117 / 155
117. 建国記念祭④
しおりを挟む
いつになく賑やかな夕食を終えた後、私はジーク様と屋敷の屋上に出ていた。
去年までは王城から花火を見てたし、その前は家族でテラスや庭から見ていたから、ここから見るのは初めてになる。
「少し冷えてるけど、上着は着なくても大丈夫?」
少し風が吹いた時、そんなことを聞いてくるジーク様。
「大丈夫よ。これ、寒くならないように作られてるから」
「おお、ほんとだ。これなら大丈夫そうだな」
私が摘んで見せた袖をペタペタと触るジーク様。触ってみて安心したのか、彼の視線は街の方に戻っていた。
その時、遠くで小さな破裂音が響いた。
真っ直ぐに空へと上がっていく光の粒。意識しないで私はそれを目で追っていた。
そしてその光が止まったと思った瞬間、大輪の花が夜空に咲いた。
直後、破裂音が響いて、それと同時に新しい光が昇っていた。
「綺麗な色だな……」
「うん……」
それからはしばらくの間、私は大した会話もせずに花火に見入っていた。
ジーク様は私を抱き寄せて何かと葛藤したりもしていたみたいだけど……。
花火が終わって屋敷に戻ると、廊下で顔を赤らめたリーシェ様とお兄様とすれ違って、私は心の中でリーシェ様に「おめでとう」と言った。
口付けをしているところは見ていないけど、様子がそうとしか思えなかったから……。
「フィーナ、この後はもう寝る?」
すれ違って少しして、そんなことを聞いてくるジーク様。
「そのつもりだけど、どうかしたの?」
「ソーラス様から頂いたワインに付き合ってもらおうと思ってね」
「私、お酒はあまり強くないから少しだけなら……」
ローザニアでは結婚出来る年齢……成人を迎えたらお酒を飲んでも大丈夫とされているから、今年17歳になる私でも飲むことが出来る。
これはグレイヴでも同じで、男性は16歳から、女性は14歳からになっている。
ちなみに、ローザニアには成人を迎えた日に、それを祝うパーティーで初めてお酒を口にする習わしがある。
その時は酔ってしまったりはしなかったのだけど、その翌年の建国記念祭の夜にお兄様に乗せられてワインを飲みすぎてしまって大変なことをしてしまったのよね……。
それ以来、お酒の類は口にしないようにしていたから、ちょうど1年振りに口にすることになる。
「もちろんたくさん飲ませたりはしないから安心して。ダイニングで待ってる」
「うん」
そう返事をして、私は湯浴みのために部屋に戻った。
それから20分、魔法で髪を乾かしながらダイニングに入ると、ジーク様だけでなくお父様とお母様もいて驚いた。
「お待たせしました……」
「始めるから座って」
「始めるって、何を始めるのですか?」
「大事な話を、だ」
そうして、軽いお菓子とワインを口にしながら結婚についての話が始まった。
大事な話とは言っても、私とジーク様がどこまで進んだのかとか、身体を求めたり求められたことはあるかとか、普段は絶対に話せないよう内容の話をさせられてしまった。
恥ずかしくて言えないはずなのに、酔いのせいで全部話してしまっていた。
ちなみに、話が終わった後はお母様がお父様に強いお酒を勧めて酔い潰れさせていたわ。
お父様はお酒に強いと思ってたけど、あんな風になってしまうのね。
お父様は水を飲んだらすぐに回復していたけど、私はそうもいかず……ジーク様に抱き抱えられて寝室に向かう羽目になった。
「フィーナ、大丈夫?」
「うん、らいじょうぶ……」
「うん、大丈夫じゃなさそうだね」
「ジークさま、いっしょにねて?」
「それをしたらソーラス様に殴られるから、グレイヴに戻ったらね」
呂律の回らない状態でそんな会話をした後、気が付いたら朝になっていて、恥ずかしすぎてベッドの中で悶える私だった。
ちなみに、ジーク様はお父様よりも飲んでいたはずなのだけどあまり酔っていなかった。
去年までは王城から花火を見てたし、その前は家族でテラスや庭から見ていたから、ここから見るのは初めてになる。
「少し冷えてるけど、上着は着なくても大丈夫?」
少し風が吹いた時、そんなことを聞いてくるジーク様。
「大丈夫よ。これ、寒くならないように作られてるから」
「おお、ほんとだ。これなら大丈夫そうだな」
私が摘んで見せた袖をペタペタと触るジーク様。触ってみて安心したのか、彼の視線は街の方に戻っていた。
その時、遠くで小さな破裂音が響いた。
真っ直ぐに空へと上がっていく光の粒。意識しないで私はそれを目で追っていた。
そしてその光が止まったと思った瞬間、大輪の花が夜空に咲いた。
直後、破裂音が響いて、それと同時に新しい光が昇っていた。
「綺麗な色だな……」
「うん……」
それからはしばらくの間、私は大した会話もせずに花火に見入っていた。
ジーク様は私を抱き寄せて何かと葛藤したりもしていたみたいだけど……。
花火が終わって屋敷に戻ると、廊下で顔を赤らめたリーシェ様とお兄様とすれ違って、私は心の中でリーシェ様に「おめでとう」と言った。
口付けをしているところは見ていないけど、様子がそうとしか思えなかったから……。
「フィーナ、この後はもう寝る?」
すれ違って少しして、そんなことを聞いてくるジーク様。
「そのつもりだけど、どうかしたの?」
「ソーラス様から頂いたワインに付き合ってもらおうと思ってね」
「私、お酒はあまり強くないから少しだけなら……」
ローザニアでは結婚出来る年齢……成人を迎えたらお酒を飲んでも大丈夫とされているから、今年17歳になる私でも飲むことが出来る。
これはグレイヴでも同じで、男性は16歳から、女性は14歳からになっている。
ちなみに、ローザニアには成人を迎えた日に、それを祝うパーティーで初めてお酒を口にする習わしがある。
その時は酔ってしまったりはしなかったのだけど、その翌年の建国記念祭の夜にお兄様に乗せられてワインを飲みすぎてしまって大変なことをしてしまったのよね……。
それ以来、お酒の類は口にしないようにしていたから、ちょうど1年振りに口にすることになる。
「もちろんたくさん飲ませたりはしないから安心して。ダイニングで待ってる」
「うん」
そう返事をして、私は湯浴みのために部屋に戻った。
それから20分、魔法で髪を乾かしながらダイニングに入ると、ジーク様だけでなくお父様とお母様もいて驚いた。
「お待たせしました……」
「始めるから座って」
「始めるって、何を始めるのですか?」
「大事な話を、だ」
そうして、軽いお菓子とワインを口にしながら結婚についての話が始まった。
大事な話とは言っても、私とジーク様がどこまで進んだのかとか、身体を求めたり求められたことはあるかとか、普段は絶対に話せないよう内容の話をさせられてしまった。
恥ずかしくて言えないはずなのに、酔いのせいで全部話してしまっていた。
ちなみに、話が終わった後はお母様がお父様に強いお酒を勧めて酔い潰れさせていたわ。
お父様はお酒に強いと思ってたけど、あんな風になってしまうのね。
お父様は水を飲んだらすぐに回復していたけど、私はそうもいかず……ジーク様に抱き抱えられて寝室に向かう羽目になった。
「フィーナ、大丈夫?」
「うん、らいじょうぶ……」
「うん、大丈夫じゃなさそうだね」
「ジークさま、いっしょにねて?」
「それをしたらソーラス様に殴られるから、グレイヴに戻ったらね」
呂律の回らない状態でそんな会話をした後、気が付いたら朝になっていて、恥ずかしすぎてベッドの中で悶える私だった。
ちなみに、ジーク様はお父様よりも飲んでいたはずなのだけどあまり酔っていなかった。
0
お気に入りに追加
5,229
あなたにおすすめの小説
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
今さら跡継ぎと持ち上げたって遅いです。完全に心を閉ざします
匿名希望ショタ
恋愛
血筋&魔法至上主義の公爵家に生まれた魔法を使えない女の子は落ちこぼれとして小さい窓しかない薄暗く汚い地下室に閉じ込められていた。当然ネズミも出て食事でさえ最低限の量を一日一食しか貰えない。そして兄弟達や使用人達が私をストレスのはけ口にしにやってくる。
その環境で女の子の心は崩壊していた。心を完全に閉ざし無表情で短い返事だけするただの人形に成り果ててしまったのだった。
そんな時兄弟達や両親が立て続けに流行病で亡くなり跡継ぎとなった。その瞬間周りの態度が180度変わったのだ。
でも私は完全に心を閉ざします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる