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7. 出会い①
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主人公が謎の液体まみれになっています。苦手な方はご注意ください。
***************
全身の不快感で目を覚ますと、黒い影が見えた。
確か、この竜に頭から食べられて……全身が締め付けられるような感覚がして……それでどうなったのかしら?
うん? 食べられた?
こ、このままじゃ殺される……!
「こ、来ないで……」
次第に頭が冴えて状況を理解した私は慌てて後ずさる。
胸がバクバク言ってるけど、それを気にしている余裕はない。
『僕、そもそも動いてないんだけどなぁ……』
どこからか、男の子の声が聞こえた気がした。
「だ、誰……?」
『だから、僕だよ。目の前にいる竜だよ』
「は……?」
まさか私を食べた相手が話しかけてくるとは思わなかった私は戸惑う。
本当にどうなってるのかしら?
『青竜に食べられそうになってたお姉さんを助けようとしたんだけど、青竜に攻撃されて思わず呑み込んじゃってごめんなさい』
「私を食べる気はないの……?」
『もちろんだよ。食べるつもりだったらもう食べてるよ』
「それもそうよね……」
よく分からないけど、目の前の巨大な竜が私を助けてくれたらしい。
でも、飲み込まれたのに生きているのが不思議だわ……。
身体にどこかおかしな所はないか見てみると、透明なねっとりとした液体まみれになっていた。
不快感の正体はこれね……。
そんな時、後ろから殿方の声が聞こえてきた。
「目が覚めたみたいですね。痛いところとかはありませんか?」
「ええ、大丈夫ですわ。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「私はジークですよ。貴女は?」
「フィーナ・アストリアです」
「フィーナさん、打ち解けた口調で話してもいいですか? 敬語はあまりなれていないので」
「大丈夫ですわ」
私がそう答えると、軽装の騎士の格好をしているジークさんは安心したような表情を見せた。
「ありがとう、助かるよ。ところで、お嬢さんはなんであんなところに一人でいたんだ?」
「笑わないと約束してくださるなら、説明しますわ」
「約束するよ」
私の問いかけに即答するジークさん。この人は信用出来ると判断し、婚約破棄から始まる逃亡劇を事細かく説明した。
説明の最中、ジークさんがだんだんと遠い目をしているのが気になったけど、真面目に聞いているみたいだったから説明を続けた。
「それ、魔物が魔力に惹かれて襲ってきてるだけだ……。あの辺りはそんなに多くないからな」
「そうでしたのね……」
倒しても倒しても魔物が現れていたのが私のせいだなんて……。
衝撃の事実に項垂れると、ぬるぬるした液体が垂れてきて顔をしかめた。
「あの……これなんとか出来ませんか?」
「そこに川があるから洗ってくるといい。俺は見ないから安心してくれ」
そう口にするジークさん。
私としては、こんな屋外で服を脱ぐこと自体信じられないのだけど……。
でも、ここ以外に身体を綺麗に出来そうな場所は見当たらなかったから、抵抗するのは諦めることにした。
「この竜は見るってことですか?」
さっきの言葉から不穏な気配を感じて訊いてみると、ジークさんは頷いた。
「ああ、いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「オス、ですよね……?」
「人に発情することはないから安心てくれ。また食べられてもいいなら見張らせないが、どうする?」
そう言われた瞬間、竜に食べられる感触をありありと思い出してしまい、悪寒が走った。
「見張っててください……」
見られたくはないけど、私はそう口にしていた。
服を着たまま透き通った水が流れている小川に入ると、ぬるぬるした液体がとれていった。
服を脱がずに済みそうで良かったわ……。
***************
液体の正体はご想像にお任せします。
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全身の不快感で目を覚ますと、黒い影が見えた。
確か、この竜に頭から食べられて……全身が締め付けられるような感覚がして……それでどうなったのかしら?
うん? 食べられた?
こ、このままじゃ殺される……!
「こ、来ないで……」
次第に頭が冴えて状況を理解した私は慌てて後ずさる。
胸がバクバク言ってるけど、それを気にしている余裕はない。
『僕、そもそも動いてないんだけどなぁ……』
どこからか、男の子の声が聞こえた気がした。
「だ、誰……?」
『だから、僕だよ。目の前にいる竜だよ』
「は……?」
まさか私を食べた相手が話しかけてくるとは思わなかった私は戸惑う。
本当にどうなってるのかしら?
『青竜に食べられそうになってたお姉さんを助けようとしたんだけど、青竜に攻撃されて思わず呑み込んじゃってごめんなさい』
「私を食べる気はないの……?」
『もちろんだよ。食べるつもりだったらもう食べてるよ』
「それもそうよね……」
よく分からないけど、目の前の巨大な竜が私を助けてくれたらしい。
でも、飲み込まれたのに生きているのが不思議だわ……。
身体にどこかおかしな所はないか見てみると、透明なねっとりとした液体まみれになっていた。
不快感の正体はこれね……。
そんな時、後ろから殿方の声が聞こえてきた。
「目が覚めたみたいですね。痛いところとかはありませんか?」
「ええ、大丈夫ですわ。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「私はジークですよ。貴女は?」
「フィーナ・アストリアです」
「フィーナさん、打ち解けた口調で話してもいいですか? 敬語はあまりなれていないので」
「大丈夫ですわ」
私がそう答えると、軽装の騎士の格好をしているジークさんは安心したような表情を見せた。
「ありがとう、助かるよ。ところで、お嬢さんはなんであんなところに一人でいたんだ?」
「笑わないと約束してくださるなら、説明しますわ」
「約束するよ」
私の問いかけに即答するジークさん。この人は信用出来ると判断し、婚約破棄から始まる逃亡劇を事細かく説明した。
説明の最中、ジークさんがだんだんと遠い目をしているのが気になったけど、真面目に聞いているみたいだったから説明を続けた。
「それ、魔物が魔力に惹かれて襲ってきてるだけだ……。あの辺りはそんなに多くないからな」
「そうでしたのね……」
倒しても倒しても魔物が現れていたのが私のせいだなんて……。
衝撃の事実に項垂れると、ぬるぬるした液体が垂れてきて顔をしかめた。
「あの……これなんとか出来ませんか?」
「そこに川があるから洗ってくるといい。俺は見ないから安心してくれ」
そう口にするジークさん。
私としては、こんな屋外で服を脱ぐこと自体信じられないのだけど……。
でも、ここ以外に身体を綺麗に出来そうな場所は見当たらなかったから、抵抗するのは諦めることにした。
「この竜は見るってことですか?」
さっきの言葉から不穏な気配を感じて訊いてみると、ジークさんは頷いた。
「ああ、いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「オス、ですよね……?」
「人に発情することはないから安心てくれ。また食べられてもいいなら見張らせないが、どうする?」
そう言われた瞬間、竜に食べられる感触をありありと思い出してしまい、悪寒が走った。
「見張っててください……」
見られたくはないけど、私はそう口にしていた。
服を着たまま透き通った水が流れている小川に入ると、ぬるぬるした液体がとれていった。
服を脱がずに済みそうで良かったわ……。
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液体の正体はご想像にお任せします。
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