婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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121. 宴会で迫るもの

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 宴会会場に着いて、公爵家の方々に挨拶をし終えた時だった。


「フィーナ様、ごきげんよう」


 いつの間にか私の隣にいたリーシェ様が声をかけてきた。


「ごきげんよう。お兄様と一緒にいなくていいのですか?」

「イリアス様はご友人の殿方と話し込んでいるので、話が終わるまでフィーナ様とご一緒しようと思いましたの」


 そう説明するリーシェ様。
 その間にお兄様は話を終えて私達のところに歩いてきていた。


「もう話は終わったみたいですよ?」

「そうみたいですね。でもフィーナ様との話が終わるまでは離れませんわ」

「そこまでしてくれなくても大丈夫ですのに……」

「イリアス様とはいつでもお話できるけど、フィーナ様とは中々会えませんから当たり前のことですわ!」


 リーシェ様がそう言いながら胸を張ると、お兄様がリーシェに寄り添いはじめた。
 さりげなく腰のあたりを抱いているのは周りにアピールしているのかしら?


「でも私、最近の話題は分かりませんわ……」

「最近の話題はフィーナ様のことでもちきりだから気にしなくてもいいと思いますわ。それよりも、私はアストリア領のことを色々知りたいです」


 リーシェ様のその提案のお陰でお兄様を交えた会話が盛り上がることになって、宴会の半分くらいは話し込んでしまった。
 途中で挨拶の対応をしたりしていたら、何故か会話の人数も増えていったりしたけど、これはお兄様が美麗で人気だから他のご令嬢方が寄ってきただけよね……。

 ちなみに、集まったご令嬢方はお兄様が無表情で追い払っていました。




 宴会が始まってから2時間が経ち、料理が会場内に並び始めた時だった。
 公爵家ご令嬢が2人、私に声をかけてきた。

 ちょうど私達の会話が途切れた時だったから、ずっと私達の様子を見ていたみたい。


「少し私達とお話ししませんか?」

「無理にとは言いませんけど、1人でいるとアノヒトに捕まってしまうと思うので……嫌でなければ是非お願いしますわ」


 そんなことを言いながら王子殿下のことを指差すノートリア公爵家のアイセア様。
 そのことに対して何か文句を言える立場にいないから、私はこれだけを答えた。


「是非ご一緒させてください。あまりお話しする機会がなかったので楽しみですわ」

「受け入れてくれてありがとうございます。ここだとあまり目立たないので、少し移動しましょう」

「目立ちに行くのですか?」

「さっきから私達に付き纏う殿方がいらっしゃるのでそれ対策ですわ」

「公爵家の方も大変ですのね……」

「貴女、他人事ひとごとじゃありませんわよ。一番の標的はフィーナ様ですのよ?」

「私、ですか? 私に付き纏っているかもしれない殿方って、もしかして殿下ですか?」

「そうですわよ」


 殿下は私以外の方も狙っているのね……。
 出来れば関わりたくないわ。

 アイセア様の答えを聞いて、そう思ってしまう私だった。
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