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120. 建国記念式
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お父様の部下さんと話をした後、お父様の機嫌がかなり悪くなって、そのまま式典に参加することになった私達。
今は始まってから40分くらい経っていて、そろそろ同じ姿勢を続けるのに疲れてきた。
そんな建国記念式は、国王陛下が国民への礼を述べ、その後に参加者全員でローザニアの地を守るとされている守護神に祈りを捧げる。
内容で言えばそれだけで、式全体の時間は1時間しかない。だけど、その全てが退屈な時間になっている。
聖堂内は私語は厳禁で、これを破れば神に叛いた者として処罰が下る。
もちろん、陛下の前で姿勢を崩すことなんて許されないし、話をしている陛下の後ろの席ーー王族の席から私を見つめてきている人がいても逃れることなんて出来ない。
早く陛下の話終わらないかしら……?
もう40分も話しているのに、まだ終わりそうにないなんて……。
「……今から200年ほど前にあった……」
200年くらい前にあった戦争の話に変わって、それから5分ほど経ってようやく陛下の話は終わった。
そしてすぐに神官さんが姿を見せて、祈りを捧げる時になった。
「それでは、ローザニア王国の繁栄を願って、神々に祈りを!」
神官さんがそう言ったタイミングで目を瞑って軽く俯き、胸の前で手を合わせる私。
見えないから分からないけど、周りも同じような体勢にしていると思う。
そして、静寂が訪れたーー。
祈りとは言っても、形だけで何かを祈ったりはしていない。
それを1分くらい続けていると、再び神官さんの声が聞こえた。
「皆様の祈りは神々に伝わったことでしょう」
その言葉に続けて、陛下が閉会の言葉を言われて式典は無事に終えることが出来た。
式典が終わってからは、公爵家の方々から順番に王宮内にある宴会の会場へと移動することになっていて、私達はそれにならって聖堂を後にした。
「お姉様、式中に視線を感じませんでした?」
移動中、私の耳元でそう問いかけてくるルシア。
殿下の視線はルシアも気付いていたみたいね。
「すごく感じたわよ?」
「あれって……」
「私を見てたのだと思うわ。今は相手がいなくて困っているみたいだから、私を狙うことにしたみたい」
「なんだか気持……気味が悪いですね」
言い直してるけど、それも十分不敬罪になってしまうわよ?
「ちょっと、不敬罪になるわよ? 私もアレとははもう関わりたくないけど……」
「お姉様もアレって言っちゃってるじゃないですか」
「細かいことは気にしないの!」
そんな感じで小声で話をしていると、お兄様が私たちの方に来て集音の魔法で私達の会話を聞き始めた。
「お兄様……?」
「何を話しているのか気になってね。僕が聞いてはいけない話ではなさそうだったから聞かせてもらえないかな?」
「王子殿下の悪口を言ってましたの」
「本人、真後ろにいるよ?」
「「えっ⁉︎」」
青ざめながら後ろを見てみると……そこにはお父様の姿があった。
「おにいさま?」
「ごめんごめん、今の嘘だよ」
「心臓に悪いですわ!」
そう抗議の声を上げるルシア。
私はなんとなくお兄様の意図が分かったから何も言わないでいる。
「あまり気にしてると精神的に良くないから、少しは明るくなってもらおうと思って言ったんだ。だから許してもらえないかな?」
「そうだったのですね……。でも、脅かすのはやめてほしいですわ!」
「分かったよ。今度からやるようにするよ」
「何も分かってないじゃないっ!」
敬語にするのを忘れて突っ込むルシア。
明るくしようというお兄様の策略は成功したみたいね……。
今は始まってから40分くらい経っていて、そろそろ同じ姿勢を続けるのに疲れてきた。
そんな建国記念式は、国王陛下が国民への礼を述べ、その後に参加者全員でローザニアの地を守るとされている守護神に祈りを捧げる。
内容で言えばそれだけで、式全体の時間は1時間しかない。だけど、その全てが退屈な時間になっている。
聖堂内は私語は厳禁で、これを破れば神に叛いた者として処罰が下る。
もちろん、陛下の前で姿勢を崩すことなんて許されないし、話をしている陛下の後ろの席ーー王族の席から私を見つめてきている人がいても逃れることなんて出来ない。
早く陛下の話終わらないかしら……?
もう40分も話しているのに、まだ終わりそうにないなんて……。
「……今から200年ほど前にあった……」
200年くらい前にあった戦争の話に変わって、それから5分ほど経ってようやく陛下の話は終わった。
そしてすぐに神官さんが姿を見せて、祈りを捧げる時になった。
「それでは、ローザニア王国の繁栄を願って、神々に祈りを!」
神官さんがそう言ったタイミングで目を瞑って軽く俯き、胸の前で手を合わせる私。
見えないから分からないけど、周りも同じような体勢にしていると思う。
そして、静寂が訪れたーー。
祈りとは言っても、形だけで何かを祈ったりはしていない。
それを1分くらい続けていると、再び神官さんの声が聞こえた。
「皆様の祈りは神々に伝わったことでしょう」
その言葉に続けて、陛下が閉会の言葉を言われて式典は無事に終えることが出来た。
式典が終わってからは、公爵家の方々から順番に王宮内にある宴会の会場へと移動することになっていて、私達はそれにならって聖堂を後にした。
「お姉様、式中に視線を感じませんでした?」
移動中、私の耳元でそう問いかけてくるルシア。
殿下の視線はルシアも気付いていたみたいね。
「すごく感じたわよ?」
「あれって……」
「私を見てたのだと思うわ。今は相手がいなくて困っているみたいだから、私を狙うことにしたみたい」
「なんだか気持……気味が悪いですね」
言い直してるけど、それも十分不敬罪になってしまうわよ?
「ちょっと、不敬罪になるわよ? 私もアレとははもう関わりたくないけど……」
「お姉様もアレって言っちゃってるじゃないですか」
「細かいことは気にしないの!」
そんな感じで小声で話をしていると、お兄様が私たちの方に来て集音の魔法で私達の会話を聞き始めた。
「お兄様……?」
「何を話しているのか気になってね。僕が聞いてはいけない話ではなさそうだったから聞かせてもらえないかな?」
「王子殿下の悪口を言ってましたの」
「本人、真後ろにいるよ?」
「「えっ⁉︎」」
青ざめながら後ろを見てみると……そこにはお父様の姿があった。
「おにいさま?」
「ごめんごめん、今の嘘だよ」
「心臓に悪いですわ!」
そう抗議の声を上げるルシア。
私はなんとなくお兄様の意図が分かったから何も言わないでいる。
「あまり気にしてると精神的に良くないから、少しは明るくなってもらおうと思って言ったんだ。だから許してもらえないかな?」
「そうだったのですね……。でも、脅かすのはやめてほしいですわ!」
「分かったよ。今度からやるようにするよ」
「何も分かってないじゃないっ!」
敬語にするのを忘れて突っ込むルシア。
明るくしようというお兄様の策略は成功したみたいね……。
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