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69. 回復効果
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「上、気を付けろ!」
視界が炎で赤く染まる中、誰かが叫んだ。
その直後、上から石がバラバラと降ってきた。
どうやら安全地帯は完璧ではなく、余波の影響は防ぎきれないらしい。
幸いにも降ってきているのは小石や土ばかりで、痛い程度で済んでいる。
これが火山の噴火の時のような岩だったら、確実に死者が出てしまうだろう。
「HPは大丈夫か……」
小石でHPは削れないようだ。
ただ……外は未だに灼熱世界だから、攻撃のために手を出したりすることは出来ない。
「まだ諦めてくれないね……」
「動きは鈍くなってるけどな。反応も鈍くなってる」
戦いが始まってから既に二時間。
ドラゴンは消耗気味のようだ。もしくは、睡眠スキルの効果で動きが鈍くなっているかだ。
俺達?
睡眠スキルで適度に寝ているから、飽きはしても疲れはしていない。
睡眠スキルの疲労回復、なんと10秒寝るだけでも効果がある。
お陰で二時間通して戦い続けられている。
それでも腹は減るから、睡眠スキルが万能というわけではないが……。
「そろそろいけそうだな」
ブレスから10分、周囲の熱も冷めたと判断して腕を境界の外に出してみる。
「どう……?」
「大丈夫っぽい」
「じゃあ、私も攻撃するね」
俺達がドラゴンへの攻撃を再開すると、周囲の人たちも各々の銃で攻撃を始めた。
ドラゴンは避けようとしたのか、上に飛び上がる。
しかし、こちらは飛び道具。
上に逃げたところでただの的になるだけだった。
銃は単発式だから弾幕を張るには至っていない。
しかし、同時に五十人以上で撃てば数発は当たる。
「グオォォォォッ!」
「うるせー」
「怯むな! 撃て!」
ほぼ同時に銃声が響く。
俺は睡眠スキルを連発し続ける。
そして……。
「ガアアァァァァッ!」
ドラゴンの色が赤く変化した。
第二形態になったのだろう。
そう認識した直後、ドラゴンの口から青白いビームのようなブレスものが放たれた。
咄嗟に回避したから直撃は免れたが、ブレスの通った場所でいくつもの爆発が起きている。
それだけではない。
小さいが、明らかにヤバそうな火球をあちこちにばら撒いている。
その火球も当たったら爆発を起こしている。
控えめに言っても、ヤバすぎる。
ブレスの継続時間がヤバすぎて手を出せない。
まあ、安全地帯のお陰で攻撃は受けていないが……。
「放置してたら勝手に疲れて力尽きてくれないかな……?」
「どのみち戦えないから、それしか手はないな」
勝手に弱ってくれたら大助かりだが……。
そう思った時だった。
ドラゴンが俺達から目を離し、安全地帯の外周を回って移動を始めた。
「追うぞ!」
「うん!」
ドラゴンの移動速度に追いつくため、レナさんを抱えてから移動スキルで走る。
もちろん右手を安全地帯の外側に出しながら、睡眠スキルをぶつける。
しかしドラゴンは振り返ることもせず、壊れた塀の裏に火球を放った。
ヤバい。
直感でそう思い、伏せる俺。
レナさんは何も気付いていない様子だったから、言葉よりも先に手で伏せさせる。
その直後、壊れた塀と人の形をした何かが俺達の頭上を物凄い速さで通り過ぎていった。
同時に、ドラゴンが地面に降りて動きを止めた。
「今、人もいたよね……?」
「ああ」
「助けに行こう!」
そう言って駆け出すレナさん。
俺も後を追って地面を蹴った。
だが、そのせいで酷い状況を目の当たりにしてしまった。
「危なかった……」
「巻き込まれたやつはいないな?」
「ああ」
途中でこんな会話が聞こえたのにも関わらず、俺達の視線の先には意識を失っている二人の女性が倒れていた。
片方は赤髪とも金髪……こういうのをストローベリーブロンドって言うんだっけ? 面倒だから赤髪でいいか……とも言えるような髪色で、もう片方は濃い紫に近い髪色だ。
赤髪の方は腕が変な方向に曲がっていたりしているが、紫髪の方は衣服が丸焦げで酷い火傷を負っていた。一部は布が消えて火傷している肌が見える。
「まだ生きてるみたい。治って……」
レナさんが二人に手をかざし、何かのスキルを発動させる。
だが、怪我が治って意識を取り戻すということはなかった。
回復効果がある俺の睡眠スキルもかけてみたが、火傷も骨折も治る気配は無かった。
視界が炎で赤く染まる中、誰かが叫んだ。
その直後、上から石がバラバラと降ってきた。
どうやら安全地帯は完璧ではなく、余波の影響は防ぎきれないらしい。
幸いにも降ってきているのは小石や土ばかりで、痛い程度で済んでいる。
これが火山の噴火の時のような岩だったら、確実に死者が出てしまうだろう。
「HPは大丈夫か……」
小石でHPは削れないようだ。
ただ……外は未だに灼熱世界だから、攻撃のために手を出したりすることは出来ない。
「まだ諦めてくれないね……」
「動きは鈍くなってるけどな。反応も鈍くなってる」
戦いが始まってから既に二時間。
ドラゴンは消耗気味のようだ。もしくは、睡眠スキルの効果で動きが鈍くなっているかだ。
俺達?
睡眠スキルで適度に寝ているから、飽きはしても疲れはしていない。
睡眠スキルの疲労回復、なんと10秒寝るだけでも効果がある。
お陰で二時間通して戦い続けられている。
それでも腹は減るから、睡眠スキルが万能というわけではないが……。
「そろそろいけそうだな」
ブレスから10分、周囲の熱も冷めたと判断して腕を境界の外に出してみる。
「どう……?」
「大丈夫っぽい」
「じゃあ、私も攻撃するね」
俺達がドラゴンへの攻撃を再開すると、周囲の人たちも各々の銃で攻撃を始めた。
ドラゴンは避けようとしたのか、上に飛び上がる。
しかし、こちらは飛び道具。
上に逃げたところでただの的になるだけだった。
銃は単発式だから弾幕を張るには至っていない。
しかし、同時に五十人以上で撃てば数発は当たる。
「グオォォォォッ!」
「うるせー」
「怯むな! 撃て!」
ほぼ同時に銃声が響く。
俺は睡眠スキルを連発し続ける。
そして……。
「ガアアァァァァッ!」
ドラゴンの色が赤く変化した。
第二形態になったのだろう。
そう認識した直後、ドラゴンの口から青白いビームのようなブレスものが放たれた。
咄嗟に回避したから直撃は免れたが、ブレスの通った場所でいくつもの爆発が起きている。
それだけではない。
小さいが、明らかにヤバそうな火球をあちこちにばら撒いている。
その火球も当たったら爆発を起こしている。
控えめに言っても、ヤバすぎる。
ブレスの継続時間がヤバすぎて手を出せない。
まあ、安全地帯のお陰で攻撃は受けていないが……。
「放置してたら勝手に疲れて力尽きてくれないかな……?」
「どのみち戦えないから、それしか手はないな」
勝手に弱ってくれたら大助かりだが……。
そう思った時だった。
ドラゴンが俺達から目を離し、安全地帯の外周を回って移動を始めた。
「追うぞ!」
「うん!」
ドラゴンの移動速度に追いつくため、レナさんを抱えてから移動スキルで走る。
もちろん右手を安全地帯の外側に出しながら、睡眠スキルをぶつける。
しかしドラゴンは振り返ることもせず、壊れた塀の裏に火球を放った。
ヤバい。
直感でそう思い、伏せる俺。
レナさんは何も気付いていない様子だったから、言葉よりも先に手で伏せさせる。
その直後、壊れた塀と人の形をした何かが俺達の頭上を物凄い速さで通り過ぎていった。
同時に、ドラゴンが地面に降りて動きを止めた。
「今、人もいたよね……?」
「ああ」
「助けに行こう!」
そう言って駆け出すレナさん。
俺も後を追って地面を蹴った。
だが、そのせいで酷い状況を目の当たりにしてしまった。
「危なかった……」
「巻き込まれたやつはいないな?」
「ああ」
途中でこんな会話が聞こえたのにも関わらず、俺達の視線の先には意識を失っている二人の女性が倒れていた。
片方は赤髪とも金髪……こういうのをストローベリーブロンドって言うんだっけ? 面倒だから赤髪でいいか……とも言えるような髪色で、もう片方は濃い紫に近い髪色だ。
赤髪の方は腕が変な方向に曲がっていたりしているが、紫髪の方は衣服が丸焦げで酷い火傷を負っていた。一部は布が消えて火傷している肌が見える。
「まだ生きてるみたい。治って……」
レナさんが二人に手をかざし、何かのスキルを発動させる。
だが、怪我が治って意識を取り戻すということはなかった。
回復効果がある俺の睡眠スキルもかけてみたが、火傷も骨折も治る気配は無かった。
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