
「そうですわね。今日はランチを楽しめそうですわ」
「ええ」
私達がセラフィに受けてきた嫌がらせは、ランチの時間によく行われていた。
スープを運んでいるときにぶつかられたり、食べているときに頭からジュースをかけられたり、こっそりドレスを切られたこともあった。
でも、私たちが表立って反撃することは無かった。
同じことをしたら、セラフィを罪に問うことが出来なくなってしまうから。
そのせいで嫌がらせが止まることはなかったけれど……。
「そろそろ次の授業の教室に移動しましょう」
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そんな会話をしながら席を立つ私達。
そんな時だった。
「レシア様、セラフィの席に接着剤を垂らしたの、貴女なんですってね? 一体何がしたいのですか!?」
「あら、貴女には私がそんな下らないことをするように見えましたのね? 侮辱された気分ですわ」
声のトーンを下げながら不機嫌に見えるように伝えると、声をかけてきた伯爵令嬢は視線を彷徨わせた。
「も、申し訳ありませんでした。事実を教えていただけませんか?」
「あれ、セラフィさんが自分で垂らしていましたのよ」
「そうでしたのね……。疑って申し訳ありませんでした」
そう頭を下げられ、私は一言付け加えた。
「簡単に人の言葉を信じないほうが、身のためですわよ」
「どういう意味ですか?」
「そのままですわ」
この学院は人を陥れるため、偽りの噂話であふれかえっている。
だから、私は正義感に溢れる彼女が悪意に呑まれないように助言をしたつもりだった。
それに、これ以上セラフィに罪のない方が利用されないようにしたかったから。
「では、私は移動するのでこれで失礼しますわ」
そう言って、私はアリス様と教室を後にした。
「レシア様は優しすぎますわ」
「余計な恨みは買わないほうがいいので、こうしているだけですわ。優しいと思ったら大間違いですわ」
「ふふ、そうでしたわね」
そんな会話をしながら廊下を進む私達。
次の授業が行われる講堂に着くと、早速他の令嬢たちが集まってきた。
全員私達の機嫌を取ろうとしているのか、配慮しているような声をかけてくる。
でも、公爵家と関係を持ちたいという欲望が見え透いていて、一気に私の気分は悪くなっていった。
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