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55. オンボロ危険
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昼食を終え、俺達は新しい移動手段を探していた。
しかし無施錠の車は見つからず、唯一使えそうなのは古びたママチャリ一台のみだった。
「背に腹は変えられないな……」
「ステータス上がってるから大丈夫だと思うよ?」
「荷台で大丈夫か?」
ステータスが上がった今ならスピードとスタミナ気にしなくても大丈夫だろう。
問題はママチャリが耐えられるかどうかだ。
「うん。大丈夫だよ」
「痛かったら言ってくれよ」
「うん」
もう一つ、荷台だと振動で尻が痛くなるのだ。
まあ防御力で割となんとかなるかもしれないが。
「暗くなる前に着くといいね」
「そうだな」
というわけで俺達は自転車に跨がり、目的地である安全地帯に向けて移動を再開した。
ギシギシと音を立てる自転車のペダルを軽く漕ぎながら緩やかな坂を登っていく。
スピードは原付バイクと同じくらいは出ているだろう。
これ以上速く? 壊れそうだからやらない。
俺だけならともかく、レナさんを事故に巻き込むわけにはいかないのだ。
しかしキィキィと軋む音が煩すぎて、モンスターが寄って来ている気がする。
「すごい音だね……」
「ブレーキかけたら耳死ぬな」
そして下り坂。
減速するためにブレーキをかけたら、案の定……。
ギイィィィィ──ッ!
「うるさっ」
「耳壊れるかと思ったよ……」
「ゴブっ!?」
「フゴッ!?」
オークやゴブリンまでもが耳を抑え、蹲っている。
もしかしてこの音、対モンスターで使えるのでは?
なんで思ったが、自分達もヤられては意味がない。
「とりあえず安全地帯まで急ごう」
「うん」
ギーコギーコ……。
ギシギシ……。
ガタガタ……。
「この自転車、本当に大丈夫……?」
不安そうな声色でレナさんが問いかけてくる。
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、大丈夫じゃないだろ」
「そうだよね……」
その瞬間、レナさんが俺の体に回している腕に力を入れたのが分かった。
一気に不安になってしまったのだろう。
だが、どう見ても大丈夫じゃないのに「大丈夫」だなんて無責任なことは言えない。
その証拠に、段差を超えるたびに車輪がブレるのだ。
ほら、こんな感じで……。
バキンッ!
──って、違う! 前輪吹っ飛んでるじゃん!?
咄嗟に足を伸ばして自転車を支えるが、ある程度スピードが出ていたせいで中々止まらない。
後輪のブレーキも全力で握る。
ブチンッ!
──後輪のブレーキはぶっ壊れた。
もうダメじゃん!?
「きゃああっ!?」
レナさんが悲鳴を上げながらしがみついてくる。
結構強い締め付けだ……。余裕で耐えられるけど。
これなら行ける!
そう判断した俺は、自転車から飛び降りレナさんを背負ったまま全力で走り出した。
こうすれば自転車に翻弄されることなく止まることが出来る。
そう判断したからだ。
「……危なかったな」
「心臓止まるかと思ったよ……」
ぶっ壊れた自転車を端に寄せ、一息つこうとする。
しかし、そんな俺達を嘲笑うかのように地面が揺れ出した。
しかし無施錠の車は見つからず、唯一使えそうなのは古びたママチャリ一台のみだった。
「背に腹は変えられないな……」
「ステータス上がってるから大丈夫だと思うよ?」
「荷台で大丈夫か?」
ステータスが上がった今ならスピードとスタミナ気にしなくても大丈夫だろう。
問題はママチャリが耐えられるかどうかだ。
「うん。大丈夫だよ」
「痛かったら言ってくれよ」
「うん」
もう一つ、荷台だと振動で尻が痛くなるのだ。
まあ防御力で割となんとかなるかもしれないが。
「暗くなる前に着くといいね」
「そうだな」
というわけで俺達は自転車に跨がり、目的地である安全地帯に向けて移動を再開した。
ギシギシと音を立てる自転車のペダルを軽く漕ぎながら緩やかな坂を登っていく。
スピードは原付バイクと同じくらいは出ているだろう。
これ以上速く? 壊れそうだからやらない。
俺だけならともかく、レナさんを事故に巻き込むわけにはいかないのだ。
しかしキィキィと軋む音が煩すぎて、モンスターが寄って来ている気がする。
「すごい音だね……」
「ブレーキかけたら耳死ぬな」
そして下り坂。
減速するためにブレーキをかけたら、案の定……。
ギイィィィィ──ッ!
「うるさっ」
「耳壊れるかと思ったよ……」
「ゴブっ!?」
「フゴッ!?」
オークやゴブリンまでもが耳を抑え、蹲っている。
もしかしてこの音、対モンスターで使えるのでは?
なんで思ったが、自分達もヤられては意味がない。
「とりあえず安全地帯まで急ごう」
「うん」
ギーコギーコ……。
ギシギシ……。
ガタガタ……。
「この自転車、本当に大丈夫……?」
不安そうな声色でレナさんが問いかけてくる。
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、大丈夫じゃないだろ」
「そうだよね……」
その瞬間、レナさんが俺の体に回している腕に力を入れたのが分かった。
一気に不安になってしまったのだろう。
だが、どう見ても大丈夫じゃないのに「大丈夫」だなんて無責任なことは言えない。
その証拠に、段差を超えるたびに車輪がブレるのだ。
ほら、こんな感じで……。
バキンッ!
──って、違う! 前輪吹っ飛んでるじゃん!?
咄嗟に足を伸ばして自転車を支えるが、ある程度スピードが出ていたせいで中々止まらない。
後輪のブレーキも全力で握る。
ブチンッ!
──後輪のブレーキはぶっ壊れた。
もうダメじゃん!?
「きゃああっ!?」
レナさんが悲鳴を上げながらしがみついてくる。
結構強い締め付けだ……。余裕で耐えられるけど。
これなら行ける!
そう判断した俺は、自転車から飛び降りレナさんを背負ったまま全力で走り出した。
こうすれば自転車に翻弄されることなく止まることが出来る。
そう判断したからだ。
「……危なかったな」
「心臓止まるかと思ったよ……」
ぶっ壊れた自転車を端に寄せ、一息つこうとする。
しかし、そんな俺達を嘲笑うかのように地面が揺れ出した。
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