129 / 155
129. 媚薬騒ぎ
しおりを挟む
「お父様、媚薬って……どういうことですか?」
数秒間固まってから、お父様にそう問いかける私。
アノヒトの隠密が盛ったみたいだけど、その隠密の実力はうちの護衛さんには及ばなかったと記憶しているから、私は困惑している。
「ああ、実はさっき王家から使者が来ていて、その時に盛られたようだ。
相手が王家の使いだという理由で監視を外したのが間違いだった。すまなかった」
「お父様は悪くありませんわ。そうするのが決まりですもの」
使用人であるとはいえ、格上の相手の使いに厳しい監視を付けるのは信頼していないことの現れで、失礼とされている。
だから、お父様は何も悪くないのよね。
「そう言ってもらえると助かるよ。もし媚薬が効き始めて辛かったら遠慮なくアイリスに言ってくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は執事長さんにこんなことを伝えた。
「明日の朝までフィーナに男性の使用人を近付けないように。それと、侍女を誰かしら側につけて欲しい」
「畏まりました」
執事長さんが恭しく頭を下げて部屋から出ていくと、入れ替わるようにしてジーク様が入ってきた。
そしてまっすぐ私の方にやってきて、徐に抱きしめてくれた。
「怖いよね……」
「うん……」
ジーク様は私が媚薬を盛られたことを知っているみたいで、そう口にしながら私の頭を撫でてきた。
そして、彼が離れようとする時に手が首に触れて思わず飛びのいてしまった。
「ごめん……嫌だった?」
「ううん、手が当たった時に変な感じがして思わず……」
「媚薬が効いてきたのか」
「多分……」
私達がそんな話をしていると、お父様がこんなことを口にした。
「フィーナ、いつ王子が襲いに来るか分からないから別の部屋で寝るようにしてくれ。侍女に部屋の準備はさせてある」
「分かりましたわ……」
身体が熱くて胸がドキドキするのは媚薬のせいよね……?
「もし耐えられないと思ったらこれを読むように。媚薬の対処法が書いてある」
そう言って半分に折ってある紙を出すお父様。
受け取る時に透けて見えた時はお母様の字だったから、急いで書いてくれたみたい。
なんだか恥ずかしいことが書かれているのも見えた気がしたから、頼るのはやめておいた方が良さそうね……。
そんなことを心の中で決め、中庭に面した部屋に移動する私。
こんな状況だからついてくる侍女さんの人数もいつもより多く、完全武装の護衛さんもついてきている。
ちなみに、私はいつも通りスカートの内側に護身用の短剣を忍ばせている。
身体がおかしくなっている今は剣を交えることなんて出来そうにないから。
「この部屋で合ってるわよね?」
「はい」
侍女さん達に確認をとってから部屋に入ると、お茶とお菓子、それにチェス盤や読みかけの本が用意されていた。
暇を弄ばないようにここまで運んできてくれたみたい。
「ジーク様、ソーラス様から伝言です。
何があってもフィーナに手を出したら許さないからな、だそうです」
「そうですか……」
私達姉妹のことになると心配性になるお父様だけど、やっぱりこうなるのね……。
苦笑するジーク様を前に、そんなことをを思う私だった。
数秒間固まってから、お父様にそう問いかける私。
アノヒトの隠密が盛ったみたいだけど、その隠密の実力はうちの護衛さんには及ばなかったと記憶しているから、私は困惑している。
「ああ、実はさっき王家から使者が来ていて、その時に盛られたようだ。
相手が王家の使いだという理由で監視を外したのが間違いだった。すまなかった」
「お父様は悪くありませんわ。そうするのが決まりですもの」
使用人であるとはいえ、格上の相手の使いに厳しい監視を付けるのは信頼していないことの現れで、失礼とされている。
だから、お父様は何も悪くないのよね。
「そう言ってもらえると助かるよ。もし媚薬が効き始めて辛かったら遠慮なくアイリスに言ってくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は執事長さんにこんなことを伝えた。
「明日の朝までフィーナに男性の使用人を近付けないように。それと、侍女を誰かしら側につけて欲しい」
「畏まりました」
執事長さんが恭しく頭を下げて部屋から出ていくと、入れ替わるようにしてジーク様が入ってきた。
そしてまっすぐ私の方にやってきて、徐に抱きしめてくれた。
「怖いよね……」
「うん……」
ジーク様は私が媚薬を盛られたことを知っているみたいで、そう口にしながら私の頭を撫でてきた。
そして、彼が離れようとする時に手が首に触れて思わず飛びのいてしまった。
「ごめん……嫌だった?」
「ううん、手が当たった時に変な感じがして思わず……」
「媚薬が効いてきたのか」
「多分……」
私達がそんな話をしていると、お父様がこんなことを口にした。
「フィーナ、いつ王子が襲いに来るか分からないから別の部屋で寝るようにしてくれ。侍女に部屋の準備はさせてある」
「分かりましたわ……」
身体が熱くて胸がドキドキするのは媚薬のせいよね……?
「もし耐えられないと思ったらこれを読むように。媚薬の対処法が書いてある」
そう言って半分に折ってある紙を出すお父様。
受け取る時に透けて見えた時はお母様の字だったから、急いで書いてくれたみたい。
なんだか恥ずかしいことが書かれているのも見えた気がしたから、頼るのはやめておいた方が良さそうね……。
そんなことを心の中で決め、中庭に面した部屋に移動する私。
こんな状況だからついてくる侍女さんの人数もいつもより多く、完全武装の護衛さんもついてきている。
ちなみに、私はいつも通りスカートの内側に護身用の短剣を忍ばせている。
身体がおかしくなっている今は剣を交えることなんて出来そうにないから。
「この部屋で合ってるわよね?」
「はい」
侍女さん達に確認をとってから部屋に入ると、お茶とお菓子、それにチェス盤や読みかけの本が用意されていた。
暇を弄ばないようにここまで運んできてくれたみたい。
「ジーク様、ソーラス様から伝言です。
何があってもフィーナに手を出したら許さないからな、だそうです」
「そうですか……」
私達姉妹のことになると心配性になるお父様だけど、やっぱりこうなるのね……。
苦笑するジーク様を前に、そんなことをを思う私だった。
60
お気に入りに追加
5,349
あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!
みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。
妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。
今迄関わる事のなかった異母姉。
「私が、お姉様を幸せにするわ!」
その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。
最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。
❋主人公以外の他視点の話もあります。
❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?
【完結】契約結婚。醜いと婚約破棄された私と仕事中毒上司の幸せな結婚生活。
千紫万紅
恋愛
魔塔で働く平民のブランシェは、婚約者である男爵家嫡男のエクトルに。
「醜くボロボロになってしまった君を、私はもう愛せない。だからブランシェ、さよならだ」
そう告げられて婚約破棄された。
親が決めた相手だったけれど、ブランシェはエクトルが好きだった。
エクトルもブランシェを好きだと言っていた。
でもブランシェの父親が事業に失敗し、持参金の用意すら出来なくなって。
別れまいと必死になって働くブランシェと、婚約を破棄したエクトル。
そしてエクトルには新しい貴族令嬢の婚約者が出来て。
ブランシェにも父親が新しい結婚相手を見つけてきた。
だけどそれはブランシェにとって到底納得のいかないもの。
そんなブランシェに契約結婚しないかと、職場の上司アレクセイが持ちかけてきて……
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【コミカライズ決定】契約結婚初夜に「一度しか言わないからよく聞け」と言ってきた旦那様にその後溺愛されています
氷雨そら
恋愛
義母と義妹から虐げられていたアリアーナは、平民の資産家と結婚することになる。
それは、絵に描いたような契約結婚だった。
しかし、契約書に記された内容は……。
ヒロインが成り上がりヒーローに溺愛される、契約結婚から始まる物語。
小説家になろう日間総合表紙入りの短編からの長編化作品です。
短編読了済みの方もぜひお楽しみください!
もちろんハッピーエンドはお約束です♪
小説家になろうでも投稿中です。
完結しました!! 応援ありがとうございます✨️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる