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107. フィーナ父side 空席の公爵

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 フィーナがグレイヴに戻ってから3日、侯爵全員が国王陛下から呼び出しを受けて王宮内の会議室に集まっていた。


「まずは、急な呼びかけにも関わらず集まってくれたことを感謝する。ありがとう。
 早速本題に移っても構わないか?」

「はい」

「問題ありません」


 陛下の問いかけに各々が返事をする。
 それを聞いた陛下は少し間を置いてからこう説明を始めた。


「皆が知っての通り、先の不正事件によって公爵が1つ空席になってしまっている。事件が解決したから、そろそろ次の公爵と元サーペンス領について決めないといけない。
 その話し合いのためにこうして集まってもらったわけだが、誰か引き受けてくれる者はいないか?」

「「……」」


 陛下の問いかけに対して名乗り出る者はいなかった。
 公爵位に関しては皆欲しているが、おまけとして私腹を肥やすために異常に高い税率を設定していた元サーペンス公爵のせいで荒れに荒れている領地がついてくるのだ。
 我が家は逃れてきた民を保護したりしていて、その者達を直接見たことがあるのだが……いつ倒れてもおかしくないくらいに全員が痩せていた。

 ちなみに、公爵位に関しては単純に侯爵の中で一番力がある私に遠慮しているだけだろう。
 面倒な仕事をしたくないと顔に書いてある者が半数、残りは権力に目がない者だ。


「ここはアストリア卿が公爵に相応しいと思います。力も人望も、誰も文句は言わないでしょう」

「私も同じ考えです」

「私も」

「私もそう考えていたのだが、アストリア侯爵が乗り気ではないようでな……」


 そんなことを口にする陛下。
 この状況、断り辛いな……。

 私は懸念事項を解消するために、陛下にこう問いかけてみた。


「公爵位を賜ることは光栄だと思っています。ですが、我が家の力では今以上の領地を治めることは難しいと考えています。
 それでもよろしければ、謹んでお受けします」

「そういうことなら、決まりだな。元サーペンス領については混乱が収まるまでの間は直轄領にすることに決めているから」


 陛下がそう口にしたので、私はその場で頭を下げて礼を口にするのだった。
 懸念事項は杞憂だったようで良かったが、息子たちの婚約相手が恐縮しないか少し心配だ。


「皆、アストリア家を公爵家とするのに異論はないかね?」

「「ありません」」


 こうして、あっという間に私が公爵になることが決まってしまった。

 正式に公爵になるのは来年になるだろうが、この先はしばらく忙しくなりそうだ。



 それからしばらくして、日が沈んでから屋敷に戻った私は早速アイリスに公爵になることが決まったことを伝えた。


「これから忙しくなるのね。私も協力するから頑張って」

「ありがとう」


 笑顔のアイリスに例を言い、着替えのために一旦自室に戻った。

 この後の夕食が騒がしくなったのはいうまでも無いだろう。
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