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108. 調整

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 招待状を送ってから5日目の朝、私とジーク様がテラスでお茶をしていると、執事さんが怪しい笑みを浮かべながら私達に近づいてきた。
 私が身構えていると、執事さんは背中に隠していた手を見せてこう口にした。


「お楽しみのところ申し訳ありません。招待状のお返事が届いていますのでご確認ください」

「今回は確認だけでいいのよね?」

「はい」

「分かったわ。これを飲み終えたら確認するから部屋の中に置いておいてもらえると助かるわ」

「畏まりました」


 私がそうお願いすると、執事さんは頭を下げて部屋の中へと戻っていった。

 ちなみにだけど、使用人さんが部屋に無断で入って来れるのは部屋の扉を少し開けておいたから。
 入ってこられたら困る時は、しっかり閉めておけば許可を出すまで入ってはいけないことになっているから、見られたら困るものを見られる心配はない。


 執事さんが部屋から出て、私がお茶の残りを飲み切ろうとしているとジーク様が私の腕を手で制してきた。


「急いで飲まなくていい。目を通すだけならすぐ終わるからね」

「うん……」


 それから夕方まで、2人で手分けはせずに私もジーク様も全部の手紙を読んで一日を終えた。
 両家の人って、毎日こんな大変なことをしているのね……。

 ベッドに入った私はそんなことを思っていた。



 それから3日後のお昼過ぎ、ドレスが完成したということで仕立て屋さんが再びやってきた。
 ローザニアだと最低でも1週間はかかるのだけど、グレイヴではそうではないみたい。


「最終調整をしますので、一度試着をお願いします」

「分かったわ」


 そう返事をしてから、仕立て屋のマダムさんからドレスを受け取とって私の部屋に向かった。
 この場にはジーク様以外は同性の人しかいないけど、着替えを見られるのは良くないから。

 ちなみに今回もシンプル寄りのデザインだから着替えは1人で出来る。
 ローザニアの正装寄りのデザインだと手伝ってもらわないと出来ないけど。


 2分ほどで着替え終えて「お待たせ」と言いながら部屋を出ると、待ち構えていたジーク様に凝視されてしまった。
 そして、笑顔でこう口にした。


「うん、似合ってるよ」

「あ、ありがとう……」


 こんな風に言われて少し恥ずかしくなっていると、侍女さんが「調整があるので見つめ合うのは後でお願いします」と口にしたから、私は慌てて仕立て屋さんが待っている部屋に向かった。



「座ったりした感じはどうですか?」

「問題ないわ」


 そばにあった椅子に軽く腰掛けて答える私。
 調整は私の感覚を元にやっているみたいで、違和感がなかったからか袖の長さを5ミリくらい短くするだけで終わった。

 ドレスが完成したから、あとは会場の準備と装飾品が出来上がるのを待つだけね。
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