99 / 155
99. 裁判③
しおりを挟む
裁判を終えて馬車に乗った私はお母様から行きの話の続きを聞いていた。
「処刑が決まった後、事件が動くことは無くて……私が何もできないまま処刑の日を迎えたわ」
「もしかして、助けようとしてたのですか……?」
違和感を覚え、そう訊いてみる私。
「そうよ。だって、その侯爵令嬢が私を嵌めるのも王家の誰かを手にかけようとするのも理由が無かったもの」
「その後どうなったんですか……?」
「処刑の直前に助けて一緒に国外に逃げたわ。その1週間後に洞窟で捕まってしまったけど、その時には冤罪だったことが分かってて無事に帰ることができたの」
「そんなことがあったのですね……。その侯爵令嬢さんって今はどうしてるのですか?」
「王妃になってるわよ」
王妃殿下にそんな過去があったなんて思ってもいなかった私は少しの間言葉を失った。
「そんなことがあったなんて知りませんでした……。でも、よく助ける気になれましたね?」
「信頼してたから当然よ」
その言葉を聞いて安心する私。
この後すぐに御者さんが家に着いたことを告げてきて、話は一旦終わってしまった。
翌日、昨日と同じようにお父様は証拠と証人の手配のために朝から屋敷を空けていた。
お母様は王妃殿下に呼ばれていたみたいで、お父様と一緒に王宮に行っている。
だから、今日は私1人だけで王宮に向かった。
王宮に着いて馬車から降りると、御者さんがこう口にした。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
私は頭を下げる御者さんにそう返してから裁判所がある建物に入った。
……それからしばらくして、裁判が始まった。
「証人、前へどうぞ」
「はい」
「フィーナ様が婚約破棄される前、何か怪しい動きを見たことはありますか?」
証人として呼ばれた王宮の侍女さんに問いかける裁判長さん。
私の呼び方が様付けなのは、罪人でない限り裁判中であっても地位は尊重される決まりがあるから。
裁判長さんの問いかけに対して、侍女さんははっきりとこう口にした。
「いいえ」
裁判長さんの前に置かれている嘘発見装置に変化は起きなかった。
「ありがとうございました。下がっていただいて構いません」
「被告人、貴女は淫魔の雫だとは知らなかったと言っていましたが、それは本当ですか?」
「はい。本当に淫魔の雫だなんて知らなかったんです」
その瞬間、嘘発見装置が赤く輝いた。
「どうやら貴女は嘘をついているようですね。もう一度、全ての質問をやり直す必要があるでしょう」
そんなことを口にする裁判長。
それからは、レイラの嘘が暴かれた。
時々私が質問を受ける時はあったけど、当然装置が光ることは無かった。
そして……
「本日はこれにて閉廷します。判決は厳正な審理の下、今週末に言い渡します」
……裁判長がそう告げて今日の裁判が終わった。
「処刑が決まった後、事件が動くことは無くて……私が何もできないまま処刑の日を迎えたわ」
「もしかして、助けようとしてたのですか……?」
違和感を覚え、そう訊いてみる私。
「そうよ。だって、その侯爵令嬢が私を嵌めるのも王家の誰かを手にかけようとするのも理由が無かったもの」
「その後どうなったんですか……?」
「処刑の直前に助けて一緒に国外に逃げたわ。その1週間後に洞窟で捕まってしまったけど、その時には冤罪だったことが分かってて無事に帰ることができたの」
「そんなことがあったのですね……。その侯爵令嬢さんって今はどうしてるのですか?」
「王妃になってるわよ」
王妃殿下にそんな過去があったなんて思ってもいなかった私は少しの間言葉を失った。
「そんなことがあったなんて知りませんでした……。でも、よく助ける気になれましたね?」
「信頼してたから当然よ」
その言葉を聞いて安心する私。
この後すぐに御者さんが家に着いたことを告げてきて、話は一旦終わってしまった。
翌日、昨日と同じようにお父様は証拠と証人の手配のために朝から屋敷を空けていた。
お母様は王妃殿下に呼ばれていたみたいで、お父様と一緒に王宮に行っている。
だから、今日は私1人だけで王宮に向かった。
王宮に着いて馬車から降りると、御者さんがこう口にした。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
私は頭を下げる御者さんにそう返してから裁判所がある建物に入った。
……それからしばらくして、裁判が始まった。
「証人、前へどうぞ」
「はい」
「フィーナ様が婚約破棄される前、何か怪しい動きを見たことはありますか?」
証人として呼ばれた王宮の侍女さんに問いかける裁判長さん。
私の呼び方が様付けなのは、罪人でない限り裁判中であっても地位は尊重される決まりがあるから。
裁判長さんの問いかけに対して、侍女さんははっきりとこう口にした。
「いいえ」
裁判長さんの前に置かれている嘘発見装置に変化は起きなかった。
「ありがとうございました。下がっていただいて構いません」
「被告人、貴女は淫魔の雫だとは知らなかったと言っていましたが、それは本当ですか?」
「はい。本当に淫魔の雫だなんて知らなかったんです」
その瞬間、嘘発見装置が赤く輝いた。
「どうやら貴女は嘘をついているようですね。もう一度、全ての質問をやり直す必要があるでしょう」
そんなことを口にする裁判長。
それからは、レイラの嘘が暴かれた。
時々私が質問を受ける時はあったけど、当然装置が光ることは無かった。
そして……
「本日はこれにて閉廷します。判決は厳正な審理の下、今週末に言い渡します」
……裁判長がそう告げて今日の裁判が終わった。
27
お気に入りに追加
5,250
あなたにおすすめの小説
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
私が妻です!
ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。
王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。
侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。
そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。
世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。
5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。
★★★なろう様では最後に閑話をいれています。
脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。
他のサイトにも投稿しています。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる