7 / 155
7. 出会い①
しおりを挟む
主人公が謎の液体まみれになっています。苦手な方はご注意ください。
***************
全身の不快感で目を覚ますと、黒い影が見えた。
確か、この竜に頭から食べられて……全身が締め付けられるような感覚がして……それでどうなったのかしら?
うん? 食べられた?
こ、このままじゃ殺される……!
「こ、来ないで……」
次第に頭が冴えて状況を理解した私は慌てて後ずさる。
胸がバクバク言ってるけど、それを気にしている余裕はない。
『僕、そもそも動いてないんだけどなぁ……』
どこからか、男の子の声が聞こえた気がした。
「だ、誰……?」
『だから、僕だよ。目の前にいる竜だよ』
「は……?」
まさか私を食べた相手が話しかけてくるとは思わなかった私は戸惑う。
本当にどうなってるのかしら?
『青竜に食べられそうになってたお姉さんを助けようとしたんだけど、青竜に攻撃されて思わず呑み込んじゃってごめんなさい』
「私を食べる気はないの……?」
『もちろんだよ。食べるつもりだったらもう食べてるよ』
「それもそうよね……」
よく分からないけど、目の前の巨大な竜が私を助けてくれたらしい。
でも、飲み込まれたのに生きているのが不思議だわ……。
身体にどこかおかしな所はないか見てみると、透明なねっとりとした液体まみれになっていた。
不快感の正体はこれね……。
そんな時、後ろから殿方の声が聞こえてきた。
「目が覚めたみたいですね。痛いところとかはありませんか?」
「ええ、大丈夫ですわ。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「私はジークですよ。貴女は?」
「フィーナ・アストリアです」
「フィーナさん、打ち解けた口調で話してもいいですか? 敬語はあまりなれていないので」
「大丈夫ですわ」
私がそう答えると、軽装の騎士の格好をしているジークさんは安心したような表情を見せた。
「ありがとう、助かるよ。ところで、お嬢さんはなんであんなところに一人でいたんだ?」
「笑わないと約束してくださるなら、説明しますわ」
「約束するよ」
私の問いかけに即答するジークさん。この人は信用出来ると判断し、婚約破棄から始まる逃亡劇を事細かく説明した。
説明の最中、ジークさんがだんだんと遠い目をしているのが気になったけど、真面目に聞いているみたいだったから説明を続けた。
「それ、魔物が魔力に惹かれて襲ってきてるだけだ……。あの辺りはそんなに多くないからな」
「そうでしたのね……」
倒しても倒しても魔物が現れていたのが私のせいだなんて……。
衝撃の事実に項垂れると、ぬるぬるした液体が垂れてきて顔をしかめた。
「あの……これなんとか出来ませんか?」
「そこに川があるから洗ってくるといい。俺は見ないから安心してくれ」
そう口にするジークさん。
私としては、こんな屋外で服を脱ぐこと自体信じられないのだけど……。
でも、ここ以外に身体を綺麗に出来そうな場所は見当たらなかったから、抵抗するのは諦めることにした。
「この竜は見るってことですか?」
さっきの言葉から不穏な気配を感じて訊いてみると、ジークさんは頷いた。
「ああ、いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「オス、ですよね……?」
「人に発情することはないから安心てくれ。また食べられてもいいなら見張らせないが、どうする?」
そう言われた瞬間、竜に食べられる感触をありありと思い出してしまい、悪寒が走った。
「見張っててください……」
見られたくはないけど、私はそう口にしていた。
服を着たまま透き通った水が流れている小川に入ると、ぬるぬるした液体がとれていった。
服を脱がずに済みそうで良かったわ……。
***************
液体の正体はご想像にお任せします。
***************
全身の不快感で目を覚ますと、黒い影が見えた。
確か、この竜に頭から食べられて……全身が締め付けられるような感覚がして……それでどうなったのかしら?
うん? 食べられた?
こ、このままじゃ殺される……!
「こ、来ないで……」
次第に頭が冴えて状況を理解した私は慌てて後ずさる。
胸がバクバク言ってるけど、それを気にしている余裕はない。
『僕、そもそも動いてないんだけどなぁ……』
どこからか、男の子の声が聞こえた気がした。
「だ、誰……?」
『だから、僕だよ。目の前にいる竜だよ』
「は……?」
まさか私を食べた相手が話しかけてくるとは思わなかった私は戸惑う。
本当にどうなってるのかしら?
『青竜に食べられそうになってたお姉さんを助けようとしたんだけど、青竜に攻撃されて思わず呑み込んじゃってごめんなさい』
「私を食べる気はないの……?」
『もちろんだよ。食べるつもりだったらもう食べてるよ』
「それもそうよね……」
よく分からないけど、目の前の巨大な竜が私を助けてくれたらしい。
でも、飲み込まれたのに生きているのが不思議だわ……。
身体にどこかおかしな所はないか見てみると、透明なねっとりとした液体まみれになっていた。
不快感の正体はこれね……。
そんな時、後ろから殿方の声が聞こえてきた。
「目が覚めたみたいですね。痛いところとかはありませんか?」
「ええ、大丈夫ですわ。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「私はジークですよ。貴女は?」
「フィーナ・アストリアです」
「フィーナさん、打ち解けた口調で話してもいいですか? 敬語はあまりなれていないので」
「大丈夫ですわ」
私がそう答えると、軽装の騎士の格好をしているジークさんは安心したような表情を見せた。
「ありがとう、助かるよ。ところで、お嬢さんはなんであんなところに一人でいたんだ?」
「笑わないと約束してくださるなら、説明しますわ」
「約束するよ」
私の問いかけに即答するジークさん。この人は信用出来ると判断し、婚約破棄から始まる逃亡劇を事細かく説明した。
説明の最中、ジークさんがだんだんと遠い目をしているのが気になったけど、真面目に聞いているみたいだったから説明を続けた。
「それ、魔物が魔力に惹かれて襲ってきてるだけだ……。あの辺りはそんなに多くないからな」
「そうでしたのね……」
倒しても倒しても魔物が現れていたのが私のせいだなんて……。
衝撃の事実に項垂れると、ぬるぬるした液体が垂れてきて顔をしかめた。
「あの……これなんとか出来ませんか?」
「そこに川があるから洗ってくるといい。俺は見ないから安心してくれ」
そう口にするジークさん。
私としては、こんな屋外で服を脱ぐこと自体信じられないのだけど……。
でも、ここ以外に身体を綺麗に出来そうな場所は見当たらなかったから、抵抗するのは諦めることにした。
「この竜は見るってことですか?」
さっきの言葉から不穏な気配を感じて訊いてみると、ジークさんは頷いた。
「ああ、いつ魔物が襲ってくるか分からないからな」
「オス、ですよね……?」
「人に発情することはないから安心てくれ。また食べられてもいいなら見張らせないが、どうする?」
そう言われた瞬間、竜に食べられる感触をありありと思い出してしまい、悪寒が走った。
「見張っててください……」
見られたくはないけど、私はそう口にしていた。
服を着たまま透き通った水が流れている小川に入ると、ぬるぬるした液体がとれていった。
服を脱がずに済みそうで良かったわ……。
***************
液体の正体はご想像にお任せします。
72
お気に入りに追加
5,332
あなたにおすすめの小説

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。
【完結】元悪役令嬢の劣化コピーは白銀の竜とひっそり静かに暮らしたい
豆田 ✿ 麦
恋愛
才色兼備の公爵令嬢は、幼き頃から王太子の婚約者。
才に溺れず、分け隔てなく、慈愛に満ちて臣民問わず慕われて。
奇抜に思える発想は公爵領のみならず、王国の経済を潤し民の生活を豊かにさせて。
―――今では押しも押されもせぬ王妃殿下。そんな王妃殿下を伯母にもつ私は、王妃殿下の模倣品(劣化コピー)。偉大な王妃殿下に倣えと、王太子の婚約者として日々切磋琢磨させられています。
ほら、本日もこのように……
「シャルロット・マクドゥエル公爵令嬢!身分を笠にきた所業の数々、もはや王太子たる私、エドワード・サザンランドの婚約者としてふさわしいものではない。今この時をもってこの婚約を破棄とする!」
……課題が与えられました。
■■■
本編全8話完結済み。番外編公開中。
乙女ゲームも悪役令嬢要素もちょっとだけ。花をそえる程度です。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる