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21. 余命11日④

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「特に何も思いませんでしたわ」

 完全に嘘だけど、こう言えば問い詰められることはあまりない。

「確かに、レティシア様は精霊の加護が無くても大丈夫そうですものね。それに、おとぎ話ですものね!」

 何やら安心した様子を見て疑問に思う私。
 でも、それを掘り下げることはしなかった。

 お陰でこの話題はすぐに消えて、他の話題を楽しむことが出来たのだけど……

「レティシアさん、わたくしのお茶会の誘いを断るなんて、無礼だとは思いませんの?」

 ……クリスティーナ様の声が聞こえて、一気に嫌な気分になった。

「突然なんでしょうか?」
「わたくしのお茶会に参加しなさい。これは命令ですわ」

 そう口にするクリスティーナ様。
 上の地位の方の命令は聞き入れないといけないのだけど、先にされた命令が優先されるという決まりがある。

 だから、私はこう口にした。

「申し訳ありません。シエル様に参加するように命令されてますので、それは出来ません」
「それなら、次のお茶会に参加しなさい」

 何をされるかは分からない。
 でも……断ることは出来ないから、仕方なく頷いた。

 するとクリスティーナ様は満足そうに去っていった。



 それから数時間。お昼前には今日の授業が全て終わり、私はシエル様と馬車で公爵邸へと戻っていた。

 その途中、クリスティーナ様に命令されたことを話したのだけど……

「本当に許せませんわ!」

 ……話し終えた瞬間、シエル様は怒りを露わにした。

「権力を悪いことに使うなんて、貴族失格ですわ!」
「怒ってくださるのは嬉しいですけど、それよりも対策を考えたいですわ……」

 怒ったところで権力には逆らえない。
 だから、いかに被害を抑えるかを考えたかった。

「そうですわね……。位がもっと上の方の力を借りる手しか思いつきませんわ……」

 私がお願いすると、早速意見を出してくれるシエル様。

「それが確実なのは確かですけど、私には王家と繋がりがありませんの」
「でも、殿下はレティシアさんのために動いて下さっていましたわ。お願いしてみたら、動いて下さるかもしれませんわ」

 どうして、この事に気付かなかったのかしら……?

「そうですわね……。戻ったら手紙を書いてみますわ」

 私がそう口にすると、ちょうど馬車が止まって、御者さんがこう口にした。

「お待たせいたしました。到着致しました」

 すぐに扉が開けられ、順番に降りる私達。
 玄関に入ると、使用人さん達が並んでいて、揃って頭を下げられた。

 特に話すことが無い私は、そのまま階段を登って使っている部屋に入った。
 そして、今計画していることを実行に移すために、こんなことを聞いてみた。

「マリー、シエル様のお父様の手が空く時間って分かるかしら?」
「今日は夕食の前には手が空くと聞いています」
「分かったわ、ありがとう」

 この後は普段通り部屋着に着替え、手紙を書いたり読書をしたりして過ごした。



 それからしばらくして、シエル様のお父様──公爵様の手が空いたことを知った私は、執務部屋に来ていた。
 目の前には公爵様が
「要件は何かな?」
「私を王宮の女官か侍女として推薦して頂きたいのです」
「それは本気かな?」

 心配するような目で私を見る公爵様。
 貴族の令嬢が王宮の侍女になることは珍しくは無いけれど、そのためには学院を辞める必要がある。
 女官については、その必要が無いのだけど、学院に通いながら女官の仕事をこなすのはかなり大変らしい。

 だから心配されているのだと思う。
 でも、その覚悟はもう出来ているから、私はこう口にした。

「ええ、本気ですわ」
「分かった。そういうことなら、推薦しよう。
 ただし、私が推薦したからといって確実に仕事を得られるわけでは無い」
「分かりましたわ。ありがとうございます」

 話したかったことはこれだけだから、「失礼しました」と付け加えて、公爵様の執務部屋を後にした。

 それからすぐに夕食が出来たと知らされて、そのまま食堂へと向かった。
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