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76. 婚約①

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「い、今は別の部屋に行きましょう……」

「そういうことなら、夕方にフィーナのご両親に話をするよ」

「その方が上手く話が進むと思いますわ」


 ジーク様はキーファス様が殴られても気にしないみたいだったけど、お父様がキーファス様を殴るのは見ていて心配になるのよね……。
 だから、落ち着いて話をできることになって安心した。


「あの殴り合いはふざけてやってるだけだから大丈夫だよ?」

「それにしては痛そうな音がしてましたけど……」


 そんな会話をしながらジーク様の部屋にあるテラスに移動した私達。
 そこにはすでにお茶が用意されていた。


「変なこと聞いても良いかな?」

「答えられることならいいですよ」

「フィーナは剣振れる?」


 これのどこが変なことなのかしら?
 少し疑問に思いながら、私はこう口にした。


「軽めの剣なら多少は扱えますわ」

「明日、軽く手合わせしてもらえないかな? フィーナの実力を知っておきたいんだ」

「お手柔らかにお願いしますね?」


 そんなことを話していると、下の方からお父様とキーファス様の声が聞こえてきた。


「よし、庭に出ろ!」

「分かった!」


 お父様の言葉にそう返すキーファス様。


「覚悟はいいか?」

「いつでも来い!」

「よし、歯を食いしばれ」


 その次の瞬間、お父様が手に持った銀色のものをキーファス様の肩に振り下ろした。

 あれは練習用の模造剣だけど、本気で叩かれたら骨にヒビが入るくらい頑丈に出来ていたはず。
 だから、キーファス様は無事では済まないと思うのだけど……


「腕、鈍ったな。そんなんで拷問が務まるのか?」


 …….心配の必要は無さそうね。普通に肩を回してるわ……。


 なんとも言えない光景に驚いていると、不意にジーク様に抱きしめられてこう囁かれた。


「もう一つお願いしていいかな?」

「いいですよ」

「俺には敬語を使わないでもらえないか? 結婚してからは……いや、今もフィーナとは対等の立場でありたいんだ。
 敬語だと上下関係を感じてしまうからね」

「ど、努力しますわ……」


 頼まれたそばから敬語になってしまったわ……。


「ゆっくりでいいから、慌てないで」

「うん……」


 なんとか敬語にならずに答えられた時だった。
 お父様と目が合ってしまった。

 今の私はジーク様に抱きしめられているから、お父様に見られたらかなりまずいと思うのよね……。


「フィーナ! いつから彼に体を許すようになったんだ⁉︎」


 恥ずかしいから大声で叫ばないで欲しいのだけど……。


「恥ずかしいから大声で言わないでください!」


 お父様、少しは空気を読んで欲しかったわ……。


「ジーク様、中に戻りましょう」


 お父様の邪魔が入ってしまうので、ジーク様の部屋の中でお話をすることにした。
 お父様に向かって叫んでからは背中しか見せてないけど、項垂れてても知りません!
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