83 / 155
83. ティアナside 突然の来訪者
しおりを挟む
ジーク様とフィーナ様が出立ちされた日の夕方のことでした。
「さっきローザニアの屑王子からここに来ると連絡があった。腐っても王子だから断りきれなくてな、すまないが客室に向かい入れる準備をしてくれないか?」
私達使用人がよく集まっている部屋にやって来た旦那様がそう口にしました。
「ローザニアの王子殿下って、フィーナ様に婚約破棄を突きつけた挙句不敬罪までかけたって噂の……」
「今はフィーナ様に振り向いてもらおうとしているって噂があるみたいよ?」
旦那様の目の前だというのに、ざわざわと騒がしくなっていきます。今ここにいる使用人は私を含めて5人だけですが。
「皆もそう思うか。ジークに帰ってこないよう伝えるとしよう。
王子にフィーナがどこにいるか聞かれたら知らないと答えるように」
「「畏まりました!」」
「では失礼する」
旦那様は貴族の頂点に立つお方なのに、色々なことに寛容なお方なのです。
だから私達は気を詰めずに仕事をこなせています。
他所様のところでは、ミスをしただけで鞭を打たれたり……ということもあるようですが、ここでは悪くて反省文を書かされるくらいです。
先月、後輩の子が躓いて奥様に旦那様の目の前で熱々のお茶をかけてしまった時は皆青くなりましたが、酷い罰になることはありませんでした。
その代わり、お客様の前でしてしまわないようにとお説教はあったみたいですけどね。
そんなわけで、アトランタ家は基本平和なのです!
それなのに、この王子のせいで侍女達は怯えながら仕事をする羽目になりました。
「熱すぎる! もしやけどしたらどうする気だ⁉︎」
熱いお茶が入ったカップを後輩の侍女に投げつける王子。
至近距離だったために避けられずに彼女にお茶がかかってしまいました。
お茶をかけられた彼女は表情こそ変えていませんが、痛みに耐えている様子。
火傷してしまったのは確実なので急いで彼女を下がらせて私が対応することにしました。
先週フィーナ様から教えてもらった方法で防御魔法を使いながらーー。
「申し訳ありませんでした。すぐに代わりをお持ちします」
私はそう口にして急いでお茶を入れに向かいました。
フィーナ様からこの王子が使用人に厳しくしていると聞いていたので覚悟はしていましたが、まさかここまで酷いとは思っていませんでした。
これが終わったら旦那様に相談して追い出していただかないと私達の身が持ちそうにないですね……。
急いでお茶を持って客室に戻り、テーブルの上に置くと今度は拳が飛んできました。
「いつまで待たせたら気が済む? お前はもう出てくるな!」
防御魔法のお陰で痛くも痒くもありませんが、殴られた頬を押さえて赤くなってないのを隠しました。
「申し訳ありませんでした」
私は頭を下げて部屋を後にしました。そして、部屋に入ろうとしていた他の侍女を呼び止めて防御魔法のことを教えました。
ある程度魔法を使えれば初めてでも成功するほど簡単だったので、きっと役に立つはずです。
簡単でほとんど魔力を使ってないのに全く痛くないこの防御魔法……流石フィーナ様です。
帰ってきたら沢山お礼をしないといけませんね!
「さっきローザニアの屑王子からここに来ると連絡があった。腐っても王子だから断りきれなくてな、すまないが客室に向かい入れる準備をしてくれないか?」
私達使用人がよく集まっている部屋にやって来た旦那様がそう口にしました。
「ローザニアの王子殿下って、フィーナ様に婚約破棄を突きつけた挙句不敬罪までかけたって噂の……」
「今はフィーナ様に振り向いてもらおうとしているって噂があるみたいよ?」
旦那様の目の前だというのに、ざわざわと騒がしくなっていきます。今ここにいる使用人は私を含めて5人だけですが。
「皆もそう思うか。ジークに帰ってこないよう伝えるとしよう。
王子にフィーナがどこにいるか聞かれたら知らないと答えるように」
「「畏まりました!」」
「では失礼する」
旦那様は貴族の頂点に立つお方なのに、色々なことに寛容なお方なのです。
だから私達は気を詰めずに仕事をこなせています。
他所様のところでは、ミスをしただけで鞭を打たれたり……ということもあるようですが、ここでは悪くて反省文を書かされるくらいです。
先月、後輩の子が躓いて奥様に旦那様の目の前で熱々のお茶をかけてしまった時は皆青くなりましたが、酷い罰になることはありませんでした。
その代わり、お客様の前でしてしまわないようにとお説教はあったみたいですけどね。
そんなわけで、アトランタ家は基本平和なのです!
それなのに、この王子のせいで侍女達は怯えながら仕事をする羽目になりました。
「熱すぎる! もしやけどしたらどうする気だ⁉︎」
熱いお茶が入ったカップを後輩の侍女に投げつける王子。
至近距離だったために避けられずに彼女にお茶がかかってしまいました。
お茶をかけられた彼女は表情こそ変えていませんが、痛みに耐えている様子。
火傷してしまったのは確実なので急いで彼女を下がらせて私が対応することにしました。
先週フィーナ様から教えてもらった方法で防御魔法を使いながらーー。
「申し訳ありませんでした。すぐに代わりをお持ちします」
私はそう口にして急いでお茶を入れに向かいました。
フィーナ様からこの王子が使用人に厳しくしていると聞いていたので覚悟はしていましたが、まさかここまで酷いとは思っていませんでした。
これが終わったら旦那様に相談して追い出していただかないと私達の身が持ちそうにないですね……。
急いでお茶を持って客室に戻り、テーブルの上に置くと今度は拳が飛んできました。
「いつまで待たせたら気が済む? お前はもう出てくるな!」
防御魔法のお陰で痛くも痒くもありませんが、殴られた頬を押さえて赤くなってないのを隠しました。
「申し訳ありませんでした」
私は頭を下げて部屋を後にしました。そして、部屋に入ろうとしていた他の侍女を呼び止めて防御魔法のことを教えました。
ある程度魔法を使えれば初めてでも成功するほど簡単だったので、きっと役に立つはずです。
簡単でほとんど魔力を使ってないのに全く痛くないこの防御魔法……流石フィーナ様です。
帰ってきたら沢山お礼をしないといけませんね!
2
お気に入りに追加
5,229
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです
もぐすけ
恋愛
カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。
ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。
十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。
しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。
だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。
カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。
一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……
悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!
Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。
転生前も寝たきりだったのに。
次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。
でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。
何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。
病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。
過去を克服し、二人の行く末は?
ハッピーエンド、結婚へ!
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
妹に婚約者を結婚間近に奪われ(寝取られ)ました。でも奪ってくれたおかげで私はいま幸せです。
千紫万紅
恋愛
「マリアベル、君とは結婚出来なくなった。君に悪いとは思うが私は本当に愛するリリアンと……君の妹と結婚する」
それは結婚式間近の出来事。
婚約者オズワルドにマリアベルは突然そう言い放たれた。
そんなオズワルドの隣には妹リリアンの姿。
そして妹は勝ち誇ったように、絶望する姉の姿を見て笑っていたのだった。
カクヨム様でも公開を始めました。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる