婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多

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38. 関係の変化②

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 あの後恥ずかしさから逃げるようにして部屋にこもっていた私は1時間ほどかけて落ち着きを取り戻していた。
 でも、ある問題にも気付いてしまった。


「私、婚約破棄されてからまだ1週間しか経っていないのですけど、尻軽女って思われたりしませんか?」

「切り替えが上手い女性と見られることはあると思うが、尻軽って思われることは無いと思う」

「そうですか。良かった……」


 そう答えたけど、やっぱりジーク様の告白を受け入れるのはまだ早すぎた気がするわ……。
 今更何かをするわけではないけど。


「だから安心して来週の王宮パーティーに俺と参加してくれ」

「は、はい」


 グレイヴ竜王国に来てから初めて参加する社交界はジーク様がエスコート役になるみたい。
 お付き合いすることになったのだから当たり前なのだけど。

 私達の会話が途切れると、ティアナさんがジーク様にこんなことを口にした。


「ジーク様、どうでしたか?」

「受け入れてもらえたぞ」

「おめでとうございます」


 何やら怪しい笑みを浮かべるジーク様にそう答えるティアナさん。
 得体の知れない笑顔のやりとりが怖いのだけど……。


「そういうわけだから、覚悟しておけよ?」

「分かっております」


 覚悟って、ティアナさんは一体何をやらかしたのかしら?
 思い当たることはいくつかあるけど、正解を見つけてはいけないような気がするから考えるのをやめた。



 それから少しして、ジーク様がアルディアさんと出かけて行った。
 修行をしに行っているそうだけど、具体的にどんなことをしているのかは知らないから、ついて行きたいとお願いしてみたのだけど……危ないから駄目だと言われてしまった。
 竜には勝てないけど、私そこまで弱くないのに……。


 そういうわけで、今はとても暇にしている。
 ティアナさんはいつも以上に忙しそうにしていて、ユリウスさんは仕事でいなくて、アルディアさんはジーク様と出かけてしまったから。


「フィーナ様、お暇でしたら町を見てきてはいかがですか?」

「襲われたりしない?」

「多分襲われますが、フィーナ様なら魔法で対処可能ですよ。殺さない程度になら痛めつけて大丈夫です」

「物騒だからやめておくわ……」


 外を歩いていたら襲われるって、ここはスラムなの⁉︎


「ジーク様も言っていたのだけど、ここってどうしてそんなに危ないのかしら?」

「娼館が無いからですよ。なので、町中の男性は欲求が溜まっています。
 そこに可愛らしい容姿のフィーナ様が行かれると、欲求を抑えきれなくなった男性が襲ってくるんです」

「そ、そうなのね……」


 生々しい説明に少し引いてしまう私。
 絶対に1人で出歩かないことに決めた。
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