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1. プロローグ
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「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
王家主催のパーティーの場で婚約者のクラウス殿下にそう言われ、突然のことに私は困惑した。
この前にお会いした時は私に普段通り接してくれて、愛を確かめる行為も求められていたから、尚更この状況になったわけがわからなかった。
「殿下、なぜ婚約を破棄するのですか?」
「レイラと婚約することにしたからだよ。私はレイラを好きになってしまったんだ。貴女よりも愛想良くて可愛いですからね」
そう口にする殿下にプロンドの髪の令嬢が歩み寄る。
彼女が殿下の言うレイラ・サーペンス公爵令嬢だ。
呆然とする私の前で殿下に寄り添うレイラ様が口を開く。
「そんなに睨まないでくださいまし。私は何も悪くありませんのよ?
魅力がない貴女と婚約していたクラウス様が悪いのですわ」
「僕が悪いのは事実だから、慰謝料は払うよ」
そう口にする殿下に悪びれる素振りはない。
ようやく頭が追いついてきて、背筋が冷たくなるのが分かった。
そんなとき、周囲の声が耳に入ってくる。
「そういえば、フィーナ様は昨日もお気持ちが離れている殿下に寄り添っていたそうですわ」
「殿下が可哀想ですわ。想いのない女に寄り添われるなんて」
残念なことに、社交界では浮気された側が悪いとされる風潮がある。
だから、私に魅力が無いのが悪いと思われてるに違いない。
これじゃあ私はただの晒し者ね……。
それを理解して目頭が熱くなってきたとき、殿下とレイラ様の会話が耳に入ってくる。
「クラウス様、あの女の事を思い出すのは嫌ですわよね?」
「ああ、もちろん」
「でしたら、二度と社交界に来れないようにするのはいかがですか?」
「それは流石に可哀想だろう」
「クラウス様はお優しいのですね」
恍惚とした表情を殿下に向けるレイラ様。
この間にも殿下の評価は上がり、浮気されて婚約破棄を言い渡された私の評価が下がっていく。
もうこんなの耐えられない。
気が付けば私は口を開いていた。
「慰謝料は結構です。さようなら」
好きな気持ちは完全に消えてしまったから、みっともなく足掻くつもりはない。
殿下の側にいるのに相応しくなれるように王太子妃教育などを必死にしてきた努力が無駄になるのは悔しいけど、諦めるしかないのは分かっているから。
きっと、私が努力しても認めて貰えないのよね……。
「慰謝料を受け取らないだと? 僕の気持ちを少しくらい考えろ!」
「私の気持ちを踏み躙た貴方がそれを言うのですか? 殿下には失望しました。
もう二度と私に関わらないでください」
強がりかもしれないけど、せめてもの抵抗にそう口にする。
そしてパーティ会場の外へ急いだ。
悔しくて哀しくて、それでいて申し訳なくて。
お父様、お母様、こんなことになってしまって申し訳ありません。
心の中で謝る私の目から涙が溢れた。
王家主催のパーティーの場で婚約者のクラウス殿下にそう言われ、突然のことに私は困惑した。
この前にお会いした時は私に普段通り接してくれて、愛を確かめる行為も求められていたから、尚更この状況になったわけがわからなかった。
「殿下、なぜ婚約を破棄するのですか?」
「レイラと婚約することにしたからだよ。私はレイラを好きになってしまったんだ。貴女よりも愛想良くて可愛いですからね」
そう口にする殿下にプロンドの髪の令嬢が歩み寄る。
彼女が殿下の言うレイラ・サーペンス公爵令嬢だ。
呆然とする私の前で殿下に寄り添うレイラ様が口を開く。
「そんなに睨まないでくださいまし。私は何も悪くありませんのよ?
魅力がない貴女と婚約していたクラウス様が悪いのですわ」
「僕が悪いのは事実だから、慰謝料は払うよ」
そう口にする殿下に悪びれる素振りはない。
ようやく頭が追いついてきて、背筋が冷たくなるのが分かった。
そんなとき、周囲の声が耳に入ってくる。
「そういえば、フィーナ様は昨日もお気持ちが離れている殿下に寄り添っていたそうですわ」
「殿下が可哀想ですわ。想いのない女に寄り添われるなんて」
残念なことに、社交界では浮気された側が悪いとされる風潮がある。
だから、私に魅力が無いのが悪いと思われてるに違いない。
これじゃあ私はただの晒し者ね……。
それを理解して目頭が熱くなってきたとき、殿下とレイラ様の会話が耳に入ってくる。
「クラウス様、あの女の事を思い出すのは嫌ですわよね?」
「ああ、もちろん」
「でしたら、二度と社交界に来れないようにするのはいかがですか?」
「それは流石に可哀想だろう」
「クラウス様はお優しいのですね」
恍惚とした表情を殿下に向けるレイラ様。
この間にも殿下の評価は上がり、浮気されて婚約破棄を言い渡された私の評価が下がっていく。
もうこんなの耐えられない。
気が付けば私は口を開いていた。
「慰謝料は結構です。さようなら」
好きな気持ちは完全に消えてしまったから、みっともなく足掻くつもりはない。
殿下の側にいるのに相応しくなれるように王太子妃教育などを必死にしてきた努力が無駄になるのは悔しいけど、諦めるしかないのは分かっているから。
きっと、私が努力しても認めて貰えないのよね……。
「慰謝料を受け取らないだと? 僕の気持ちを少しくらい考えろ!」
「私の気持ちを踏み躙た貴方がそれを言うのですか? 殿下には失望しました。
もう二度と私に関わらないでください」
強がりかもしれないけど、せめてもの抵抗にそう口にする。
そしてパーティ会場の外へ急いだ。
悔しくて哀しくて、それでいて申し訳なくて。
お父様、お母様、こんなことになってしまって申し訳ありません。
心の中で謝る私の目から涙が溢れた。
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