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66. ジークside 帰路の寄り道(2)

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 街から出てすぐのところにある絶景が見れる場所の近くで馬車が止まると、フィーナが不思議そうに周りを見ていた。


「着いたよ」

「ここですの……?」

「ああ。見せたいものがあるからね」

「こんな場所にあるんですか?」


 確かに木々に囲まれているこの場所は貴族なら普通行かないだろう。
 だが、ここは公爵家が「公爵領に来たら行くべき場所」の2つ目に挙げている場所だ。寄らない選択肢は無かった。

 俺はまだ1回しか来たことがないが、ここで見れるものはかなり良かった。


「足元気を付けて」

「はい」


 先に馬車から降りて、フィーナの手を取る。

 公爵家から借りたこの馬車は車高が高いから、足を滑らせて転びかねない。
 ーーそう思った矢先だった。


「きゃっ……」


 バランスを崩したようで、フィーナの身体が傾いて地面に倒れようとしていた。
 咄嗟に握っている手を引き寄せ、空いている方の手で抱き寄せたことで転ぶことは防げた。


「大丈夫か?」

「ありがとうございます。もう大丈夫です」


 ほっとした様子でそう口にするフィーナ。

 特に問題は起こらなかったので、そのまま手を繋いで目的の場所に向けて歩き出した。


 足を進めると、馬車を降りた時から聞こえていた水が激しく流れる音が強くなってきた。
 その音が怖いのか、それとも木々で薄暗くなっているのが怖いのか、フィーナの手が少し震えているような気がした。


「怖いのか?」

「はい……。こんなすごい音のするところは初めてなので……」

「危険な場所ではないから安心して」

「そう言われても怖いものは怖いんです……」


 本当に怖いようで、いつもは手を繋いでいても少し距離があるのに、今は密着していてフィーナの温もりを感じられる状態になっている。


「引き返す?」

「それは嫌ですっ!」


 そんな会話をしてから少しして、木々が開ている場所に辿り着いた。

 目の前には巨大な滝があり、大きな虹もかかっている。
 この虹はよく晴れた日のお昼過ぎから夕方になる前にしか見られないものだから、今日は運が良かったようだ。


「綺麗……」

「これを見せたかったんだ。怖い思いをさせてすまなかった」

「あれくらい大丈夫ですよ。連れてきてくれてありがとうございます」


 そう言って、フィーナは今日一番の笑顔を見せてくれた。



 このあとは、この街の特産品を扱っている店でアクセサリーや小物を買い、とある噂のある場所に向かった。


「この広場には何がありますの?」

「あの塔にある鐘を一緒に鳴らした男女はその後幸せになれるって噂があるんだ。貴族平民問わず、それを目的に来る人も多いらしいよ」

「ジーク様って意外とロマンチストなんですね。早く行きましょう!」

「ああ。……ん?
 ちょっと待ってくれ」


 なんで俺の両親が鐘を鳴らしてるんだ⁉︎
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