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45. 竜の国の王都へ④

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 あの後すぐに朝食の時間が来てしまい、落ち着く前にダイニングに行った。顔が赤いのを隠すために俯きながら……。
 そのせいで何があったのかソフィア様とキーファス様に聞かれたのだけど、もちろん私から答えることなんて出来なかった。


「ジーク、何があった?」

「何もありません」

「嘘をつくな。フィーナ嬢の様子を見れば何かあったのは分かる。まさか襲ったのか?」

「襲っていませんよ!」

「言えないことをしたんだな?」


 このままではジーク様が怒られてしまうと思ったら、焦りで熱が冷めてきた。

 だから、私は顔を上げてジーク様の無実を説明することにした。


「ジーク様には何もされていませんわ。何があったのかは説明出来ませんけど、間違いは起きていないので大丈夫です」

「フィーナ嬢がそう言うなら、探るのはやめよう。ジーク、怒ってすまなかった」


 キーファス様はそれから何があったのか聞いてこなかった。

 秘密にしてとお願いしていなかったのに、秘密に出来て良かったわ。





 それから3日後の昼前、大きな街の上を飛んでいると前の方に巨大な真っ黒な塔が見えてきた。

「あの塔ってなんの塔ですか?」

「守護竜の一家が暮らしてる塔だ。頂上に巣がある」

「そうなのですね。あんなに高くて、崩れたりしないのですか?」


 私がそう聞いてみると、ジーク様は当然のようにこう答えた。


「毎年崩れてるよ」

「大丈夫なのですか……⁉︎ 絶対危ないですよね?」

「大丈夫、怪我人すら出た事ないから」


 あんなに巨大な塔が崩れたら大惨事になると思うのだけど?
 周りが開ているわけでもなさそうだから。

 全く理解出来そうになかったから、他の話題にすることにした。


 ちなみにだけど、私がジーク様を抱きしめてしまった事件以降、私たちの距離は近くなったと思う。
 主にジーク様が自然に私を抱き寄せるようになっただけなのだけど、私もジーク様も寄り添うことに抵抗がなくなったのかな。

 でも、夜寝る時は距離を取っている。ジーク様から「好きな女の子に抱きしめられたら我慢出来なくなりそうだからやめてくれ」と言われたから。
 私としても一線を超えるのはお断りだから、二度とあんなことをしないように気をつけている。



 塔が見えてから少しして、大きなお屋敷の前に着いた。


「大きいですね……。うちの倍はありそう……」

「王都の貴族の屋敷としては一番大きいんだ。迷わないようにな?」

「はい。ジーク様と一緒に行動するようにしますね」

「それは嬉しいが、フィーナが不便だろ? 後で一通り案内するから覚えてくれ」

「努力しますわ……」


 こんなに大きなお屋敷の中なんて、1日で覚えられる気がしないわ……。

 ちなみに、ここでも部屋はジーク様と一緒になっている。


 これは出発前にティアナさんやソフィア様から聞いた話なのだけど、ローザニアでは婚約前に同じ部屋で寝泊りすることはあり得ないけど、グレイヴでは普通のことらしい。

 ローザニアみたいに男性中心の考え方ではなく、女性を大切にする考え方だから、無理やり純潔を奪われることはここ100年起きていないらしい。


 お互いの同意があれば、婚約前でも既成事実を作ることがよくあると聞いて卒倒しそうになったりもしたわ。
 なんでも、絶対に結ばれたい相手との関係を他の貴族に引き裂かれないようにするためなんだって。

 私には絶対に無理だけど、アトランタ家は筆頭貴族だからその必要は無いと聞いて安心した。


 そんなわけで、今は二人で案内された部屋にいる。

 ここは当主夫妻の部屋らしい。


「私なんかがここで過ごして本当によろしいのですか?」

「むしろフィーナじゃなきゃ駄目だ。この部屋は機密書類とかないから、滞在中は自由に使っていいよ」

「ありがとうございます」


 そんな会話をしていると、ティアナさんが他の侍女さん2人を連れてやってきた。


「フィーナ様、明後日の準備をいたしましょう!」

「今から、ですか?」

「お飾りが合わなかったりするといけませんので、念には念を入れるのです。あ、ジーク様はしばらく部屋から出ていってください」

「ここは俺の部屋なんだけど?」

「出 て い っ て く だ さ い」

「分かった……」


 ジーク様が追い出されると、社交界用のドレスに着替えさせられ、着せ替え人形よろしく色々なお飾りを試させられた。
 髪型も何回も変えられたから、髪が傷まないから心配になってしまった。


 それよりも……


「私、社交界で上手くやれるかな……?」


 ……今呟いてしまったことが一番心配なのよね。
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