上 下
89 / 155

89. 掴んだ現場

しおりを挟む
 翌日、私達は目撃者であるローズ様の知り合いさんと目撃現場に来ていた。
 ここは貴族のお屋敷が集まっていて、アトランタ家のお屋敷からは歩いて数分くらいのところにある。

 それだけ時間がかかるとは言っても、敷地は隣になっている。広いお庭を挟んでいるから建物同士の距離はあるけど。


「隠れ家を想像してたけど、違ったのね……」


 残念そうに呟くローズ様。


「ここなら見張ってても怪しまれないからいいじゃない!」

「そうだといいわね」


 玄関の方を見ながらそんな会話をしていると、使用人さん達が出てきた。
 気付かれないように姿勢を低くして植え込みの隙間から覗く私達。


「今出てきた紺色の服の方がルイス様かしら?」

「ええ……」

「隣の女性と楽しそうにお話ししてるわね」


 ルイス様の話し相手の女性ーー私達とあまり歳の変わらなさそうな方も笑顔を浮かべていました。
 そして、突然私達の方に手を向けたかと思うと風の攻撃魔法を放ってきました。

 咄嗟に防御の魔法と認識阻害の魔法を使う私。
 次の瞬間、私達を隠してた植え込みが散ってしまった。


「驚いたわ……」

「フィーナ様、助かりました」


 慌てて物陰に身を隠しながらそう口にするローズ様とテレーゼ様。
 私は認識阻害の魔法があるのを分かっているから動いてないけのだけど、アエリア様は植え込みの根を踏みながらサウザンテ邸の敷地に入っていた。

 私が使った認識阻害の魔法は範囲を指定するものだから、アエリア様の効果は無くなってしまった。

 そして当然……今度は火の攻撃魔法が飛んで来た。


「アイスアローっ!」


 怒りに震えるアエリア様が魔法を防ごうとしなかったのを見て慌てて攻撃魔法で飛んで来ていた魔法を相殺した。

 それと同時に、離れたところから見ていた護衛さんが飛び出してきていたから、手で戻るようにお願いした。


「流石に入ったらまずいよね……?」

「「まずいわよ」」


 私の問いかけにそう返す2人。
 私は慌ててアエリア様の腕を掴んで引き止めた。


「ごめんなさい、冷静じゃなかったわ……」

「そんなことはいいわ。それよりも、ルイス様が来てるけど大丈夫?」

「大丈夫よ。言いたいことがあるから寧ろ好都合だから」


 ローズ様の問いかけにそう答えるアエリア様。

 少しして、アエリア様とルイス様が向かい合っていて、周りに張り詰めた空気が漂う状況が出来てしまっていた。


「あの女性は浮気相手ですの?」

「彼女は僕の従兄妹いとこだよ」

「えっ……それじゃああの噂は……」

「その噂が何か知らないけど、浮気はしてないから安心して」


 そう口にするルイス様。


「では、さっきの魔法は何だったんですか?」

「ごめんなさい、私達を狙っている怪しい者だと思ってしまいましたの」

「そうだったのですね……」


 私達がそんな会話をする横で、アエリア様はルイス様の身体をペタペタ触ったり匂いを確かめたりしてる。本当に浮気をしていないか確かめているらしい。


「本当に浮気してないのね……良かった~」

「信じてくれる?」

「はいっ」


 そんな会話を交わして抱き合う2人。私達が見てるけどいいのかな……?
 それはともかく、どうやら無事に解決したみたいですね!

 ちなみに、この後はみんなで色々なお店に行ったりして過ごしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。 国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。 「もう無理、もう耐えられない!!」 イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。 「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。 そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。 猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。 表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。 溺愛してくる魔法使いのリュオン。 彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる―― ※他サイトにも投稿しています。

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

決めたのはあなたでしょう?

みおな
恋愛
 ずっと好きだった人がいた。 だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。  どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。  なのに、今さら好きなのは私だと? 捨てたのはあなたでしょう。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

今さら跡継ぎと持ち上げたって遅いです。完全に心を閉ざします

匿名希望ショタ
恋愛
 血筋&魔法至上主義の公爵家に生まれた魔法を使えない女の子は落ちこぼれとして小さい窓しかない薄暗く汚い地下室に閉じ込められていた。当然ネズミも出て食事でさえ最低限の量を一日一食しか貰えない。そして兄弟達や使用人達が私をストレスのはけ口にしにやってくる。  その環境で女の子の心は崩壊していた。心を完全に閉ざし無表情で短い返事だけするただの人形に成り果ててしまったのだった。  そんな時兄弟達や両親が立て続けに流行病で亡くなり跡継ぎとなった。その瞬間周りの態度が180度変わったのだ。  でも私は完全に心を閉ざします

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。 しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。 ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。 これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。 本編74話 番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。

処理中です...