上 下
57 / 155

57. 竜の国の社交界④

しおりを挟む
「一番近くで見てたフィーナ様がこう言ってるのだから、ローザニアの王太子とは関わらない方が良さそうね」


 そう言って、ちょうど私達の近くに来ていた殿方の方を向くローズ様。


「ハルト、今の話聞いてた?」

「彼女がローザニアの王太子を屑と言ったところからは聞いていたよ」


 そう口にする金髪の殿方。ローズ様の婚約者様はラインハルト王子殿下だから、彼がその人だと思う。
 私の発言のせいでローザニアに不都合が起きてしまったらどうしよう……。

 王太子が痛い目を見るのは構わないけど、家族に迷惑がかかってしまうのは嫌だから。


「実はね、クラウス王太子から我が国のパーティーに参加したいとの申し出があったんだ。そんな屑に来られるのは困るから断りの手紙を送ることにするよ」


 えっ、そんな手紙が来てたんですか……⁉︎
 屑って言って正解だったみたいですね。

 それから少しして、ジーク様が私の方に来てこう口にしました。


「何曲か一緒に踊ってくれないか?」


 ここの社交界のパーティーでは、ローザニアと同じように、一曲はダンスをするのがマナーだから、この誘いが来るのは当然のこと。
 ローザニアもグレイヴもダンスは同じだから、私は笑顔でこう答えた。


「はい、喜んで!」


 ローズ様たちに断りを入れ、曲が変わるタイミングでジーク様にエスコートされて会場の中央に向かった。

 自慢ではないけど、ダンスは上手い方だから恥ずかしくはないと思う。
 ローザニアにいた頃は練習してもダンスが嫌いな誰かさんのせいで披露する機会が無かったのよね……。

 だから、ようやく披露出来るのが嬉しいし、褒められるのを期待してしまってもいる。
 でも、運の悪いことに私が一番苦手な曲が流れ始めてしまった。


「これは難しいから踊り甲斐があるな」

「そうですね……。足を踏んでしまわないか心配ですわ」

「フィーナなら大丈夫」


 そう言って、ジーク様がリードを始めました。

 踊り始めてすぐに分かったのだけど、ジーク様はかなりダンスが上手みたい。
 おかげで私はジーク様のリードに乗るだけで済んでいる。


「ダンス上手なのですね」

「フィーナが上手だからそう見えるだけだ。フィーナとじゃなかったらこんな風には出来ないよ」


 少し気の抜ける場所でジーク様に思ったことを伝えてみたら、そんなことを言われてしまった。


 ダンスが終わって周りを見回すと、何故か私達以外に踊っている人がいなかった。
 始めたときは他に10組くらいいたのだけど……。


「難しい曲だったから少し休憩しよう」

「はい」


 私が返事をすると、ジーク様は私の腰を抱いてさっきまでいた場所に向かった。

 ローズ様達のところに戻ると、早速ダンスのことについて色々と言われた。


「フィーナ様、ダンス上手なのね! ジーク様と息がピッタリ合っていたから思わず見惚れてしまったわ」

「ジーク様とフィーナ様の技量と仲が為せる技ですの?」

「技量はあると思うけど、仲は違うと思うわ……」


 テレーゼ様に半ば興奮気味に聞かれて、少し引いてしまう私だった。

 でも、ダンスのこともあってグレイヴの方々に初日で受け入れてもらえたみたいで安心した。
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完結】ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

あまぞらりゅう
恋愛
クロエの最愛の母が死んで半年後、父親は愛人とその娘を侯爵家に受け入れて、彼女の生活は様変わりをした。 狡猾な継母と異母妹の企みで、彼女は居場所も婚約者も……全て奪われてしまう。 孤独に追い詰められたボロボロの彼女は、ゴースト――幽霊令嬢だと嘲笑われていた。 なにもかもを失って絶望した彼女が気が付いたら、時を逆行していた。 「今度は……派手に生きるわ!」 彼女は、継母と異母妹に負けないように、もう一度人生をやり直そうと、立ち上がった。 協力者の隣国の皇子とともに、「時間」を操り、家族と婚約者への復讐劇が今、始まる――……。 ★第一章は残酷な描写があります!(該当の話は冒頭に注意書きをしています!) ★主人公が巻き返すのは第二章からです! ★主人公が虐げられる様子を見たくない方は、第1話→第32話(流し読みでOK)→第33話〜と、飛ばして読んでも一応話は通じると思います! ★他サイト様にも投稿しています! ★タイトル・あらすじは予告なく変更する可能性があります!

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

処理中です...