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115. 建国記念祭②
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「ところで、目的の屋台はどこにあるんだ?」
歩きながらそんなことを聞いてくるジーク様。
私は広場のある場所を指差してこう答えた。
「あの赤と黄色の屋根の屋台よ」
「随分と派手な屋台だな」
「確かに派手だけど、分かりやすくて助かってるわ」
そんな会話をしながらその屋台に近付くと、その屋台の人ーーリーシェ様が私に手を振ってきた。
「もしかして、貴族がやってるのか?」
「商人さんと貴族が一緒にやってるのよ」
「それはなんというか、すごいな……」
驚いているみたいで、半ば放心しているような声を出すジーク様。
それからすぐにリーシェ様がいる屋台の前に着いた。
「リーシェ様、ごきげんよう」
「ごきげんよう、フィーナ様。そちらの殿方は婚約者様ですか?」
この前会ったときに話していたからか、そう問いかけてくるリーシェ様。
「ええ」
「はじめまして、フィーナの婚約者のジーク・アトランタと申します。よろしくお願いします」
「リーシェ・ウェスニアです。こちらこそ、宜しくお願いしますわ」
挨拶を交わすジーク様とリーシェ様。
私はそれが終わるのを待ってから、会話を再開した。
「リーシェ様はお兄様と会う約束はしていますの?」
「ええ、午後から一緒にこの辺りをまわる予定ですわ」
そんな時、屋台の裏のお店から男性が出てきて、リーシェ様に声をかけた。
「リーシェ様、本日はありがとうございました。これ以降は我々にお任せください」
「もうそんな時間なのね。フィーナ様、帰る準備をするので少し待ってていただけませんか?」
「分かりましたわ」
この後、リーシェ様がお兄様と行く予定がない場所を3人でまわって、お昼はうちの屋敷で一緒にとることになった。
元々リーシェ様はそうするつもりだったみたいで、お兄様に準備をお願いしていたらしい。
ちなみに、ルシアは彼女の婚約者様と夕方まで一緒にいるみたい。
今は歩いて屋敷に戻っているところなのだけど、話すことが無くなってしまって会話が途切れてしまっている。
そんな時、リーシェ様が私の耳元に顔を近づけてきて小声でこんなことを口にした。
「フィーナ様、相談がありますの」
「何かありましたの?」
「何かが起きたわけではないのですけど、実はまだイリアス様と口付けしたことすらなくて……。イリアス様の気持ちが私に向いてないのではないかと不安ですの」
恋して婚約してるはずなのに、口付けはまだだったなんて驚きだわ……。
「お兄様のことだから、リーシェ様に嫌われるのが怖くて出来ていないだけだと思いますわ。リーシェ様から誘ってみたら上手くいくと思いますけど……」
「わ、私からですか⁉︎ そんなの恥ずかしすぎて出来ませんわ!
その……フィーナ様からイリアス様に口付けするように伝えていただけませんか? 私の名前は伏せて」
「努力してみますわ」
「努力じゃなくて確実にお願いします!」
「う、うん……考えておくわ」
リーシェ様の勢いに負けて、つい頷いてしまった。
おまけに敬語も忘れてしまったけど、リーシェ様は特に気にしていないみたいだった。
歩きながらそんなことを聞いてくるジーク様。
私は広場のある場所を指差してこう答えた。
「あの赤と黄色の屋根の屋台よ」
「随分と派手な屋台だな」
「確かに派手だけど、分かりやすくて助かってるわ」
そんな会話をしながらその屋台に近付くと、その屋台の人ーーリーシェ様が私に手を振ってきた。
「もしかして、貴族がやってるのか?」
「商人さんと貴族が一緒にやってるのよ」
「それはなんというか、すごいな……」
驚いているみたいで、半ば放心しているような声を出すジーク様。
それからすぐにリーシェ様がいる屋台の前に着いた。
「リーシェ様、ごきげんよう」
「ごきげんよう、フィーナ様。そちらの殿方は婚約者様ですか?」
この前会ったときに話していたからか、そう問いかけてくるリーシェ様。
「ええ」
「はじめまして、フィーナの婚約者のジーク・アトランタと申します。よろしくお願いします」
「リーシェ・ウェスニアです。こちらこそ、宜しくお願いしますわ」
挨拶を交わすジーク様とリーシェ様。
私はそれが終わるのを待ってから、会話を再開した。
「リーシェ様はお兄様と会う約束はしていますの?」
「ええ、午後から一緒にこの辺りをまわる予定ですわ」
そんな時、屋台の裏のお店から男性が出てきて、リーシェ様に声をかけた。
「リーシェ様、本日はありがとうございました。これ以降は我々にお任せください」
「もうそんな時間なのね。フィーナ様、帰る準備をするので少し待ってていただけませんか?」
「分かりましたわ」
この後、リーシェ様がお兄様と行く予定がない場所を3人でまわって、お昼はうちの屋敷で一緒にとることになった。
元々リーシェ様はそうするつもりだったみたいで、お兄様に準備をお願いしていたらしい。
ちなみに、ルシアは彼女の婚約者様と夕方まで一緒にいるみたい。
今は歩いて屋敷に戻っているところなのだけど、話すことが無くなってしまって会話が途切れてしまっている。
そんな時、リーシェ様が私の耳元に顔を近づけてきて小声でこんなことを口にした。
「フィーナ様、相談がありますの」
「何かありましたの?」
「何かが起きたわけではないのですけど、実はまだイリアス様と口付けしたことすらなくて……。イリアス様の気持ちが私に向いてないのではないかと不安ですの」
恋して婚約してるはずなのに、口付けはまだだったなんて驚きだわ……。
「お兄様のことだから、リーシェ様に嫌われるのが怖くて出来ていないだけだと思いますわ。リーシェ様から誘ってみたら上手くいくと思いますけど……」
「わ、私からですか⁉︎ そんなの恥ずかしすぎて出来ませんわ!
その……フィーナ様からイリアス様に口付けするように伝えていただけませんか? 私の名前は伏せて」
「努力してみますわ」
「努力じゃなくて確実にお願いします!」
「う、うん……考えておくわ」
リーシェ様の勢いに負けて、つい頷いてしまった。
おまけに敬語も忘れてしまったけど、リーシェ様は特に気にしていないみたいだった。
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