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24. 余命10日③
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幸いにも、すぐにお医者様がやってきて、私を巻き込んだ令嬢は医務室に運ばれていった。
一方の私はというと、あれからすぐに痛みが引いて、いつもと変わらない動きが出来るようになっていた。
あまりにも痛かったから、加護の存在を疑ってしまったけど、すぐにこんな説明をされた。
(加護は万能ではないわ。今みたいに、怪我を防ぐくらいのことしか出来ないの)
そういうことなのね……。
加護は万能ではない。それは普通に考えればすぐに分かることなのに、過信してしまっていたらしい。
「レティシアさん、そろそろ教室に行かないと遅刻してしまいますわ」
「もうそんな時間ですのね」
そんな言葉を交わして、慌てて教室に向かう私達だった。
「えー、それでは先に答案を返却します」
礼をする間も無く始まってしまった1限目の授業。
教授が答案を手にして席を回ろうとした時だった。
ガタンという音に続けて、バキッという何かが折れる音が響いた。
音の原因は教授が転んで頭を一番前の席の机に打ち付けてしまったからなのだけど……。
「机、割れましたわね……」
机の天板が割れてしまっていた。
それなのに、教授は何事も無かったかのように立ち上がって、こんなことを口にした。
「失礼しました。では、答案を返却します」
あの、額から血が出てますわよ……?
私は心の中で突っ込んでも、それが伝わることは当然なく……そのまま答案が返された。
「すみません、この机はどうしますか?」
「一体誰が破壊したのですか?」
「「貴方ですよ!」」
数人の声が重なった。
ちなみにだけど、この後すぐに私とぶつかった令嬢が軽症だったと知らされた。
こんな騒ぎはあったけど、今日の授業は予定通りお昼前に終わって、私はシエル様と馬車で公爵邸に戻った。
「お嬢様、旦那様がお嬢様をお呼びです」
玄関に入ると、早速マリーがそんなことを伝えてきた。
「分かったわ」
荷物はマリーに預けて、公爵様の執務室に向かう私。
部屋の扉は閉まっていたから、ノックをしてこう口にした。
「レティシアです。お呼びいただいていたようですが……」
「鍵は空いてるので、入ってください」
「はい、失礼します」
部屋に入ると、公爵様は書類を書く手を止めて、部屋の真ん中にあるソファに移動した。
「どうぞ掛けてください」
「ありがとうございます」
公爵様の向かい側に腰掛ける私。
すると、王家の紋章付きの封筒を示された。
「例の件だが、早速返事が来た。開けて確認してほしい」
「分かりました、ありがとうございます」
侍女からペーパーナイフを受け取り、封を開ける。
そこには王妃様の名前で書かれた手紙が入っていた。
「雇って頂けるようです」
「そうか、それは良かった。王宮暮らしになるまでは、今まで通り過ごしてもらって構わない」
「分かりましたわ」
王宮に勤める人は、王宮で暮らすことになっている。
だから、私もそうなるのだけど、お勤めが始まるまでは今まで通り部屋を貸してもらえるらしい。
ちなみに、手紙には続きがあって、こんなことも書かれていた。
「早速なのですが、王宮に行くための馬車を出して頂けないでしょうか?」
「分かった」
そう言いながら、執事さんに手で合図を出す公爵様。
「ありがとうございます。では、失礼します」
お礼を言って、準備のために公爵様の部屋を後にした。
それから十数分、私は公爵家の馬車で王宮に向かっていた。
王宮勤めで使用人を連れてくるのはあり得ないことだから、最低限の護衛さんと御者さんしか同行していない。
でも、襲撃を受けることもなく無事に王宮に到着した。
王宮と呼ばれているけど、その外見は立派なお城そのもので、馬車の窓から見上げても頂上を見ることは出来なかった。
そんな王宮の門を馬車に乗ったままくぐると、あっという間に玄関前に到着した。
一方の私はというと、あれからすぐに痛みが引いて、いつもと変わらない動きが出来るようになっていた。
あまりにも痛かったから、加護の存在を疑ってしまったけど、すぐにこんな説明をされた。
(加護は万能ではないわ。今みたいに、怪我を防ぐくらいのことしか出来ないの)
そういうことなのね……。
加護は万能ではない。それは普通に考えればすぐに分かることなのに、過信してしまっていたらしい。
「レティシアさん、そろそろ教室に行かないと遅刻してしまいますわ」
「もうそんな時間ですのね」
そんな言葉を交わして、慌てて教室に向かう私達だった。
「えー、それでは先に答案を返却します」
礼をする間も無く始まってしまった1限目の授業。
教授が答案を手にして席を回ろうとした時だった。
ガタンという音に続けて、バキッという何かが折れる音が響いた。
音の原因は教授が転んで頭を一番前の席の机に打ち付けてしまったからなのだけど……。
「机、割れましたわね……」
机の天板が割れてしまっていた。
それなのに、教授は何事も無かったかのように立ち上がって、こんなことを口にした。
「失礼しました。では、答案を返却します」
あの、額から血が出てますわよ……?
私は心の中で突っ込んでも、それが伝わることは当然なく……そのまま答案が返された。
「すみません、この机はどうしますか?」
「一体誰が破壊したのですか?」
「「貴方ですよ!」」
数人の声が重なった。
ちなみにだけど、この後すぐに私とぶつかった令嬢が軽症だったと知らされた。
こんな騒ぎはあったけど、今日の授業は予定通りお昼前に終わって、私はシエル様と馬車で公爵邸に戻った。
「お嬢様、旦那様がお嬢様をお呼びです」
玄関に入ると、早速マリーがそんなことを伝えてきた。
「分かったわ」
荷物はマリーに預けて、公爵様の執務室に向かう私。
部屋の扉は閉まっていたから、ノックをしてこう口にした。
「レティシアです。お呼びいただいていたようですが……」
「鍵は空いてるので、入ってください」
「はい、失礼します」
部屋に入ると、公爵様は書類を書く手を止めて、部屋の真ん中にあるソファに移動した。
「どうぞ掛けてください」
「ありがとうございます」
公爵様の向かい側に腰掛ける私。
すると、王家の紋章付きの封筒を示された。
「例の件だが、早速返事が来た。開けて確認してほしい」
「分かりました、ありがとうございます」
侍女からペーパーナイフを受け取り、封を開ける。
そこには王妃様の名前で書かれた手紙が入っていた。
「雇って頂けるようです」
「そうか、それは良かった。王宮暮らしになるまでは、今まで通り過ごしてもらって構わない」
「分かりましたわ」
王宮に勤める人は、王宮で暮らすことになっている。
だから、私もそうなるのだけど、お勤めが始まるまでは今まで通り部屋を貸してもらえるらしい。
ちなみに、手紙には続きがあって、こんなことも書かれていた。
「早速なのですが、王宮に行くための馬車を出して頂けないでしょうか?」
「分かった」
そう言いながら、執事さんに手で合図を出す公爵様。
「ありがとうございます。では、失礼します」
お礼を言って、準備のために公爵様の部屋を後にした。
それから十数分、私は公爵家の馬車で王宮に向かっていた。
王宮勤めで使用人を連れてくるのはあり得ないことだから、最低限の護衛さんと御者さんしか同行していない。
でも、襲撃を受けることもなく無事に王宮に到着した。
王宮と呼ばれているけど、その外見は立派なお城そのもので、馬車の窓から見上げても頂上を見ることは出来なかった。
そんな王宮の門を馬車に乗ったままくぐると、あっという間に玄関前に到着した。
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