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4. 公爵令嬢は歓喜する
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(やっと邪魔なお姉様がいなくなったわ!)
サウザンテ公爵家の次女クラリスは歓喜していた。
しかし、表立って喜ぶことはしなかった。
「お嬢様、お茶をお持ちしました」
「今はいらないわ……」
「畏まりました……。一応、お部屋の前に置いておきますね」
か細くそう答えれば、使用人達が入ってくることはない。
虐めてくる相手であろうと、姉が断罪されて悲しんでいる心優しい妹を演じるクラリス。
こうしていれば、愉悦に染まる表情を見られなくて済む。そんな打算もあっての行動だった。
(邪魔なお姉様がいなくなって最高の気分だわ!)
いくら勉強しても、必死に礼儀作法を練習しても、足が痛くなるまでダンスのレッスンをしても。褒められるのは姉のクラウディアだった。
必死に練習している訳ではないのに、褒められる姉が恨めしかった。
愛嬌がないのにも関わらず、王太子殿下の婚約者になった姉が羨ましかった。
私なら、きっと殿下を笑顔にできるのに。そんなことを何度も思った。
しかし、クラリスが必死に訴えても、努力をアピールしても、何も変わらなかった。
そして思いついてしまうのだ。
姉に虐められていると嘘をついて、目の上のたんこぶでしかない姉が周囲から責められるようにする計画を。
「うふふ……本当に上手くいって良かったわ」
計画を無事に成功させて、クラリスは大満足だった。
両親の愛も、講師達の愛情も、王太子殿下の愛も。全部私のものになる。そう考えていたから。
しかし、現実は少し違った。
それは翌日明らかになる。
「お嬢様、ダンスのレッスンの講師の方がお見えになりました」
「すぐに行くわ」
褒められながらレッスンをする広間に向かうクラリス。
そして……
「ステップが少し遅いです! もっと足は素早く動かして! 背筋が曲がってます!」
「は、はいぃ……」
……文句を言えないほど怖い表情で、大量のダメ出しをされてしまった。
理由は単純である。王太子妃となるクラリスに要求されるレベルが上がってしまったのだ。
そして数時間が経ち……
「今日はこのくらいに致しましょう。最初とは見違えていましたよ」
……少しばかり分かりにくい褒め方をされるクラリスだった。
だが、褒められた本人は……
「ありがとう……ございました……」
……褒められたことを喜べないほど疲れてしまっていた。
そしてその後の礼儀作法のレッスンも、王太子妃に必要な教養を身につけるための勉強も、どれも難易度が高いもので、クラリスの体力を削っていった。
それでも、初めて講師に褒められて、心の中で喜ぶクラリスだった。
彼女はまだ知らない。クラウディアが乗り越えてきた妃教育は、こんなものでは済まないということを。
サウザンテ公爵家の次女クラリスは歓喜していた。
しかし、表立って喜ぶことはしなかった。
「お嬢様、お茶をお持ちしました」
「今はいらないわ……」
「畏まりました……。一応、お部屋の前に置いておきますね」
か細くそう答えれば、使用人達が入ってくることはない。
虐めてくる相手であろうと、姉が断罪されて悲しんでいる心優しい妹を演じるクラリス。
こうしていれば、愉悦に染まる表情を見られなくて済む。そんな打算もあっての行動だった。
(邪魔なお姉様がいなくなって最高の気分だわ!)
いくら勉強しても、必死に礼儀作法を練習しても、足が痛くなるまでダンスのレッスンをしても。褒められるのは姉のクラウディアだった。
必死に練習している訳ではないのに、褒められる姉が恨めしかった。
愛嬌がないのにも関わらず、王太子殿下の婚約者になった姉が羨ましかった。
私なら、きっと殿下を笑顔にできるのに。そんなことを何度も思った。
しかし、クラリスが必死に訴えても、努力をアピールしても、何も変わらなかった。
そして思いついてしまうのだ。
姉に虐められていると嘘をついて、目の上のたんこぶでしかない姉が周囲から責められるようにする計画を。
「うふふ……本当に上手くいって良かったわ」
計画を無事に成功させて、クラリスは大満足だった。
両親の愛も、講師達の愛情も、王太子殿下の愛も。全部私のものになる。そう考えていたから。
しかし、現実は少し違った。
それは翌日明らかになる。
「お嬢様、ダンスのレッスンの講師の方がお見えになりました」
「すぐに行くわ」
褒められながらレッスンをする広間に向かうクラリス。
そして……
「ステップが少し遅いです! もっと足は素早く動かして! 背筋が曲がってます!」
「は、はいぃ……」
……文句を言えないほど怖い表情で、大量のダメ出しをされてしまった。
理由は単純である。王太子妃となるクラリスに要求されるレベルが上がってしまったのだ。
そして数時間が経ち……
「今日はこのくらいに致しましょう。最初とは見違えていましたよ」
……少しばかり分かりにくい褒め方をされるクラリスだった。
だが、褒められた本人は……
「ありがとう……ございました……」
……褒められたことを喜べないほど疲れてしまっていた。
そしてその後の礼儀作法のレッスンも、王太子妃に必要な教養を身につけるための勉強も、どれも難易度が高いもので、クラリスの体力を削っていった。
それでも、初めて講師に褒められて、心の中で喜ぶクラリスだった。
彼女はまだ知らない。クラウディアが乗り越えてきた妃教育は、こんなものでは済まないということを。
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