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128. お茶会③

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 中庭を見下ろせる窓際のテーブルを囲った私達は他愛ない話をしながらジーク様が来るのを待っていた。

 ジーク様には申し訳ないけど、今日のお茶会の主役はジーク様と言っても過言ではない。
 アイセア様とイリーナ様に彼を紹介するのが今日のお茶会の目的だから。


「フィーナ様、ジーク様とはどこまで行きましたの?」

「……まだ口付けだけですわ」

「普通ですのね」


 残念そうに呟くイリーナ様。
 すると、その様子を見ていたアイセア様がこんなことを口にした。


「イリーナ様、残念がってないでご自身のお話でもされたらいかがですか?」

「わ、私もフィーナ様と同じですわ」

「同じではなかったら大問題ですわよ」


 口付けもまだだったら気持ちが近付いていないことになるし、それ以上になっていたら婚前交渉を疑われかねないから。

 ちょっと待って……。私、ジーク様と同じ部屋で2人きりで寝たことがあるけど、大丈夫よね……?
 このことは隠しておいた方がいいわよね……。


 内心で冷や汗が止まらない私。
 そんな時、部屋の扉がノックされてジーク様の声が聞こえてきた。




「この方が……」

「紹介しますね。彼が私の婚約者のジーク様ですわ。まだ若いけど辺境伯家の当主、ということになっていますの」

「はじめまして。フィーナの婚約者のジーク・アトランタと申します。顔を合わせる機会は少ないと思いますが、よろしくお願いします」


 そう自己紹介をして頭を下げるジーク様。

 ジーク様の次は、イリーナ様が自己紹介をはじめた。


「グレイル公爵家の長女のイリーナと申しますわ。これからよろしくお願いしますわ」

「ノートリア公爵家のアイセアと申します。これから宜しくお願いいたしますわ」


 スカートを摘んで公爵令嬢らしく優雅に礼をする2人。
 ちなみに、自己紹介が簡潔なのはこの後の話題を無くさないようにするためで、面倒だからといった理由ではない。


「ジーク様、フィーナ様が貴方のことを当主と言っていたので気のなったのですけど……お父様は既に他界されていますの?」

「そんなことはまだ起きていないので大丈夫ですよ。60歳を過ぎても余裕で生きると思いますよ」

「よかったですわ……」


 胸に手を当ててホッとしたような仕草を見せるイリーナ様。
 このすぐ後、ジーク様に対する質問攻めが2時間近く続いた。

 あんなに沢山の質問を思いつけるアイセア様とイリーナ様にも全ての質問に笑顔で返せるジーク様にも驚いたわ!


 質問が尽きてからは特に変わったことのない雑談を1時間くらい交わしてからお開きとなった。


 そして、その日の夜。


「大変なことになった……!」

「何があったの⁉︎」

「王子の隠密がフィーナに媚薬を盛ったらしい」

「何ですって⁉︎」


 驚きの声を上げるお母様と焦りの表情を浮かべるお父様。
 目の前で起こるやり取りを、私は他人事のように見ていた。

 まさか、さっきのお茶に媚薬が盛られていたの……?


 媚薬を盛られるのは初めてだから、何が起こるのか分からない恐怖心に襲われる私だった。
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