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51. 移動の準備
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昼食後、俺はレナさんとスライムがいた池の方に向かっていた。
目当ては塩を拝借したスーパーの商品だ。
「なんで漁られてないんだろうな……」
「人気がなかったからだと思うよ? ほら」
そう言いながらレナさんが指差すのは、閉店のお知らせの張り紙だ。
あくまでも予想だが、駅前の綺麗なスーパーに客を吸われたのだろう。
向こうは確か漁られていたが、ここは大して漁られていない。
「生物はダメそうだな」
「うん……」
売り場に並ぶ肉は暗い色に変わっており、腐っているのは一目でわかる。
回収するとしたら、菓子類や缶詰めだろう。
「とりあえず、缶詰め最優先にしよう。あとコメと水」
「うん」
水は俺の妹、結菜の水魔法スキルでなんとかなるはずだが、橋を渡れない今の状態では頼ることが出来ない。
ここに来て水道も使えなくなっているらしい。
しかし不思議なことに、市役所内では水道も下水も使えている。
噂によれば、その手のスキルを持っている人がいるそうだ。
市役所をでなければ水にも食料にも困らないが、俺の目的は家族との合流だ。
レナさんの両親の所在は今も不明だが、どうやら俺の実家のそばにいるらしい。
お互い、市役所を離れる理由がある。
今回の補給は、その移動に備えるためだ。
川を渡るという試練があるが、鉄道橋は無事だから線路を歩けばなんとかなるだろう。最悪、泳ぐ。
「お米よりも先にパンとお菓子集めてもいいかな?」
「先に水だな」
「缶の水じゃダメ?」
「ペットボトルの方が都合いいだろ」
「は~い」
ケース売りのペットボトル飲料もレナさんがアイテムボックスに入れていき、続いてお菓子とパン、そして米を調達した。
「よし、これで大丈夫そうだな」
「あと、トイレットペーパーも……」
「売ってんのか?」
「広告に書いてあったよ」
「マジか」
話しながら日用品売り場に移動すると、確かにあった。
しかしトイレットペーパーは盲点だったな……。
レナさんが気付かなかったら、数日後にケツを葉っぱで拭くことになっていたと思うと背筋が凍る。
アホな友達が実際にやって、ケツがかぶれて大変なことになったのを知っているからな。
「あとは米だな」
「うん」
それから十分後、俺達は無事に目的のものを集め終えてスーパーを出た。
そして……。
「あれ、誰もいないね?」
レナさんが池の方を見ながらそんなことを口にした。
「そりゃいないだろ」
「そうじゃなくて、あの変態達の死体もないの」
「マジかよ……」
死んだはずの三下達の姿は無い。
ちなみに、ここは結界の内側になっているからモンスターに食われたということはあり得ないだろう。
「誰かに運ばれたのかな……?」
「かもな……」
今になって思い出したが、三下達の体に触れて死んだことを確認した人は誰もいなかった。
仮にあれが気絶してただけだとしたら、今の状況はかなり不味いかもしれない。
「もしかしたら、生きてるかもな……」
「どういうこと?」
「あの時、誰も死んだか確認してなかっただろ? だから、生きてる可能性もある」
「それって、不味いよね……」
「ああ」
レナさんと頷き合うと、俺は市役所に向けて走り出した。
目当ては塩を拝借したスーパーの商品だ。
「なんで漁られてないんだろうな……」
「人気がなかったからだと思うよ? ほら」
そう言いながらレナさんが指差すのは、閉店のお知らせの張り紙だ。
あくまでも予想だが、駅前の綺麗なスーパーに客を吸われたのだろう。
向こうは確か漁られていたが、ここは大して漁られていない。
「生物はダメそうだな」
「うん……」
売り場に並ぶ肉は暗い色に変わっており、腐っているのは一目でわかる。
回収するとしたら、菓子類や缶詰めだろう。
「とりあえず、缶詰め最優先にしよう。あとコメと水」
「うん」
水は俺の妹、結菜の水魔法スキルでなんとかなるはずだが、橋を渡れない今の状態では頼ることが出来ない。
ここに来て水道も使えなくなっているらしい。
しかし不思議なことに、市役所内では水道も下水も使えている。
噂によれば、その手のスキルを持っている人がいるそうだ。
市役所をでなければ水にも食料にも困らないが、俺の目的は家族との合流だ。
レナさんの両親の所在は今も不明だが、どうやら俺の実家のそばにいるらしい。
お互い、市役所を離れる理由がある。
今回の補給は、その移動に備えるためだ。
川を渡るという試練があるが、鉄道橋は無事だから線路を歩けばなんとかなるだろう。最悪、泳ぐ。
「お米よりも先にパンとお菓子集めてもいいかな?」
「先に水だな」
「缶の水じゃダメ?」
「ペットボトルの方が都合いいだろ」
「は~い」
ケース売りのペットボトル飲料もレナさんがアイテムボックスに入れていき、続いてお菓子とパン、そして米を調達した。
「よし、これで大丈夫そうだな」
「あと、トイレットペーパーも……」
「売ってんのか?」
「広告に書いてあったよ」
「マジか」
話しながら日用品売り場に移動すると、確かにあった。
しかしトイレットペーパーは盲点だったな……。
レナさんが気付かなかったら、数日後にケツを葉っぱで拭くことになっていたと思うと背筋が凍る。
アホな友達が実際にやって、ケツがかぶれて大変なことになったのを知っているからな。
「あとは米だな」
「うん」
それから十分後、俺達は無事に目的のものを集め終えてスーパーを出た。
そして……。
「あれ、誰もいないね?」
レナさんが池の方を見ながらそんなことを口にした。
「そりゃいないだろ」
「そうじゃなくて、あの変態達の死体もないの」
「マジかよ……」
死んだはずの三下達の姿は無い。
ちなみに、ここは結界の内側になっているからモンスターに食われたということはあり得ないだろう。
「誰かに運ばれたのかな……?」
「かもな……」
今になって思い出したが、三下達の体に触れて死んだことを確認した人は誰もいなかった。
仮にあれが気絶してただけだとしたら、今の状況はかなり不味いかもしれない。
「もしかしたら、生きてるかもな……」
「どういうこと?」
「あの時、誰も死んだか確認してなかっただろ? だから、生きてる可能性もある」
「それって、不味いよね……」
「ああ」
レナさんと頷き合うと、俺は市役所に向けて走り出した。
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