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94. ローザニアへ

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 アトランタ領にあるお屋敷に戻ってから1週間、私は裁判に証人として出るためにローザニアに向かう準備をしている。


「フィーナ様、荷物はそれだけでいいのですか?」

「必要なものは家にあるもの。最低限で十分よ」

「そうでしたね……。旅行と同じ感覚で準備していました」


 服を畳みながら苦笑いする侍女さん。


「普通はこんな状況にはならないもの。そうなるのも無理ないわ」


 私がそう口にすると、侍女さんは「ありがとうございます」とだけ言って作業に戻った。

 それから1時間もかからずに準備が終わり、暇になったのでジーク様を誘って中庭でお茶をして一日を終えた。



 そして次の日、ジーク様と竜に乗ってローザニアに向けて出発した。
 今回も護衛さん達が青竜に乗って周りを飛んでいる。

 全員、私の身を案じたキーファス様が付けてくれた手練れの人達らしい。


「ジーク様、王子殿下が相手なのにこんなに護衛必要なのかな?」

「騎士団と戦うならこれくらいは必要だよ。無事に逃げる必要があるからね」

「騎士団と戦う想定だったのね……」


 予想していなかった答えに何とも言えない気持ちになる私。
 ちなみに、私が全く戦えない深窓の令嬢だったら今の倍の人数は必要になっていたらしい。

 そんな会話の後、沈黙が続いて風の音だけが聞こえていた。



「……ナ。フィーナ?」


 私を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、突然体を揺すられて慌てて目を開ける私。


「ジーク様……?」

「おはよう」

「えっと……おはようございます? 勝手に寝てごめんなさい……」


 いつの間にか眠ってしまっていたみたいで、慌てて体を起こして謝った。
 それと同時に自分の身体に違和感を感じていたら。


「なんで謝るんだ?」

「なんとなく悪いと思ったの……」

「寝顔可愛かったし、怒るわけないから謝らなくていい。むしろ感謝してるくらいだ」


 突然そんなことを言われて顔を背ける私。
 その瞬間、さっきから感じている違和感の正体に気付いた。

 下着の位置がズレてる……!

 もしかしなくても、眠っている間にジーク様に何かされたのかな? でも、周りに護衛さん達がいるから堂々と出来るわけないし……。


「ジーク様、私が寝ている間に何かしました?」

「何もしてないけど、何かあったのか?」

「なんでもないわ」


 ジーク様が嘘をついているようには見えなかったから、眠っている間にズレてしまったのね……。

 この違和感をなんとかしたかったけど、ジーク様や護衛さん達が見ているから直せないまま数十分が過ぎ、うちの領都にある屋敷に到着した。


「「おかえりなさいませ、お嬢様!」」


 竜から降りて庭から玄関前に行くと、使用人さん達が総出で出迎えてくれた。


「ただいま~!」


 今回うちの屋敷に寄ったのは、王都にはあの数の青竜の居場所が無いから。
 だから、ここで一旦お別れして馬車で移動することになっている。

 昼食もここで取るから、私達はダイニングに向かった。
 私だけ下着の位置を直すために空いてる部屋に寄ったけど。


 昼食を終えた後は、馬車に乗って王都に向かって、夕方にうちの屋敷に到着した。
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