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52. 余命5日⑤
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「心配だから帰ってきて欲しいと言った。他意はない」
私の問いかけにそう答えるお父様。
その表情は真剣そのもので、偽っているようには思えなかった。
そもそも、お父様に嘘を吐かれた事自体少ないのだけど……。
「そうでしたのね。でも、お父様の言うことは聞けませんわ」
「何故だ?」
「例え火事が起きたとしても、今の私は女官という立場ですの。独断で屋敷に戻ることはできませんわ。
それに、戻ったら何をされるか分かりませんもの……」
不安そうに問いかけられて、戻る気が無いことを伝える。
するとお父様は少し落ち込んだ様子でこう口にした。
「そうか……。済まなかった。
落ち着いて過ごせる空気を作ったら、また呼ぶ。その時は戻ってきて欲しい」
今更だけど……私は忌み子なのよね……?
それなのに、どうして私を呼び戻そうとしているのかしら?
「私は忌み子ですのに、正気ですの?」
気がつけば、そんなことを口にしていた。
「実は、レティシアのお陰で赤字が少なくなっていたと気付いたんだ。だから、レティシアは忌み子ではなかった。
今まで冷たくしてしまって済まなかった」
今の言葉でこんなことを考えてしまった。
きっと、私がいなくなってから領地の財政が厳しくなって、私の手を借りたくなったのね……。
「要するに、私に領地のことを手伝えと言っていますのね?」
「そうではない。ただ帰ってきて欲しいだけだ」
「そういう事にしておきますわね」
このまま話しても私の苛立ちが募るだけ。
そう思ったから、この話題はここで終えて馬車を降りようとした。
でも、引き止められてしまった。
「一度でも戻る気は無いのか?」
「ええ、今のところありませんわ」
「そうか……」
残念そうにするお父様。
ここで会話が途切れたから、私は断りを入れて馬車を降りた。
この後は私が暮らす部屋について王家の方と相談しないといけない。
だから殿下達を探す事にした。
(フレア、殿下の居場所って分かったりする?)
(玉座の間にいるみたいよ)
……探す必要はなかったみたい。
殿下はすごく心配しているはずだし、急いで玉座の間に向かう。
玉座の間からはそんなに離れていなかったから、1分程で辿り着いたのだけど……。
「今は緊急事態だから、許可された人物以外立ち入ることは許されない」
……入れてもらうことは出来なかった。
「まだ1人、無事が確認できていない。ルードリッヒ家のご令嬢と聞いている」
「それ、私ですわ。無事を知らせたいので、通してくださる?」
まさか無事が知らされていないだなんて……。
そう思った直後、お父様以外の誰にも無事を知らせてなかった事に気付いて、頭を抱えた。
私の問いかけにそう答えるお父様。
その表情は真剣そのもので、偽っているようには思えなかった。
そもそも、お父様に嘘を吐かれた事自体少ないのだけど……。
「そうでしたのね。でも、お父様の言うことは聞けませんわ」
「何故だ?」
「例え火事が起きたとしても、今の私は女官という立場ですの。独断で屋敷に戻ることはできませんわ。
それに、戻ったら何をされるか分かりませんもの……」
不安そうに問いかけられて、戻る気が無いことを伝える。
するとお父様は少し落ち込んだ様子でこう口にした。
「そうか……。済まなかった。
落ち着いて過ごせる空気を作ったら、また呼ぶ。その時は戻ってきて欲しい」
今更だけど……私は忌み子なのよね……?
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「実は、レティシアのお陰で赤字が少なくなっていたと気付いたんだ。だから、レティシアは忌み子ではなかった。
今まで冷たくしてしまって済まなかった」
今の言葉でこんなことを考えてしまった。
きっと、私がいなくなってから領地の財政が厳しくなって、私の手を借りたくなったのね……。
「要するに、私に領地のことを手伝えと言っていますのね?」
「そうではない。ただ帰ってきて欲しいだけだ」
「そういう事にしておきますわね」
このまま話しても私の苛立ちが募るだけ。
そう思ったから、この話題はここで終えて馬車を降りようとした。
でも、引き止められてしまった。
「一度でも戻る気は無いのか?」
「ええ、今のところありませんわ」
「そうか……」
残念そうにするお父様。
ここで会話が途切れたから、私は断りを入れて馬車を降りた。
この後は私が暮らす部屋について王家の方と相談しないといけない。
だから殿下達を探す事にした。
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……探す必要はなかったみたい。
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「まだ1人、無事が確認できていない。ルードリッヒ家のご令嬢と聞いている」
「それ、私ですわ。無事を知らせたいので、通してくださる?」
まさか無事が知らされていないだなんて……。
そう思った直後、お父様以外の誰にも無事を知らせてなかった事に気付いて、頭を抱えた。
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