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50. 余命5日③

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「時間切れって何よ! 自称全知全能の神様なのよね!?」

 神様の声が聞こえなくなったと思ったら、今度はフレアの声が聞こえてきた。
 同時に何も見えない暗闇が少しずつ明るくなってきて、手を伸ばせば触れる距離にフレアがいることに気付いた。

「フレアも今の声聞いてたの?」
「毎回聞こえてたけど、それがどうかしたの?」

 それってつまり、私が半月後に死ぬって言われた時も聞かれてたってことなの……?

「そういうことになるわ。だから急いで加護しようと思ったのよ」
「そうだったのね……」

 曖昧な返事をする私。
 正直言って、今まで天啓のことを隠していたのが馬鹿みたいに思えてしまった。

「でも、加護が無意味になりそうなこと言われたから悔しいのよね……」
「私はフレアのこと信じてるよ」

 悲しそうな表情を浮かべるフレアにそんな言葉をかける。
 実際、フレアの加護のことは信用しているし、神様の天啓通りにならない事もあると思っている。

 それでも私自身が動かないといけないことは分かっているけれど……。

「もう朝みたい……。レティシア……今更だけどレティシアって呼びにくいわね。レティでいい?」
「何よそれ。別にいいけど」

 そういえば、フレアは何回か私のことを呼ぶ時に噛んでたわね……。
 そんなことを思い出しながら頷く私。

 その直後、白い光が唐突に消えてしまって……。


 ……。
 …………。


 目を覚ましたら、周囲が真っ赤に染まっていた。
 おまけにフレアに抱きしめられている。

「レティおはよう……」
「おはよう……。ねぇ、なんで部屋が燃えてるの?」
「私の仕業じゃ無いわよ」

 簡単に言うと、今の私達は炎の中に閉じ込められていた。

「そうよね。じゃあ、誰かが火を付けたのね……」
「そうなるわね。とりあえず、荷物を纏めて脱出した方がよさそうね」

 特に焦ったりせずに、私の荷物を纏め始めるフレア。
 火事の時は息が出来なくなってしまうと聞いたのだけど……息苦しくはなっていないし熱さも感じなかったから、私も荷物をまとめることにした。

「荷物は燃えてないなんて、不思議だわ……」
「私が結界を張っていたから、無事だったみたいね」

 そんなことを話しているうちに荷物は纏め終わって、私達は廊下に出ようと扉を開けた。
 その瞬間だった。

「……っ!」

 炎が私目がけて吹き出してきて、声にならない悲鳴を上げてしまった。

「流石に少し暑いわね」
「そ、そうね……」

 瞬く間に炎に包まれてしまったのだけど、感じるのは真夏のような暑さだけ。
 熱いだなんて感じたりはしなかった。

 それでもやっぱり恐ろしい光景には変わりないけど……。

 流石に炎に包まれているのは怖くて、恐る恐る廊下を進んでいく。
 すると、突然ガラガラと音を立てて天井が崩れ落ちてきた。

「嘘……」

 このままだと潰されてしまう。
 そう覚悟した時だった。

 目の前で爆発が起きた。

「これで通れるわね」
「今の爆発はフレアがやったの?」
「そうよ」

 今の爆発で残ってた壁も天井もまとめて吹き飛んでしまった。
 お陰で逃げ道は増えたのだけど……同時に近くの部屋にいるメリアさん達のことが心配になってきた。

「近くには誰もいないみたいよ?」

 また考えていることを読まれてしまったらしく、フレアにそんなことを言われた。

「どうして……?」
「それは分からないわ」

 何が起きているのかは分からないけど、誰もいないなら逃げることに専念できるわね……。

「そう……。でも、みんな無事なら良かったわ」

 そんな言葉を返しながら、足を進める私。
 幸いにもズボンのタイプの夜着を着ていたから、瓦礫を登ったりするのに苦労はしなかった。



 それから足を進めること数分、ようやく燃えていない場所に辿り着いた。
 でも、燃え広がるのを防ぐために崩された建物の瓦礫が私達の行く手を阻んでいる。

 おまけに、誰かが泣き喚く声も聞こえてきて、加護があるのに怖くなってしまった。

「レティ、これ登れる……?」
「普通の山でも厳しいのに、こんなの無理よ……」
「そうよね。それなら、少し失礼するわね」

 そんなことを言われたと思ったら、あっという間にフレアに抱き上げられてしまって、瞬く間に瓦礫の山を越えていった。

「一応、脱出出来たみたいね」
「うん、ありがとう。とりあえず、誰かに無事を知らせないと……」

 きっと脱出出来ていなかった私を心配している人がいるはずだから。騎士団の方を探すことにした。

 でも、騎士団の方がなかなか見つからなかった。
 数分かけてようやく見つけた時には、目を覆いたくなるような光景がそこにあった。

「閣下、危険ですから下がってください!」
「大切な娘がいるんだ、そんなこと出来ない!」

 涙をボロボロと流しながら、騎士さんの制止を振り切ろうとするお父様。
 心配してくれているのは嬉しいけど、普段は気にも留めなかったのに……。

 すごく複雑な気持ちになってしまった。


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