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25. フィーナ父side 娘からの手紙

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 仕事と調査を終えて帰宅すると、アイリスがいつも以上に明るい笑顔で出迎えてくれた。

 フィーナの無事が分かったのか、それともショックでどこかおかしくなってしまったのか……。
 後者だと私が寝込んでしまいそうだから、その時は聞けなかった。


 理由が分かったのは夕食の席でフィーナ以外の家族が集まった時だった。
 まだ配膳されていないテーブルの中央、そこにあったものが全てを物語っていた。


「アイリス、なぜ今まで黙ってた?」


 フィーナの字で書かれた手紙を読み終えてから、普段通りのアイリスにそう問いかけた。


「あなたが着替えもしないで一人で大喜びすると思ったから……」


 少し俯いて申し訳なさそうに口にするアイリス。
 確かに、嬉しくて年甲斐もなくはしゃぎたい気分だからアイリスの考えは正解なのだが……。


「少しは喜んでもいいだろ?」

「子供達の前ではしゃいだら、親として示しが付かないわよ?」

「そうだな……」


 腰に手を当てて胸を張るアイリス。すっかりいつも通りで安心した。

 フィーナも私の信頼している友人の家で保護してもらえているようだから、しばらくは普通に過ごせるだろう。
 黒竜にも気に入られているようだから、万が一の時は守ってもらえるはずだ。


「イリアス~! ルシア~! フィーナから手紙が届いてるわよ~」

「お姉様から……? 無事だったのですね……、良かった……」


 手紙に目を通して、次女のルシアがそう涙ぐむ。
 実は、フィーナは家族それぞれと一部の使用人に宛てて個別になっていた。

 だから、自然と嬉し涙が流れてしまう。私は家長としてそんなことは出来ないが。


「フィーナ、無事だったんですね。安心しました」


 長男のイリアスは泣いているようには見えないが、目を潤ませていた。

 この後の夕食は、大切な家族を失う恐怖から暗い雰囲気だった昨日とは違って、明るさを取り戻していた。
 だが、フィーナの不在で穴が空いたような感覚が拭える気配はなかった。



 夕食後、執務室に戻った私はすぐに手紙を書いた。
 1つはフィーナに、もう1つは家督を譲り受ける前に知り合った友人に宛てるものだ。

 友人のアトランタ辺境伯は信用出来るが、息子の婚約者に魔力のある者を求めていたはずだ。
 だから、フィーナに勝手に手出ししないように脅……お願いしようと思っている。

 もちろん、フィーナがアトランタ家に嫁ぎたいと言えばそれを尊重するが、勝手に娘を取られたくはないからな。


『フィーナに何かあれば殴りに行く。変な気は起こすなよ? ジーク君にもしっかり伝えておけ』


 偉そうな文面だが、私達の間柄では全く問題にならない。むしろ、丁寧な文面だと気持ち悪く思われるくらいだ。

 私は2通の手紙を執事に預けて、寝室に向かうのだった。
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