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19. 余命11日②
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窓の外はまだ薄暗くて、本来なら起きる時間ではない。
でも、外は騒がしくなっている。
「襲撃ですので、安全な部屋に避難してください」
起こされた理由は、そういうことらしい。
襲撃自体は多い時に数日連続で起こるから、特に疑問には思わなかったけど……この時間に起こされると少し辛い。
こういう時、屋敷に住んでる人は隠し通路に避難したりする。でも、私は客の立場。
重要機密である隠し通路の場所を教えてもらえるはずがない。
「安全な部屋って?」
「こちらです」
そう言って壁を押し込むマリー。そこにあったのは、隠し通路だった。
「私に教えて大丈夫……?」
「ええ、問題ありません。本命の隠し通路は別にありますので」
公爵家になると来客用の隠し通路まであるらしい。
少し驚いたけれど、急いでそこに入る私。
その中は絨毯が敷かれていて、足音が聞こえないようになっていた。おまけに外の戦いの音も全く聞こえない。
あまりにも静かすぎて、少し怖くなってしまった。
それから数分、途中にある隠し部屋で待っていたら、執事さんが現れてこう口にした。
「賊は全員捕らえたようです。どうぞご安心ください」
「分かりましたわ」
そう返事をして、元いた部屋に戻る私。
時計を見ると、いつも目を覚ます時間になっていて、学院に向かう準備を始めた。
「お嬢様、今日のドレスは決められましたか?」
「まだ迷ってるわ」
衣装部屋にあるドレスは、どれも私の体格には合っているし、デザインが気に入らない訳でもない。
でも、困ったことに、数が多すぎて選ぶのに時間がかかってしまっている。
ちなみにこのドレスはシエル様が一度も着なかったドレスをそのままお借りしている。
体格が近かったから、新しく仕立てる必要はなかったらしい。
「この辺りはお嬢様に似合うと思いますよ?」
「それなら、これにしてみるわ」
悩んでいたら時間が過ぎていくだけ。だから、思い切って示された中で一番左にあった空色のドレスを着ていくことに決めた。
この後、10分ほどで準備が終わり、朝食のために食堂へと向かった。
既にリゼ様とソーラス様がいて、楽しそうに言葉を交わしている。
そんな場所に飛び込む勇気は当然私にはなくて、シエル様が来るまで外で待つことにした。
でも、1分と経たないうちにシエル様に声をかけられた。
「レティシアさん、どうされましたの?」
「邪魔しないようにしているだけですわ」
「そうでしたのね……ごめんなさい……」
私が理由を説明すると、申し訳なさそうにされてしまった。
「いえ、シエル様が謝ることではありませんわ。私が勝手にしているだけですので」
一応、これは私の意志だということをアピールしておく。
正直言って昨日から居心地は悪くなっているから、ここ公爵邸からは早いうちに離れようと考えている。
居心地が悪いだけならいいのだけど、不貞の加害者側になってしまうことだけは避けないといけないから。
幸いにも、普通の旅館なら5年間貸切にしても聖金貨5枚で済む。
でも、襲撃された時の命の保証はないし、誘拐されて奴隷のような扱いを受けることだってあり得る。
だから、旅館暮らしを始めることは出来ない。
残る手段は1つだけ。でも、それをするためには公爵様に手を貸していただく必要がある。
相変わらず賑やかだけど、少し気まずい朝食の時間を過ごしながら、私は頭を悩ませていた。
でも、外は騒がしくなっている。
「襲撃ですので、安全な部屋に避難してください」
起こされた理由は、そういうことらしい。
襲撃自体は多い時に数日連続で起こるから、特に疑問には思わなかったけど……この時間に起こされると少し辛い。
こういう時、屋敷に住んでる人は隠し通路に避難したりする。でも、私は客の立場。
重要機密である隠し通路の場所を教えてもらえるはずがない。
「安全な部屋って?」
「こちらです」
そう言って壁を押し込むマリー。そこにあったのは、隠し通路だった。
「私に教えて大丈夫……?」
「ええ、問題ありません。本命の隠し通路は別にありますので」
公爵家になると来客用の隠し通路まであるらしい。
少し驚いたけれど、急いでそこに入る私。
その中は絨毯が敷かれていて、足音が聞こえないようになっていた。おまけに外の戦いの音も全く聞こえない。
あまりにも静かすぎて、少し怖くなってしまった。
それから数分、途中にある隠し部屋で待っていたら、執事さんが現れてこう口にした。
「賊は全員捕らえたようです。どうぞご安心ください」
「分かりましたわ」
そう返事をして、元いた部屋に戻る私。
時計を見ると、いつも目を覚ます時間になっていて、学院に向かう準備を始めた。
「お嬢様、今日のドレスは決められましたか?」
「まだ迷ってるわ」
衣装部屋にあるドレスは、どれも私の体格には合っているし、デザインが気に入らない訳でもない。
でも、困ったことに、数が多すぎて選ぶのに時間がかかってしまっている。
ちなみにこのドレスはシエル様が一度も着なかったドレスをそのままお借りしている。
体格が近かったから、新しく仕立てる必要はなかったらしい。
「この辺りはお嬢様に似合うと思いますよ?」
「それなら、これにしてみるわ」
悩んでいたら時間が過ぎていくだけ。だから、思い切って示された中で一番左にあった空色のドレスを着ていくことに決めた。
この後、10分ほどで準備が終わり、朝食のために食堂へと向かった。
既にリゼ様とソーラス様がいて、楽しそうに言葉を交わしている。
そんな場所に飛び込む勇気は当然私にはなくて、シエル様が来るまで外で待つことにした。
でも、1分と経たないうちにシエル様に声をかけられた。
「レティシアさん、どうされましたの?」
「邪魔しないようにしているだけですわ」
「そうでしたのね……ごめんなさい……」
私が理由を説明すると、申し訳なさそうにされてしまった。
「いえ、シエル様が謝ることではありませんわ。私が勝手にしているだけですので」
一応、これは私の意志だということをアピールしておく。
正直言って昨日から居心地は悪くなっているから、ここ公爵邸からは早いうちに離れようと考えている。
居心地が悪いだけならいいのだけど、不貞の加害者側になってしまうことだけは避けないといけないから。
幸いにも、普通の旅館なら5年間貸切にしても聖金貨5枚で済む。
でも、襲撃された時の命の保証はないし、誘拐されて奴隷のような扱いを受けることだってあり得る。
だから、旅館暮らしを始めることは出来ない。
残る手段は1つだけ。でも、それをするためには公爵様に手を貸していただく必要がある。
相変わらず賑やかだけど、少し気まずい朝食の時間を過ごしながら、私は頭を悩ませていた。
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