22 / 74
22. 余命10日①
しおりを挟む
昨日からの気まずい夕食を無事に終えてから1時間、私は眠る準備を終えてベッドに入っていた。
「もう眠いから寝るわね。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
そう口にして、そっと部屋の扉を閉めるマリー。
既に感じていた眠気はあっという間に強くなって……。
……。
……気が付いたら、淡い光の中にいた。
「ようやく運命を変える気になったのね」
昨日と同じ、私の姿をした少女がそんなことを口にする。
「どういう意味?」
「ようやく行動してくれたから、安心したの」
よく分からないけど、私の選択は間違いではなかったらしい。
でも、精霊に未来を見る力なんてあるのかしら……?
そもそも、目の前にいる少女は本当に精霊なの……?
考えても答えは出なかった。
「ねえ、貴女って精霊なの……?」
「人間にはそう呼ばれてるみたい。でも、名前は別にあるよ」
「そうなのね……」
やっぱり、私は精霊に興味を持たれているらしい。
夢の中で精霊と会話出来る人は、精霊に愛されていると聞いたけれど、本当に愛されている確信は持てていない。
「じゃあ、昨日言ってた違う世界の私っていうのは……?」
「あんなの出鱈目に決まってるじゃない」
「え……?」
「まさかあれを信じてたの?」
笑いながらそう口にする精霊。ちょっと意地悪な性格らしい。
「信じてたのに……」
「正確に言うと、別の世界の貴女の記憶を持つ精霊ってところよ。だから、完全な嘘ではないわ」
要するに、ややこしくなるから分かりやすい説明をしてくれたってことね。
「そんなところね」
「さらっと人の心を読まないで……!」
「ねえ、私と契約しない?」
私の抗議の声は完全に無視されて、唐突にそんな提案をされた。
「契約したら不幸になるって聞いたのだけど?」
「あれは力に溺れて勝手なことをし過ぎたからよ。謙虚でいれば不幸にはならないわ」
「そうだったのね……」
結局のところ、不幸になるかならないかは自分次第らしい。
でも、契約する利点が化け物じみた力を使えるようになることしか思い浮かばない。
「それ以外にも、私が貴女を護れるようになるわ。事故死だって、ある程度は防げるのよ」
「契約しても運命が変わるかは分からないのね……」
「それは私にも分からないわ。運命なんて、その時にならないと変わっているか分からないもの」
「そう……」
正直、運命が変わるなら早く知りたかった。
そうすれば、あと10日で死ぬなんていう恐怖に震えずに済むから。
でも、精霊の加護があれば、事故死という運命を変えられるかもしれない。
機会を逃して後悔するより、出来る限りのことをして後悔したい。
「ちなみにだけど、私から貴女には何をすればいいの?」
「魔力さえ分けてくれれば満足よ。実は明日にでも魔力が切れて動けなくなってしまいそうなの……」
「分かったわ、そういうことなら契約してもいいわよ」
「ありがとうっ!」
すごく安心したような、とても嬉しそうな、一言では言い表せない眩しい笑顔がそこにあった。
「儀式は貴女が目を覚ましてから、誰もいない場所でするね」
「分かったわ」
「じゃあ、またね」
そんな言葉の直後、目の前の少女は姿を消して、辺りは真っ暗になってしまった。
……。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう」
いつも通りの時間に部屋に入ってきたマリーに挨拶を返す私。
すぐに学院に行くための準備を始めたのだけど……
「お嬢様、申し訳ないのですが……お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
……マリーが少し辛そうな様子でそう口にした。
「いいわよ」
「ありがとうございます……」
足早にマリーが部屋を後にし、部屋の中が静寂に包まれる。
そんな時だった。
私の目の前に、突然人影が現れた。
「これで誰もいなくなったね。戻ってくる前に契約するよ」
白いワンピースに身を包んだ私と同じ姿の少女。彼女が夢の中で出てきた精霊だということはすぐに分かった。
「ええ、何をすればいいのかしら?」
だから、私は契約の方法を尋ねた。
「もう眠いから寝るわね。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
そう口にして、そっと部屋の扉を閉めるマリー。
既に感じていた眠気はあっという間に強くなって……。
……。
……気が付いたら、淡い光の中にいた。
「ようやく運命を変える気になったのね」
昨日と同じ、私の姿をした少女がそんなことを口にする。
「どういう意味?」
「ようやく行動してくれたから、安心したの」
よく分からないけど、私の選択は間違いではなかったらしい。
でも、精霊に未来を見る力なんてあるのかしら……?
そもそも、目の前にいる少女は本当に精霊なの……?
考えても答えは出なかった。
「ねえ、貴女って精霊なの……?」
「人間にはそう呼ばれてるみたい。でも、名前は別にあるよ」
「そうなのね……」
やっぱり、私は精霊に興味を持たれているらしい。
夢の中で精霊と会話出来る人は、精霊に愛されていると聞いたけれど、本当に愛されている確信は持てていない。
「じゃあ、昨日言ってた違う世界の私っていうのは……?」
「あんなの出鱈目に決まってるじゃない」
「え……?」
「まさかあれを信じてたの?」
笑いながらそう口にする精霊。ちょっと意地悪な性格らしい。
「信じてたのに……」
「正確に言うと、別の世界の貴女の記憶を持つ精霊ってところよ。だから、完全な嘘ではないわ」
要するに、ややこしくなるから分かりやすい説明をしてくれたってことね。
「そんなところね」
「さらっと人の心を読まないで……!」
「ねえ、私と契約しない?」
私の抗議の声は完全に無視されて、唐突にそんな提案をされた。
「契約したら不幸になるって聞いたのだけど?」
「あれは力に溺れて勝手なことをし過ぎたからよ。謙虚でいれば不幸にはならないわ」
「そうだったのね……」
結局のところ、不幸になるかならないかは自分次第らしい。
でも、契約する利点が化け物じみた力を使えるようになることしか思い浮かばない。
「それ以外にも、私が貴女を護れるようになるわ。事故死だって、ある程度は防げるのよ」
「契約しても運命が変わるかは分からないのね……」
「それは私にも分からないわ。運命なんて、その時にならないと変わっているか分からないもの」
「そう……」
正直、運命が変わるなら早く知りたかった。
そうすれば、あと10日で死ぬなんていう恐怖に震えずに済むから。
でも、精霊の加護があれば、事故死という運命を変えられるかもしれない。
機会を逃して後悔するより、出来る限りのことをして後悔したい。
「ちなみにだけど、私から貴女には何をすればいいの?」
「魔力さえ分けてくれれば満足よ。実は明日にでも魔力が切れて動けなくなってしまいそうなの……」
「分かったわ、そういうことなら契約してもいいわよ」
「ありがとうっ!」
すごく安心したような、とても嬉しそうな、一言では言い表せない眩しい笑顔がそこにあった。
「儀式は貴女が目を覚ましてから、誰もいない場所でするね」
「分かったわ」
「じゃあ、またね」
そんな言葉の直後、目の前の少女は姿を消して、辺りは真っ暗になってしまった。
……。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう」
いつも通りの時間に部屋に入ってきたマリーに挨拶を返す私。
すぐに学院に行くための準備を始めたのだけど……
「お嬢様、申し訳ないのですが……お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
……マリーが少し辛そうな様子でそう口にした。
「いいわよ」
「ありがとうございます……」
足早にマリーが部屋を後にし、部屋の中が静寂に包まれる。
そんな時だった。
私の目の前に、突然人影が現れた。
「これで誰もいなくなったね。戻ってくる前に契約するよ」
白いワンピースに身を包んだ私と同じ姿の少女。彼女が夢の中で出てきた精霊だということはすぐに分かった。
「ええ、何をすればいいのかしら?」
だから、私は契約の方法を尋ねた。
34
お気に入りに追加
1,569
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄?ならば妹に譲ります~新しいスローライフの始め方編~
tartan321
恋愛
「私は君との婚約を破棄したいと思う……」
第一王子に婚約破棄を告げられた公爵令嬢のアマネは、それを承諾し、妹のイザベルを新しい婚約者に推薦する。イザベルは自分よりも成績優秀で、そして、品行方正であるから、適任だと思った。
そして、アマネは新しいスローライフを始めることにした。それは、魔法と科学の融合する世界の話。
第一編です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます
めぐめぐ
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。
気が付くと闇の世界にいた。
そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。
この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。
そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを――
全てを知った彼女は決意した。
「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」
※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪
※よくある悪役令嬢設定です。
※頭空っぽにして読んでね!
※ご都合主義です。
※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄?ありがとうございます!では、お会計金貨五千万枚になります!
ばぅ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ!」
「毎度あり! お会計六千万金貨になります!」
王太子エドワードは、侯爵令嬢クラリスに堂々と婚約破棄を宣言する。
しかし、それは「契約終了」の合図だった。
実は、クラリスは王太子の婚約者を“演じる”契約を結んでいただけ。
彼がサボった公務、放棄した社交、すべてを一人でこなしてきた彼女は、
「では、報酬六千万金貨をお支払いください」と請求書を差し出す。
王太子は蒼白になり、貴族たちは騒然。
さらに、「クラリスにいじめられた」と泣く男爵令嬢に対し、
「当て馬役として追加千金貨ですね?」と冷静に追い打ちをかける。
「婚約破棄? かしこまりました! では、契約終了ですね?」
痛快すぎる契約婚約劇、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる