18 / 155
18. フィーナ父side 調査開始(1)
しおりを挟む
「アイリスの具合は?」
「安定しております。お医者様は心労によるものだとおっしゃっていました」
フィーナが罪を着せられて家を出た翌日、妻のアイリスが熱を出して寝込んでしまった。
滅多に体調を崩さないのに寝込むとは、相当ショックだったに違いない。
今もフィーナがどこにいるのかは不明だが、騎士団の会話から街道を使わずに山を越えて隣国に渡ったところまでは分かっている。
昨晩眠っていないことを考えると倒れてしまっている可能性も十分ある。
おまけに1人での移動だ。慣れない移動に魔物との戦闘も相まって、相当消耗しているに違いない。
アイリスにはそれが分かっているはずだ。以前、隣国に行った時に魔物の群れと遭遇したことがあるから。
優秀な護衛のお陰で怪我人を出すことは無かったが、その時のアイリスはかなり怯えていたから、相当怖かったのだろう。
今はただ祈ることしか出来ないが、無事だった時のためにやれる事はやり始めている。
フィーナと殿下の婚約は、殿下が婚約者候補の中から気に入った令嬢を選ぶという方法で決まったものだ。
最初はフィーナが慣れることが出来ず距離をとっていたが、次第に距離が縮まって想いあっていた。
よく喧嘩していたようだが、すぐに仲直りしていたから仲が良かったのは間違いないだろう。
国王陛下も真面目で国政において優秀な殿下のことを期待していたし、信用していたから私は安心していた。
だが、結果はこれだ。
考えられるのは2つ。
殿下が本性を隠していたか、変わられてしまったのか。あるいはその両方か。
王族は隠すのが上手いから、どれも可能性がある。
だから、王宮とサーペンス公爵家に探りを入れることにした。
「公爵家が何を考えているか分からない。決して見つかるなよ」
「畏まりました」
恭しく頭を下げ、隠密に長けた騎士は私の書斎を後にした。
ちなみに、王宮へは私が探りに行く予定だ。
王宮は許可されていない者は入ることが出来ないから。
「旦那様、馬車の用意が出来ました」
「アイリスの様子を見たらすぐ行く」
執事にそう告げてから夫婦の寝室に向かった。
「ソーラス……」
「無理はしなくていい。必ずフィーナが帰ってこれるようにするから待っててくれ」
「分かりましたわ……。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」
無理しなくていいと言ったのに起き上がったアイリスと抱擁を交わしてから馬車へと向かった。
王宮に着いたら、すぐに仕事を済ませてから王太子の調査にあたるつもりだ。
兵部卿の次に地位の高い私が王宮内を回っていても、特に怪しまれる事はないはずだ。
王太子の変化が公爵令嬢のせいである事、フィーナが無事である事、それを祈りながら王宮に向かった。
「安定しております。お医者様は心労によるものだとおっしゃっていました」
フィーナが罪を着せられて家を出た翌日、妻のアイリスが熱を出して寝込んでしまった。
滅多に体調を崩さないのに寝込むとは、相当ショックだったに違いない。
今もフィーナがどこにいるのかは不明だが、騎士団の会話から街道を使わずに山を越えて隣国に渡ったところまでは分かっている。
昨晩眠っていないことを考えると倒れてしまっている可能性も十分ある。
おまけに1人での移動だ。慣れない移動に魔物との戦闘も相まって、相当消耗しているに違いない。
アイリスにはそれが分かっているはずだ。以前、隣国に行った時に魔物の群れと遭遇したことがあるから。
優秀な護衛のお陰で怪我人を出すことは無かったが、その時のアイリスはかなり怯えていたから、相当怖かったのだろう。
今はただ祈ることしか出来ないが、無事だった時のためにやれる事はやり始めている。
フィーナと殿下の婚約は、殿下が婚約者候補の中から気に入った令嬢を選ぶという方法で決まったものだ。
最初はフィーナが慣れることが出来ず距離をとっていたが、次第に距離が縮まって想いあっていた。
よく喧嘩していたようだが、すぐに仲直りしていたから仲が良かったのは間違いないだろう。
国王陛下も真面目で国政において優秀な殿下のことを期待していたし、信用していたから私は安心していた。
だが、結果はこれだ。
考えられるのは2つ。
殿下が本性を隠していたか、変わられてしまったのか。あるいはその両方か。
王族は隠すのが上手いから、どれも可能性がある。
だから、王宮とサーペンス公爵家に探りを入れることにした。
「公爵家が何を考えているか分からない。決して見つかるなよ」
「畏まりました」
恭しく頭を下げ、隠密に長けた騎士は私の書斎を後にした。
ちなみに、王宮へは私が探りに行く予定だ。
王宮は許可されていない者は入ることが出来ないから。
「旦那様、馬車の用意が出来ました」
「アイリスの様子を見たらすぐ行く」
執事にそう告げてから夫婦の寝室に向かった。
「ソーラス……」
「無理はしなくていい。必ずフィーナが帰ってこれるようにするから待っててくれ」
「分かりましたわ……。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」
無理しなくていいと言ったのに起き上がったアイリスと抱擁を交わしてから馬車へと向かった。
王宮に着いたら、すぐに仕事を済ませてから王太子の調査にあたるつもりだ。
兵部卿の次に地位の高い私が王宮内を回っていても、特に怪しまれる事はないはずだ。
王太子の変化が公爵令嬢のせいである事、フィーナが無事である事、それを祈りながら王宮に向かった。
17
お気に入りに追加
5,229
あなたにおすすめの小説
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
今さら跡継ぎと持ち上げたって遅いです。完全に心を閉ざします
匿名希望ショタ
恋愛
血筋&魔法至上主義の公爵家に生まれた魔法を使えない女の子は落ちこぼれとして小さい窓しかない薄暗く汚い地下室に閉じ込められていた。当然ネズミも出て食事でさえ最低限の量を一日一食しか貰えない。そして兄弟達や使用人達が私をストレスのはけ口にしにやってくる。
その環境で女の子の心は崩壊していた。心を完全に閉ざし無表情で短い返事だけするただの人形に成り果ててしまったのだった。
そんな時兄弟達や両親が立て続けに流行病で亡くなり跡継ぎとなった。その瞬間周りの態度が180度変わったのだ。
でも私は完全に心を閉ざします
愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜
あーもんど
恋愛
「愛だの恋だのくだらない」
そう吐き捨てる婚約者に、命を奪われた公爵令嬢ベアトリス。
何もかもに絶望し、死を受け入れるものの……目を覚ますと、過去に戻っていて!?
しかも、謎の青年が現れ、逆行の理由は公爵にあると宣う。
よくよく話を聞いてみると、ベアトリスの父────『光の公爵様』は娘の死を受けて、狂ってしまったらしい。
その結果、世界は滅亡の危機へと追いやられ……青年は仲間と共に、慌てて逆行してきたとのこと。
────ベアトリスを死なせないために。
「いいか?よく聞け!光の公爵様を闇堕ちさせない、たった一つの方法……それは────愛娘であるお前が生きて、幸せになることだ!」
ずっと父親に恨まれていると思っていたベアトリスは、青年の言葉をなかなか信じられなかった。
でも、長年自分を虐げてきた家庭教師が父の手によって居なくなり……少しずつ日常は変化していく。
「私……お父様にちゃんと愛されていたんだ」
不器用で……でも、とてつもなく大きな愛情を向けられていると気づき、ベアトリスはようやく生きる決意を固めた。
────今度こそ、本当の幸せを手に入れてみせる。
もう偽りの愛情には、縋らない。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
*溺愛パパをメインとして書くのは初めてなので、暖かく見守っていただけますと幸いですm(_ _)m*
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる