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16. 隣国での暮らし②
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昼食後は部屋にいたけれど、何もすることがなくて暇なのでティアナさんとお話しすることにした。
「ティアナさん、ここの使用人さんってティアナさんだけなのですか?」
「いえ、夫もおります」
食器を洗いながらそう答えるティアナさん。
「旦那さんも侍従をしているのですか?」
「いいえ、執事をしております」
「今はいらっしゃらないのですか? ご挨拶をしたいのですけど……」
「今は食材の調達に行っておりますわ。
そろそろ帰ってくると思いますのでお部屋でお待ち下さい。帰ってきたらお呼びします」
「分かりましたわ」
なんだか邪魔してしまって申し訳なくなったから、大人しく部屋で待つことにした。
返事をしてキッチンを出ようとすると、後ろから声をかけられた。
「フィーナ様、私達に敬語を使う必要はありませんからね? 貴族の方から敬語を使われると居心地が悪いので、使わないでいただけると嬉しいです」
「ごめんなさい、今から改めるわ」
「ありがとうございます」
身分を失った状態で泊めてもらっているから敬語にしていたけど、家で普段使用人に接していた時の口調にすることにした。
まさか居心地を悪くしてしまっているとは思わなかっわ……。
私が謝ると、笑顔でお礼を言われた。
部屋に戻ってから駄目になってしまった食べ物を処理したり、お父様とお母様にお手紙を書いたりした。
ちょうどお手紙を書き終えた時、ティアナさんが私の部屋に来た。
「フィーナ様、夫が戻ってきました。ダイニングにおりますので、いつでもいらしてください」
「はーい、今いくわ」
そう返事をしてダイニングに行くと、椅子に座っていた殿方が私に頭を下げた。
「はじめまして、ユリウス・グレイルと申します。どうぞ宜しくお願いいたします」
「フィーナ・アストリアです。こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
ティアナさんの旦那さんが家名を持っていることに驚く私。
平民は家名を持たない。だから、家名を名乗ったユリウスさんは貴族なのだと思う。
「どうかされましたか?」
「ユリウスさんが貴族ということに驚いただけですわ。ちなみにですけど、位はなんですの?」
「男爵位を授かっております。貴族とは言っても、ほぼ平民なので敬語ではなく普通の使用人と接する時のように話していただけると助かります」
「はい……」
勘当される予定の私が敬語を使わないで、男爵を持つ方に敬語を使われるのは何か違うような気がするわ。
一応、ティアナさんには私が勘当される予定だと話してあるけど、それを知らないユリウスさんにまで謙遜させるのは申し訳ない。
私がどうしようか悩んでいると、ティアナさんがこんなことを口にした。
「フィーナ様、勘当されることを気にしているのですか?」
「ええ。私はもう平民と同じなのに、ティアナさんにもユリウスさんにも敬語を使わせてしまっているのが申し訳なくて……」
「フィーナ様、本当にご両親は勘当されるのでしょうか? 優しい方でしたら、フィーナ様が戻れるように奔走すると思いますよ」
「お父様ならやりかねないわ……。お父様だもの、きっと倒れそうになるまで私のために動いてくれるのよ……」
私のために身を削るお父様が容易に想像出来てしまって、申し訳なくて目頭が熱くなってきた。
「そんなに心配なのでしたら、お手紙を書かれてはいかがですか?」
「書くだけ書いてあるわ。でも、送って大丈夫かしら……?」
「フィーナ様の家と当家は元々繋がりがありますので、普段のやり取りのお手紙に紛れ込ませれば問題ないかと思います」
「そういうことなら、お願いするわ。部屋に置いてあるから取ってくるわ」
そう言って手紙を取ってきた私は、ユリウスさんに手紙を託した。
「ティアナさん、ここの使用人さんってティアナさんだけなのですか?」
「いえ、夫もおります」
食器を洗いながらそう答えるティアナさん。
「旦那さんも侍従をしているのですか?」
「いいえ、執事をしております」
「今はいらっしゃらないのですか? ご挨拶をしたいのですけど……」
「今は食材の調達に行っておりますわ。
そろそろ帰ってくると思いますのでお部屋でお待ち下さい。帰ってきたらお呼びします」
「分かりましたわ」
なんだか邪魔してしまって申し訳なくなったから、大人しく部屋で待つことにした。
返事をしてキッチンを出ようとすると、後ろから声をかけられた。
「フィーナ様、私達に敬語を使う必要はありませんからね? 貴族の方から敬語を使われると居心地が悪いので、使わないでいただけると嬉しいです」
「ごめんなさい、今から改めるわ」
「ありがとうございます」
身分を失った状態で泊めてもらっているから敬語にしていたけど、家で普段使用人に接していた時の口調にすることにした。
まさか居心地を悪くしてしまっているとは思わなかっわ……。
私が謝ると、笑顔でお礼を言われた。
部屋に戻ってから駄目になってしまった食べ物を処理したり、お父様とお母様にお手紙を書いたりした。
ちょうどお手紙を書き終えた時、ティアナさんが私の部屋に来た。
「フィーナ様、夫が戻ってきました。ダイニングにおりますので、いつでもいらしてください」
「はーい、今いくわ」
そう返事をしてダイニングに行くと、椅子に座っていた殿方が私に頭を下げた。
「はじめまして、ユリウス・グレイルと申します。どうぞ宜しくお願いいたします」
「フィーナ・アストリアです。こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
ティアナさんの旦那さんが家名を持っていることに驚く私。
平民は家名を持たない。だから、家名を名乗ったユリウスさんは貴族なのだと思う。
「どうかされましたか?」
「ユリウスさんが貴族ということに驚いただけですわ。ちなみにですけど、位はなんですの?」
「男爵位を授かっております。貴族とは言っても、ほぼ平民なので敬語ではなく普通の使用人と接する時のように話していただけると助かります」
「はい……」
勘当される予定の私が敬語を使わないで、男爵を持つ方に敬語を使われるのは何か違うような気がするわ。
一応、ティアナさんには私が勘当される予定だと話してあるけど、それを知らないユリウスさんにまで謙遜させるのは申し訳ない。
私がどうしようか悩んでいると、ティアナさんがこんなことを口にした。
「フィーナ様、勘当されることを気にしているのですか?」
「ええ。私はもう平民と同じなのに、ティアナさんにもユリウスさんにも敬語を使わせてしまっているのが申し訳なくて……」
「フィーナ様、本当にご両親は勘当されるのでしょうか? 優しい方でしたら、フィーナ様が戻れるように奔走すると思いますよ」
「お父様ならやりかねないわ……。お父様だもの、きっと倒れそうになるまで私のために動いてくれるのよ……」
私のために身を削るお父様が容易に想像出来てしまって、申し訳なくて目頭が熱くなってきた。
「そんなに心配なのでしたら、お手紙を書かれてはいかがですか?」
「書くだけ書いてあるわ。でも、送って大丈夫かしら……?」
「フィーナ様の家と当家は元々繋がりがありますので、普段のやり取りのお手紙に紛れ込ませれば問題ないかと思います」
「そういうことなら、お願いするわ。部屋に置いてあるから取ってくるわ」
そう言って手紙を取ってきた私は、ユリウスさんに手紙を託した。
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