睡眠スキルは最強です! 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます!〜

八代奏多

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74. 睡眠スキル

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 隊長さんに紹介されてから十数分、俺達は予定通りに中間地点へと辿り着いていた。
 モンスターなんて一体も見かけなかった。

「妙に静かですね……」

「嫌な予感しかしませんね。警戒を怠らないように」

 ヒソヒソとそんな言葉が交わされる。
 しかしモンスターなんてこれっぽっちも見つからない。

 目に入ってくるのは、真っ黒な人の形をしたモノやら燃え尽きた瓦礫の山やら、そんなのばかりだ。
 全てはあのドラゴンのせいだが、恨み言を言っても何にもならないのが悲しい。

「この辺です」

「何もいませんね?」

 焼け野原の中を歩くこと十数分、目的地に辿り着いた俺達の周りにモンスターなんていなかった。
 あるのは道路中央に存在している石造りの謎の建物だけ。

「あれ無かったよね?」

「ああ。地震で出てきたとかか?」

「ダンジョンみたいな雰囲気だね……」

「まさか本当にダンジョンだったりしてな」

 俺もレナさん同様に、この石造りの建物がダンジョンのように感じている。
 しかし確信を持てずにいた。

「足跡がありますね」

「誰かが住んでいるのでしょうか?」

 誰かがそんな言葉を交わす。

 その時だった。

「グオォォォォ」
「ガアアァァ」
「ギャァ」
「グオォォ……」

 なんの予兆もなく、大量のモンスターが謎の建物から溢れ出してきた。

「数が多すぎる!」

「一旦撤退だ!」

 俺たち以外が軽くパニックを起こす。
 一方の俺達はというと、睡眠スキルの実験が出来ると少し楽しくなっていた。

「んじゃ、やるか」

「いつでもいいよ?」

「じゃあ……」

 永遠に眠れ!

 願いながら手を前に突き出し、睡眠気弾を発射する。
 すると、当たったモンスターが動きを止めた。

〈経験値を獲得しました〉

 通知と同時に、青い霧と化すモンスター。
 どうやら睡眠スキルで瞬殺が出来るようになったらしい。

「今ので倒せたぞ」

「チートだね?」

 若干引き気味のレナさんを他所に、俺は睡眠気弾を連射していく。
 だが、モンスターの数の方が多くて倒し切れない。

「入口に立ってれば最強だね」

「その手があった」

 気弾を使いすぎて範囲スキルということを失念していた。
 早速、隠密をかけてもらってからモンスターの湧き場所に移動する。

〈経験値を獲得しました〉
〈経験値を獲得しました〉
〈経験値を獲得しました〉
〈経験値を獲得しました〉
……

 途端に物凄い勢いで流れ出す通知。
 即死トラップ、エグすぎる。

「止まったみたいだな」

「通知すごかったね」

「レベルは上がらなかったけどな」

 どうやら、俺のスキルは化け物レベルで強くなってしまったらしい。
 どうせボスには効かないだろうが、雑魚に囲まれて殺されることはなくなったわけだ。

「私達も撤収しよう?」

「ああ」

 討伐隊の人達は先に撤退しているから、その後を追って俺達も安全地帯へと足を向ける。

 もっとも、化け物なんて言われかねないから、このスキルの性能を言いふらしたりは出来ないが……。

「このままモンスターが出てこないといいね」

「スキルは残って欲しいけどな」

 モンスター討伐もそうだけど、一番の理由は快眠のためだ。

「うん。アイテムボックスが便利すぎて手放せないよ……」

 そんなことを話している内に討伐隊の詰所に辿り着いた。

「どうするんですか?」

「どうするも何も、総力で潰すしかないですよ」

 大量のモンスターについて揉めている声が聞こえてきた。
 黙っていてもいいことは特に無いから、口を挟むことにする。

「あのモンスターなんですけど、全部倒しましたよ。一人で」

「本当ですか!?」

「本当ですよ。じゃあ、僕はこれで」

 軽く頭を下げて、詰所を立ち去る。
 それから、近くで待っていてくれたレナさんと合流して、俺達が拠点にしている広場へと戻った。



 その夜。

「これくらいでいいかな……?」

「もう焦げてるじゃん」

「えっ? 嘘っ!?」

 レナさん一家と焼肉をすることになった。
 ちなみにこの辺りの草は父さん達が全部むしったらしく、火の粉が飛んでも燃える心配は無い。
 テントに飛んだらおしまいだが、こっちには水魔法があるから大丈夫だろう。

「んじゃいただきます」

 タレはレナさんがスーパーで回収した焼肉のタレを使っている。
 これがお高いものらしく、結構うまい。

「じゃあ……私も……。
 熱っ!?」

「猫舌なんだから慎重に食えよ」

「だってお兄ちゃんが……」

 今の世界の生活も大変だけど、なんだかんだで楽しめている。
 それに……。

 寝る時の睡眠スキルが最高すぎる。
 今みたいに目が冴えまくってても、こんな風に祈れば簡単に寝れるから。

 七時間寝たい。

 あっ、無理寝る……。
 ぐぅ……。
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