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54. 最弱とは?
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不自然に盛り上がってた川の水面。
それに気付いたと思った直後、水の塊が俺達の方に突っ込んできていた。
あの時と同じスライムの塊だ。
「塩出して塩!」
「う、うん!」
レナさんが取り出した塩(開封済み)を掴み、スライムの塊に投げつける。
同時に睡眠スキルも発動させた。
するとスライムは一体ずつに分かれて俺達の周囲に落下した。
だが量が多い。池の時の十倍以上はありそうだ。
「走るぞ」
足がすくんだのか、中々動こうとしないレナさんの手を引いて走り出す。
しかし眠っていないスライムは俺達目掛けて降ってくる。
それだけではない。
川の中から次々とスライムが現れていた。
「ねえ多すぎない!?」
「堤防まで行くぞ!」
それにしても多すぎる。
動きも思った以上に早い。
「待って、囲まれてるよ!」
レナさんがそう言った直後、堤防の方からもスライムがなだれ込んできた。
多すぎるって、そう言う意味かよッ!
「正面突破しかなさそうだな……」
「それって……」
「文字通り突っ切る」
流石にスライムが多すぎるから、ステータスにものを言わせて突破するしかないだろう。
幸いにも睡眠スキルで動きを止めてバラバラにする事ができる。
「私には無理だよ!?」
「肩車でもするか?」
「せめておんぶにして」
「分かった」
肩車の方が安全に運べると思ったんだけどなぁ……。
レナさんが嫌なら仕方ない。
スライムに囲われるよりも早く、俺はレナさんを背負って堤防に向けて駆け出した。
壁のように迫ってくるスライムを蹴散らし、時には剣で薙ぎ払い、前髪を少しだけ失いながらも無事に堤防に辿り着いた。
後ろを振り返れば、力を無くしたかのように河原に広がるスライム達。
新たにスライムが出てこないあたり、これで全てのようだ。
「なんとか行けたな」
「うん……。前髪大丈夫?」
「なんか溶けたっぽい。目は閉じてたから大丈夫だけど」
「そうじゃなくて、スライム付いてるよ?」
そんな言葉と共に差し出される手鏡。
うん、確かに付いてた。平べったくなったスライムが。
「危ねえ、禿げるとこだった」
野球部じゃあるまいし、この歳で坊主は嫌すぎる。
「私には付いてない?」
そう口にしながら、その場でくるりと回るレナさん。
「付いてないよ」
「ありがとう」
「じゃ、経験値回収といくか」
というわけで、俺達は塩を撒きながらスライムを倒していった。
たっぷり一時間以上かけて。
しかしレベルは上がらなかった。
「はー、スライム相手なのに疲れた」
「そうだね……いくらなんでも多すぎるよ」
これで最弱モンスター扱い。どう考えてもおかしいだろ。
ボス以外だと一番厄介なモンスターなんだが?
なんて思った時だった。
誰かさんのお腹が鳴った。
「……お腹すいちゃった」
「俺もだ」
少し遅くなったが、今度こそ昼食に入る俺達だった。
それに気付いたと思った直後、水の塊が俺達の方に突っ込んできていた。
あの時と同じスライムの塊だ。
「塩出して塩!」
「う、うん!」
レナさんが取り出した塩(開封済み)を掴み、スライムの塊に投げつける。
同時に睡眠スキルも発動させた。
するとスライムは一体ずつに分かれて俺達の周囲に落下した。
だが量が多い。池の時の十倍以上はありそうだ。
「走るぞ」
足がすくんだのか、中々動こうとしないレナさんの手を引いて走り出す。
しかし眠っていないスライムは俺達目掛けて降ってくる。
それだけではない。
川の中から次々とスライムが現れていた。
「ねえ多すぎない!?」
「堤防まで行くぞ!」
それにしても多すぎる。
動きも思った以上に早い。
「待って、囲まれてるよ!」
レナさんがそう言った直後、堤防の方からもスライムがなだれ込んできた。
多すぎるって、そう言う意味かよッ!
「正面突破しかなさそうだな……」
「それって……」
「文字通り突っ切る」
流石にスライムが多すぎるから、ステータスにものを言わせて突破するしかないだろう。
幸いにも睡眠スキルで動きを止めてバラバラにする事ができる。
「私には無理だよ!?」
「肩車でもするか?」
「せめておんぶにして」
「分かった」
肩車の方が安全に運べると思ったんだけどなぁ……。
レナさんが嫌なら仕方ない。
スライムに囲われるよりも早く、俺はレナさんを背負って堤防に向けて駆け出した。
壁のように迫ってくるスライムを蹴散らし、時には剣で薙ぎ払い、前髪を少しだけ失いながらも無事に堤防に辿り着いた。
後ろを振り返れば、力を無くしたかのように河原に広がるスライム達。
新たにスライムが出てこないあたり、これで全てのようだ。
「なんとか行けたな」
「うん……。前髪大丈夫?」
「なんか溶けたっぽい。目は閉じてたから大丈夫だけど」
「そうじゃなくて、スライム付いてるよ?」
そんな言葉と共に差し出される手鏡。
うん、確かに付いてた。平べったくなったスライムが。
「危ねえ、禿げるとこだった」
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そう口にしながら、その場でくるりと回るレナさん。
「付いてないよ」
「ありがとう」
「じゃ、経験値回収といくか」
というわけで、俺達は塩を撒きながらスライムを倒していった。
たっぷり一時間以上かけて。
しかしレベルは上がらなかった。
「はー、スライム相手なのに疲れた」
「そうだね……いくらなんでも多すぎるよ」
これで最弱モンスター扱い。どう考えてもおかしいだろ。
ボス以外だと一番厄介なモンスターなんだが?
なんて思った時だった。
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「俺もだ」
少し遅くなったが、今度こそ昼食に入る俺達だった。
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