悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多

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6. 悪役令嬢は視察する

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 断罪されてから1週間、予想していない出来事が起きた。

 ラインハルト王太子がいる王家と公爵家との取引が上手くいき、余裕が出来た。そんな理由がきっかけの商談が増えてきたのだ。

 何が起きたのかは分からない。しかし、断罪した者達の浪費が始まったのだとクラウディアは考えていた。

「クラウディア様、笑みが怖いです」

「そうかしら?」

「悪役のような笑みでしたよ」

 彼女が直接的にしたことではないが。
 王家に報いる事が出来そうなことが嬉しくて、商会が成長出来そうなことも嬉しくて、笑みが漏れていたらしい。
 指摘されてから、慌てて表情を作るクラウディア。

 今の世の中において、商売とは2通りのやり方が存在する。
 1つは直接貴族などと取引すること。
 もう1つはその取引を仲介すること。

 クラウディアの商会……サザン商会は両方行っていた。
 ちなみに、この名前はクラウディアの協力者が勝手につけたものである。クラウディアが名前はなんでもいいと言っていたから。

 今回増えそうなのは、仲介の方だった。
 そのうちの1つ、ゲーテ商会からの商談が入ったと聞いた時はクラウディアは喜んだ。
 ゲーテ商会はアルステル帝国で最も大きい商会の1つなのだ。そして、その規模でありながら立ち上がってからまだ3年しか経っていない。
 上手くいけばノウハウを得られるかもしれない。そう考えたクラウディアは3日後に控える商談が楽しみで仕方なかった。


 ちなみにサザン商会では、しっかりとした本部をここアルステル帝国の帝都に建てるという、非常に重要な事業を進めている。
 クラウディアがこの地で暮らしていた訳ではないのにも関わらずこの地に建てられるのは、この地での取引が多いからである。

 今日のクラウディアは商会長として視察に向かう予定だ。

「クラウディア様、馬車の用意が出来ました。いつでも出発出来ます」

「分かったわ」

 従業員に言われ、支部の前に停められた馬車に向かう。
 商会とはいえ、護衛はしっかりついているから襲われる心配はあまりない。

「では出発いたします」

 ガタゴトと揺れ出す馬車。座席のクッションはそれほど厚くないので振動が伝わってくる。

「この揺れもなんとか出来るといいわね……」

「クッションを厚くすれば軽減できますが……」

「そうじゃなくて、車体が揺れないようにしたいのよ。そうすれば梱包にかかる費用も減らせるわ」

「うーん、そのような馬車は聞いたことがありませんね……」

「それなら、私達で作りましょう!」

「それは良いですね! 開発の予算を組むように伝えておきます」

 そんな会話を従業員と交わすクラウディア。
 間も無く、建設中の本部へと到着し、順調に進んでいると分かり安心するのだった。
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