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46. フィーナ母side 王妃様の愚痴(1)

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 私が公爵家の注意を引く工作を終えて屋敷に帰った時のことでした。


「奥様、王妃殿下からお手紙が届いております」


 私の部屋に執事が手紙を持ってきました。

 すぐに内容を確認したところ、久し振りに私と話をしたいから王宮に来て欲しいという内容が書かれていました。
 エレノア・ローザニア王妃殿下は私が嫁入りするよりも前、幼い頃からの友人です。

 私的にお話するときは敬称を付けずに名前で呼び合える仲なので、相談がある時や愚痴を言いたい時によく呼ばれます。
 今回は……愚痴ね。

 ちょうど私もお願いしたいことがあったので、明日行くことにしました。


 返事を送ってからしばらくして、ソーラスが帰ってきました。
 いつも通り玄関で出迎えます。


「お帰りなさい」

「ただいま」


 そう言って私を抱きしめるソーラス。
 私も彼のことを抱き返します。

 最初の頃は戸惑いましたけど、結婚してから毎回こうしているので、今更恥ずかしがったりはしません。


「明日、エレノアとお茶をすることになったわ」


 数秒間の抱擁の後、私はそう口にしました。
 いつも抱擁の後はお互いの予定を共有する時間にしていますから。


「それは朝からか?」

「ええ。いつもあなたが王宮に行く時間に出発する予定よ」

「分かった。こっちはいつも通りだから一緒に行こう」


 つつがなく予定の共有が終わり、一旦それぞれの部屋に戻ってから夕食のためにダイニングに集まるのでした。



 その翌朝、外出用のドレスに着替えた私はソーラスと馬車で王宮に向かっています。


「そういえば、陛下の意識が戻ったと聞いたのだけど、何かお話したりしたの?」

「まだ話していない。今陛下の部屋に入れるのは王妃殿下とお医者様だけだからな。
 王妃殿下の許可があれば謁見出来るらしいから、今日許可を取るつもりだ」

「そうなのね」


 そんな会話をしているうちに、私達の乗る馬車は王宮に入っていました。


「到着いたしました」

「地面に段差があるから気を付けて」

「分かったわ。ありがとう」


 馬車が止まり、先に降りたソーラスの手を借りて馬車を降りると、エレノア付きの侍女が出迎えに来てくれていました。


「アイリス様、お待ちしておりました。早速ご案内いたしますね」

「ありがとう。ソーラス、また後でね」

「ああ」


 向かう方向が違うので、馬車の前でソーラスと別れてから侍女さんの案内で王族の方々が暮らす場所へ向かいました。


 豪華な調度品が並ぶ廊下を進み、何回も角を曲がったりすること数分でエレノアの部屋の前にたどり着きました。
 ちなみに、王族の方々が暮らす場所には許可が無い人は入れない結界が常に張られています。


「エレノア様、アイリス様をお連れいたしました」

「ご苦労様、しばらく下がってていいわよ」

「分かりました。失礼いたします」


 部屋から出てきたエレノアは侍女さんにそう指示を出すと、今度は私の方に部屋に入るように言ってきました。

 そして、開口一番に彼女はこう口にしました。


「馬鹿息子が迷惑かけてごめんなさいね」

「気にしなくていいわよ。やれることはやってくれてるって分かってるから」

「ありがとう……」


 王妃とはいっても、王太子よりも発言力が低いエレノアが悪いなんて思っていません。


「私はいつもみたいに明るく振る舞ってて欲しいわ。暗い雰囲気だと相談しづらいじゃない」

「そうよね。早速だけど、話聞いてくれる?」

「もちろんよ」


 私がそう答えると、ようやく笑顔を見せてくれました。
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