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42. フィーナ父side 掴んだ証拠

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 兵部省の本部で命令を書いてある書類に署名をしていると、近衛隊の騎士が私のいる副長官室に入室許可を求めにきた。


「入れ」


 私も彼も貴族ではあるが、上下関係を重視する騎士団では兵部卿にしか敬語は使わない。


「失礼いたします!」


 威勢の良い返事と共に部屋に入ってきた彼は騎士の礼をすると、こう口にした。


「報告いたします! レイラ・サーペンス公爵令嬢がクラウス王太子殿下のお茶の中に液体を混入しているのを先程確認いたしました」

「その後、殿下に何か異変は?」

「顔を赤くされて、そのままレイラ様を寝室に連れ込んでおられました」

「分かった。十中八九惚れ薬だろうが、何か判明したら知らせるように」

「はっ! では、失礼いたします!」


 どうやら、私の予想は当たったらしい。
 殿下とレイラ嬢の行動を見張るように命じておいて正解だったようだ。



 帰宅後、アイリスにこのことを報告したところ、彼女はかなり驚いていた。


「もう証拠を掴んだのね。……その令嬢は馬鹿なのかしら?」

「ああ、そうみたいだ」

「もっと罪を洗い出してから動くの?」

「そうするつもりだ。まだ時間はかかると思うが、公爵家の目を引きつけるのは任せて良いか?」

「もちろんよ。私を誰だと思ってるの?」

「可愛くて優秀な僕の愛する妻」


 久々に惚気たような言葉を言って夕食のために部屋を出た。
 ちなみにだが、アイリスがこの言葉程度で照れることはない。もう15年以上夫婦をやっているから当たり前だが。



 そして夕食の時間、娘のルシアがこうお願いしてきた。


「そろそろお姉さまに会いたいです……。お父様、お姉様に会いに行く許可をいただけませんか?」

「僕もフィーナに会いに行きたいです」


 息子のイリアスもそう口にするが、私は許可を出すつもりは無かった。


「今は国境が危険な状態だから、まだ行ってはいけない。フィーナにかけられた不敬罪が無かったことに出来るまでは駄目だ」


 今のフィーナは国外追放を言い渡されてしまっている。そのフィーナに王家の許可無しに会いに行ったら、罪人に援助したとして疑いの目を向けられてしまいかねない。

 それに加えて、今の国境付近は魔物の動きが活発化していてかなり危険な状態になっている。
 大切な子供達を死地に送り出すような事は親として絶対に出来ない。


「そうでしたのね……。でも、お姉様は無事に辿りつけたのですよね?」

「運が良かっただけだ。アトランタ家によれば、フィーナはあと少しで死ぬところだったそうだ」


 そう告げると、二人は黙り込んでしまった。


「ごめんなさい……考えが足りていませんでした」

「分かってくれればそれでいい。あと一月で陛下の治療が終わる予定だから、それまで待ってくれ」

「はい……」
「分かりました」


 悲しそうな表情をしながらも、二人はしっかりと頷いた。


 その翌日、陛下の意識が戻ったとの知らせが入った。
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