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44. 余命6日②
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「アドルフがレティシア嬢を殺めようとしている理由についてだが、何か心当たりはあるかな?」
落ち込む殿下はそのままに、陛下からそんな問いかけをされた。
「婚約破棄したことに対する逆恨みしか考えられませんわ……」
「そうか。そうなると、我々には分からない理由がありそうだ。ジグルドが殺されている可能性もかなり高いから尚更だ」
陛下も王妃様も殿下も、この場にいる全員で動機を探ってみる。
でも、しばらく考えても答えは出なかった。
そんな時、フレアがこんなことを伝えてきた。
(精霊の気配がするわ。さっきまでしていなかったのに、どういうことかしら?)
(もしかして、王家にも精霊に護られてる方が……?)
(それしか考えられないわ。
私も少し気配を出してみてもいいかしら? 向こうから何か言ってくるかもしれないわ)
そんな問いかけをされて、私は少しだけ考え込んだ。
果たして王家にフレアの存在を明かしてもいいのか、いいように利用されないか、不安になってしまったから。
(利用されたりしないか心配だわ……)
(あからさまに利用してくることは無いはずよ。それに、私が利用させないから安心して)
(分かったわ。それなら、試してみて?)
納得して、フレアに気配を出すように言ってみる私。
それから王家の方々が私に聞こえないように何かを話し出すまで、時間はかからなかった。
「何を話しているのですか?」
「ああ、レティシア嬢の近くに精霊がいるかもしれないって話だ」
「精霊、ですか? おとぎ話で聞いたことはありましたけど、本当に存在するのですね……」
陛下の言葉に知らない風を装って返す。すると、こんな言葉が返ってきた。
「ああ、存在する。王族は全員精霊の加護を得ているから、間違いない」
表情を変えることなく、そんなことを口にする殿下。
衝撃の事実に、私はしばらくの間固まってしまった。
「そうでしたのね……」
「ああ。妻も精霊の加護を受けている。ちなみにだが、精霊は全部で6人いて、我々だけで4人から加護を得ている。
「残りは……おそらくレティシア嬢とまだ見ぬ誰かだ」
それから少し間をおいて、陛下はこんな問いかけをしてきた。
「我々はレティシア嬢とレティシア嬢を護る精霊の力を利用しないと誓おう。
その上で質問する。君は精霊と話したことはあるか?」
果たして答えを口にしていいのか、分からなかった。
だから、フレアに救いを求めたのだけど……
(レティシアの好きにしていいわよ)
……返ってきたのは適当な答えだった。
好きにしていいってことは、私に任せるってことよね?
それなら……。
「話したことならありますわ」
触ったこともあるけど、それは話さなくていいわよね?
「そうか。それなら話は早い。
残りの精霊についてだが、アドルフに加護を与えている可能性がある。水の精霊は貪欲だから、他の精霊の邪魔をしようとしているのだろう」
「そうですのね。何故そんなことが分かるのですか?」
いくら王家で精霊の加護があるとは言っても、そんなことは分からないはず。
だから疑問に思ったのだけど……答えは意外にも単純なものだった。
(精霊が4人も集まってるのだから分からない方がおかしいわよ。でも、アクアが元凶だとは思わなかったわ)
(アクア……?)
(水の精霊よ。貪欲なのは確かだけど、人を殺めようとする子じゃなかったはずなの)
悲しそうな声で語るフレア。すると、今度は殿下が答えを出してくれた。
「精霊達から聞いただけだから、詳しいことは分かっていない。だが、精霊の仕業だとすれば全て納得できる」
「そういうことだから、詳しいことは精霊に聞いてくれ。君の側にいるだろう?」
「ええ、今聞いたばかりですわ」
利用しないと先に誓ってくれたし、運命を変える希望でもある。
だから、この機会を逃すわけにはいかない。
ここで殿下達のことを信頼しなかったら、私だって信頼されないかもしれない。
そう思ったから、殿下達のことを信じて私が知っていることを全て話そうと思った。
でも、天啓のことを話したら天罰が下るし、フレアのこともよく知らないし……。
話せることが1つも無いという事実に気が付いてしまった。
落ち込む殿下はそのままに、陛下からそんな問いかけをされた。
「婚約破棄したことに対する逆恨みしか考えられませんわ……」
「そうか。そうなると、我々には分からない理由がありそうだ。ジグルドが殺されている可能性もかなり高いから尚更だ」
陛下も王妃様も殿下も、この場にいる全員で動機を探ってみる。
でも、しばらく考えても答えは出なかった。
そんな時、フレアがこんなことを伝えてきた。
(精霊の気配がするわ。さっきまでしていなかったのに、どういうことかしら?)
(もしかして、王家にも精霊に護られてる方が……?)
(それしか考えられないわ。
私も少し気配を出してみてもいいかしら? 向こうから何か言ってくるかもしれないわ)
そんな問いかけをされて、私は少しだけ考え込んだ。
果たして王家にフレアの存在を明かしてもいいのか、いいように利用されないか、不安になってしまったから。
(利用されたりしないか心配だわ……)
(あからさまに利用してくることは無いはずよ。それに、私が利用させないから安心して)
(分かったわ。それなら、試してみて?)
納得して、フレアに気配を出すように言ってみる私。
それから王家の方々が私に聞こえないように何かを話し出すまで、時間はかからなかった。
「何を話しているのですか?」
「ああ、レティシア嬢の近くに精霊がいるかもしれないって話だ」
「精霊、ですか? おとぎ話で聞いたことはありましたけど、本当に存在するのですね……」
陛下の言葉に知らない風を装って返す。すると、こんな言葉が返ってきた。
「ああ、存在する。王族は全員精霊の加護を得ているから、間違いない」
表情を変えることなく、そんなことを口にする殿下。
衝撃の事実に、私はしばらくの間固まってしまった。
「そうでしたのね……」
「ああ。妻も精霊の加護を受けている。ちなみにだが、精霊は全部で6人いて、我々だけで4人から加護を得ている。
「残りは……おそらくレティシア嬢とまだ見ぬ誰かだ」
それから少し間をおいて、陛下はこんな問いかけをしてきた。
「我々はレティシア嬢とレティシア嬢を護る精霊の力を利用しないと誓おう。
その上で質問する。君は精霊と話したことはあるか?」
果たして答えを口にしていいのか、分からなかった。
だから、フレアに救いを求めたのだけど……
(レティシアの好きにしていいわよ)
……返ってきたのは適当な答えだった。
好きにしていいってことは、私に任せるってことよね?
それなら……。
「話したことならありますわ」
触ったこともあるけど、それは話さなくていいわよね?
「そうか。それなら話は早い。
残りの精霊についてだが、アドルフに加護を与えている可能性がある。水の精霊は貪欲だから、他の精霊の邪魔をしようとしているのだろう」
「そうですのね。何故そんなことが分かるのですか?」
いくら王家で精霊の加護があるとは言っても、そんなことは分からないはず。
だから疑問に思ったのだけど……答えは意外にも単純なものだった。
(精霊が4人も集まってるのだから分からない方がおかしいわよ。でも、アクアが元凶だとは思わなかったわ)
(アクア……?)
(水の精霊よ。貪欲なのは確かだけど、人を殺めようとする子じゃなかったはずなの)
悲しそうな声で語るフレア。すると、今度は殿下が答えを出してくれた。
「精霊達から聞いただけだから、詳しいことは分かっていない。だが、精霊の仕業だとすれば全て納得できる」
「そういうことだから、詳しいことは精霊に聞いてくれ。君の側にいるだろう?」
「ええ、今聞いたばかりですわ」
利用しないと先に誓ってくれたし、運命を変える希望でもある。
だから、この機会を逃すわけにはいかない。
ここで殿下達のことを信頼しなかったら、私だって信頼されないかもしれない。
そう思ったから、殿下達のことを信じて私が知っていることを全て話そうと思った。
でも、天啓のことを話したら天罰が下るし、フレアのこともよく知らないし……。
話せることが1つも無いという事実に気が付いてしまった。
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